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矢野薫社長
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グローバルな「イノベーションカンパニー」を目指す
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日本電気株式会社(NEC)は2月20日、報道関係者を対象に、矢野薫社長より経営方針が説明された。
矢野社長は、「NECがフォーカスしているのはNGN。この領域は未踏であるため、なにをやろうとしているのか、わかりにくいかもしれない。だが、イノベーションを起こすイノベータとして、またリーダーとして、この分野にフォーカスしていく」と語った。
さらに、「グローバルイノベーションの実現を目指す。そのためには、海外売り上げ構成比を、現在の約2割から40%にする必要がある。本当の意味では50%が必要」として、今後、海外事業比率を高めていく姿勢を示した。
NECではこの1週間に、仏Alcatel-Lucentとキャリア向け事業領域を起点とした広範囲な協業、米Oracleや米Microsoft、米Hewlett-Packardなど6社とのサービスプラットフォームにおける提携、独SAPとのSI/サービス事業領域における協業強化の3件の提携を発表しており、「いずれもアライアンスを活用した、ITによるグローバル事業の拡大策」と共通項を示し、「これらのアライアンスは大きなステップであると考えている。ここ2~3年で海外売り上げ構成比を30%以上とし、その後、40%を目指す。40%台になるには、小さなアライアンスでは限界があると考えている」などとして、海外における事業地盤の構築に積極的に乗り出す姿勢を見せた。
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仏Alcatel-Lucentとの協業
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サービスプラットフォーム事業の拡大
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独SAPとのグローバル協業
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冒頭、矢野社長は、NECグループの現在の状況として、NGN構築事業は前年比倍増の売上げ目標を達成する見込みであること、モバイルターミナル事業や半導体事業を対象とした不振事業の再建については、予定どおり進展していること、今年度営業利益1300億円の目標達成に向けて進ちょくしていることなどを示し、「NGNによって全社の成長を加速する具体策が実行されている」などとした。
「NGNによる成長戦略の実行施策」としては、先に触れた海外企業との相次ぐ提携をあげたほか、アジア地域での地盤づくりの推進を示した。また、新しいソリューションの拡大と端末事業の進化として、モバイルとパーソナルの強みを活かした新端末の創造をあげた。
「Luiという製品によって、いつでも、どこでも、簡単にPCを使うことができるようになる。パーソナル領域の製品が、ユビキタス社会の入り口になる。ここで使われる端末を、PCと携帯電話との融合のなかで作り出す。HSDPA対応の端末を日本でいち早く製品化したのもNEC。新たなネットワークインフラの変化を先取りした製品を、市場にいち早く投入していく」とした。
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NECが考えるNGN
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NGNによる成長戦略
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イノベーションによる成長力強化
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さらに、矢野社長は、「NECはイノベーションカンパニーである」として、IT・ネットワークデバイスの総合力を生かしたイノベーションによる成長力強化を打ち出した。
急速にシェア拡大を実現したパソリンクの成功を示し、「この成功で自信を深めている。パソリンクの収益最大化を目指し、インド、アジアといった成長市場や中近東やアフリカへの注力を進める。今後、グローバルナンバーワン商品といえる第2、第3のパソリンクづくりに取り組む」とした。
また、トヨタ生産方式を導入し、改革に取り組んでいる生産現場に加えて、これをSI領域にまで拡大するSI革新活動に取り組んでいることを紹介。SIプロセスのバリューチェーン強化を進めているとした。
システム開発標準であるSDEをパートナー会社を含めて広く展開するほか、システムモデルベースSIの導入によって、品質向上に加えて、50%削減を目標とする工期短縮にも取り組む。
「ITサービス/SIにおいては、利益率を年1%ずつ改善し、2007年度の約7%の営業利益率を中期的には2ケタに拡大する」とした。
さらに、環境をキーとした競争力強化として、環境配慮型製品、省電力プラットフォーム、デバイス/素材の3つの観点から、環境負荷軽減に取り組む。
「システム/ソフトウェアから回路、プロセス技術までの総合的な組み合わせによって、世界トップクラスの低消費電力半導体を開発する。MRAM、シリコンフォトニクス、CNTトランジスタといった技術の実用化が見え始め、これにより性能を1ケタ高めることができる。将来のユビキタスネットワーク用チップが完成する」などとした。
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経営目標
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矢野社長は、「社長就任1年目は不本意な1年となったが、2年目は最低限の目標を達成した。今年度1300億円という営業利益目標は、まだまだ水準が低い。十分といえるレベルではない。グローバル化もできていないという反省がある。今後3年でROE 10%以上を目指し、中期的にROE 15%を目指す。これまで掲げた戦略を着実に実行することで実現したい」と語った。
今回の会見では、「NECがどこに行こうとしているのか、なにを目指しているのかをお話ししたい」としたものの、中期経営計画などが発表されることはなかった。
「景気の不透明感があり、この時期に発表することこそが見識を問われる。外部環境がどうなろうと、やるべきことをやるのが私の仕事だが、為替ひとつをとっても大きく動き環境のなかで、ミスリードするような発表は控えるべき。いつ中期経営計画を発表するかということも申し上げられない」として、中期経営計画の発表の予定がないことを示した。
しかし、会見のなかで、3年後のITサービス事業の売上高を4500億円とし、そのうち、「かなり意味のある部分をNGN関連が占める」としたほか、「近い将来には、NGN構築事業で1兆円を目指し、NGN関連投資はその10%程度となる1000億円を毎年投資する」とした。
さらに、「昨年、C&Cが30周年となった。次の30年に向けた新たな言葉が必要だと思っているが、きちっとしたものがない。C&Cの流れに乗って、次の発展段階にきている」と語った。
■ URL
日本電気株式会社
http://www.nec.co.jp/
( 大河原 克行 )
2008/02/21 00:00
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