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米Juniperのスイッチ戦略、「鍵を握るのはやはりJUNOS」


米Juniperのスコット・クレンズCEO

JuniperのEthernet Platform Business Group担当執行役副社長、ヒテシュ・シェス氏

EX4200シリーズ
 ルータからスタートした米Juniper Networks(以下、Juniper)は、セキュリティベンダーのNetScreenを、またWAN最適化を手がけるPeribitやRedlineを続けて買収し、ポートフォリオを拡充してきたが、エンタープライズ向けのスイッチは提供しておらず、統合ソリューションを提供する中での穴になっていた。今回、そのスイッチ販売に踏み出すことで、いよいよその穴が埋まる。この意味などについて、Juniperのスコット・クレンズCEOをはじめ、関係者に聞いた。

 まず同社がスイッチ事業に参入した理由についてクレンズCEOは、「顧客からの要望が強かったことが最大の理由だ」と話す。同社では、高速かつセキュアで、信頼性も担保されたネットワークを提供する「ハイパフォーマンスネットワーキング(HPN)」を最重要戦略として掲げているが、クレンズCEOは「(参入するのは)スイッチ市場ではなく、HPNの市場であると考えている」と語り、HPNを補完する役割としてのスイッチ投入だという点をアピール。そのためにも、ルータで一貫し、顧客の支持を受けているOS「JUNOS」を共通してスイッチにも採用し、その特性をより多くの顧客へ提供していきたいとも述べた。

 市場では過去、Juniperによるスイッチベンダー買収の噂が何度となく流れたが、結局自社でスイッチを開発した最大の理由も、JUNOSだという。同社でこの事業を統括する、Ethernet Platform Business Group担当執行役副社長、ヒテシュ・シェス氏は「(買収ではなく開発という選択肢を選んだのは)今まで当社が積み上げてきた独自のプラットフォーム技術を生かしていくため。JUNOSを中心とした製品技術統合によって、HPNの推進を図っていきたい」という姿勢を強調した。

 このような意図が背景にあるため、3つの製品ラインでスタートするEXシリーズについては、競合他社のような広汎な製品ライン拡大は考えていないという。スタンドアロンのボックス型「EX3200シリーズ」、バーチャルシャーシが特徴的なボックス型「EX4200シリーズ」、そしてシャーシ型の「EX8200シリーズ」と、発表されたラインアップはいずれもレイヤ3のスイッチ。シェス氏は、「この3つのシリーズの中で製品を拡充していく」と述べ、明言こそしなかったものの、価格競争が激化しているレイヤ2スイッチの販売などは現在考えていないことを示した。

 それでは、日本ではどうEXシリーズを展開していくのか。シェス氏は「日本では、セキュリティ市場におけるプレゼンスがとても強い」と述べ、NetScreen製品で築いた立場を足がかりに企業市場へ入り込みたいとする。また、「日本の顧客はクオリティを特に重視しているが、JUNOSの信頼性に強い自信を持っているので、JUNOS技術の活用で道が開けると信じている」と話し、ここでもJUNOSがキーポイントになるとした。


日商エレクトロニクスの辻孝夫社長
 事実、1999年からJuniperのルータを販売してきた日商エレクトロニクスによれば、既存ユーザーの間でのJUNOSの評価は非常に良く、新ジャンルであるJuniperのスイッチについても、受け入れられる素地は十分にあるという。同社の辻孝夫社長は、「何よりもJUNOSで統一されていることが、使う側、サポートする側にとっても大きく、運用性を良くするのではないか」という点を指摘。「Juniperの製品はキャリアグレードということで提供されてきたが、EXシリーズはそのDNAを受け継いだ、エンタープライズにも使用可能なスイッチであり、迅速性と拡張性、スケーラビリティ、安全性といったことを兼ね備えた設備として、大変期待している。JUNOSのお客様に一気通巻で使っていただきたい」と述べた。

 市場については、通信事業者、学術・公共機関を含めたエンタープライズ市場を広く想定し、キャリアの法人営業を通じた間接ビジネスと、直販によるビジネスの両面で挑む考えで、2008年度の販売目標は3億円とした。広い市場が期待できるとしながらも、控えめな数字を目標にする意図について辻社長は、「基本的に、最大限の検証をして、納得がいく状態でリリースしたいという思いから、控えめな数字にした」と述べている。販売についてはJuniper自身も、「ビジネスの成長として考えた場合にかなり時間がかかるだろう」(クレンズCEO)、「急激に伸びるとは考えていない」(シェス氏)と、一様に慎重な姿勢を示しており、長期的な視野のもとで着実に市場へ浸透させていく意向である。なお、Juniperの日本国内の販売戦略については、近日中に、あらためて詳細が説明される予定だ。



URL
  米Juniper Networks
  http://www.juniper.net/
  日商エレクトロニクス株式会社
  http://www.nissho-ele.co.jp/
  プレスリリース(日商エレ)
  http://www.nissho-ele.co.jp/press/goods/2007/0801_juniper.html

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( 石井 一志 )
2008/01/31 11:00

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