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富士通がIT構成情報の統合に関する取り組みを説明、標準化にも注力


 富士通株式会社は2月19日、ITシステムにおける運用管理情報の統合技術に関する説明会を開催。同分野で必要な要素技術の開発状況と標準化への取り組みを解説した。

 現在の企業システムでは、サーバーやネットワーク、サービス、資産といったように、各管理業務や部門ごとに最適化された管理システムが多数存在しているのが普通だ。これらはそれぞれが分断されてしまっており、多くの人間がさまざまな情報を突きあわせていかなければいけないため、スキルのある管理者でなくては扱えなかったり、記述漏れや不整合、データの形式の違いなどから突きあわせに間違いが生じたり、といった課題をかかえていた。

 こうした事態を解決するため、ITILの手法によって、各種データベースを統合するCMDB(Configuration Management Database)を導入して、おのおのが独立して保持していた情報を自動的に関連付けできるようにする動きが企業でも進んできた。これが実現すれば、利用者が全体の構成を把握しやすくなるほか、リソース間の関係を調査することにより、特定のインシデントが影響をおよぼす範囲が特定できるメリットがある。


システム構成情報を統合するための2つのアプローチ。富士通ではこのうち、連合方式を採用した

株式会社富士通研究所 サービスプラットフォーム研究センターの勝山恒男センター長
 このCMDB構築に際しては、既存データベースで管理している情報を大きな1つのデータベースにまとめてしまう集約方式と、既存データベースを残したまま、データの所在情報のみをCMDBにまとめて保持する連合方式があり、富士通では後者のアプローチで情報の集約を図っていくという。

 株式会社富士通研究所 サービスプラットフォーム研究センターの勝山恒男センター長は、集約方式について、「単一のデータベースになるので管理という面ではシンプルだが、個々に積み上がってきたものを1つにしようとすると、設計が難しいし、各データベースを使っていたソフトのAPIも変わってしまうので変更が必要になるなど、大変な面がある」と指摘。「当社では、連合方式が現実に合っているのではないかと考えて技術開発を行ってきた」と述べた。

 富士通では連合方式に基づき、システム全体を統合管理するCMDBと、個々のデータベースを管理するMDR(Management Data Repository) Subsystemを連携させる方法を採用。各サブシステム間はSOAの考え方をもとに、Webサービスのインターフェイスで疎結合させる。また、構成情報を統一して記述する言語としてRCXML(Resource Control XML)を用い、それぞれの運用管理ソフトが独自に定義していた管理データの構造を統一することで、各ソフト間での情報交換が円滑に行えるようにした。さらに、散在するデータの中には、例えば同じサーバーを表す情報が違った名称でさまざま存在している状況を改善できるように、リコンシリエーション(整合化)技術を導入。同一の要素だと判断するためのルールを設定することで、自動的に名寄せ作業を行えるようにしているという。

 しかし同社がこのような取り組みを行っているとしても、現実的にはユーザー環境には複数ベンダーの管理ツールが導入されているケースが多いため、ベンダー間での相互運用性を向上させないと、本当のメリットは提供できない。そのため、富士通やBMC、HP、IBM、CA、Microsoftの6社が、CMDB federation標準化ワーキンググループ(WG)として、標準化に向けた取り組みを2006年から実施してきた。

 この目的は、CMDBとほかのデータリポジトリとの間で情報を共有可能な、オープンな業界規格の開発。これに基づく仕様 1.0を2007年10月にDMTFへ提案し、現在は標準化作業が進行中の段階とのことで、2008年末までには正式に策定できる見通しという。また2008年1月にはCMDB Federation WGも発足。今後は、実用面の効果が大きくなる仕様 2.0へ取り組んでいくとした。

 富士通 ソフトウェア事業本部 アライアンス事業統括部の阿部欣成統轄部長代理は、「他社とつながることでベンダーの囲い込みができなくなるものの、顧客がツールを選択する自由度を持てるので、相互運用性は大事と考え、積極的に標準化に参画している。また、社内での事例を踏まえてノウハウを提供するとともに、データの標準化についても、まず当社内から統一を図り、ITILに取り組みやすくしていく」と述べた。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/


( 石井 一志 )
2008/02/19 18:24

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