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David Iに聞く、CodeGearの新製品「3rdRail」と企業戦略

Borlandからの“本当の意味での独立”が目標

 米CodeGearといえば、2006年11月に米Borlandの開発者向けツール部門が分社化して設立された企業だ。「C++」「Delphi」「JBuilder」といった、分社前までBorlandが手掛けてきた多くの開発ツールを継承するだけでなく、「3rdRail」など新たな製品もリリースしており、ソフトウェア開発の分野では、依然として注目される企業の1社だ。

 今回は、イベントのために来日したCodeGear デベロッパーリレーションズ担当副社長兼チーフエヴァンジェリスト、デイビッド・インターシモーネ氏(David I)と、日本の担当者である、ボーランド株式会社 CodeGear事業本部 マーケティングディレクターの藤井等氏に、同社の最新動向と今後の展開、新しい開発ツールなどについて話を伺った。


CodeGear デベロッパーリレーションズ担当副社長兼チーフエヴァンジェリスト、デイビッド・インターシモーネ氏
―まず、現在のCodeGearとBorlandの関係を教えていただけますでしょうか。

インターシモーネ氏
 CodeGearのロゴを見ていただくとわかるのですが、ロゴの下にはfrom Borlandという文字があります。これは私たちのチームの経緯というか歴史です。確かに現在はBorlandに所有されてはいますが、経営陣をはじめ、研究開発、マーケティング、営業などはまったくのチームで、独立した考えを持って行動しています。ちなみに、ALM(アプリケーションライフサイクル管理)の製品や戦略においては、今後もBorlandの名前を使い続けます。このことは、Borland自身が決定しました。


―経営も完全に分離しているのでしょうか。

インターシモーネ氏
 そうです。お客様は当社製品を通して、当社に投資してくださっているわけですが、その投資はそのまま、CodeGearにおける次製品の研究開発への投資となります。Borlandでは四半期ごとに収益を発表していますが、その際もCodeGearは独立して計上されていますし、2007年は通期で利益を上げることができています。最終的にはBorlandの手を離れて、本当の意味で独自の企業として活動していくことになることが目標ですね。

藤井氏
 日本では、CodeGearはボーランド日本法人の中にあるチームという位置付けですが、指揮系統などは全く別です。もちろん、開発チームもマーケティングも別です。


3rdRailの画面イメージ
―では次に、独立したCodeGearが開発した新製品「3rdRail」について教えてください。

インターシモーネ氏
 3rdRailはRuby/Ruby on Railsの統合開発環境です。現在Ruby on Railsを利用しているのは、インターネットサービスを提供する企業や、小規模なWebアプリケーション開発の現場がメインですが、より簡単にWebアプリケーションを開発したいというニーズは高まっています。当社では、今後Ruby on Railsがエンタープライズの分野でもメインストリームに入ってくると考えているのです。


―そのような、エンタープライズでもRuby on Railsが利用される時代はすぐに来るのでしょうか。

インターシモーネ氏
 Javaもエンタープライズでの採用までには時間がかかりましたから、浸透するまでにはそれなりに時間がかかるかもしれません。しかし、Ruby on Railsは、Javaよりは短い時間で採用されることになると思いますよ。


―そもそもの疑問ですが、Ruby on Railsという技術を選択された理由は何なのでしょう?

インターシモーネ氏
 まずRubyという言語を単体で見た場合、ここまでオブジェクト指向でダイナミックで拡張可能な言語というのは、LISPやSmalltalkといった時代にまでさかのぼらないとないのではないでしょうか。そして、RubyはRailsというフレームワークに出会ったことで、あらためてその価値が認識されたいえます。「データベースをバックエンドに持ったWeb 2.0のアプリケーションを簡単に作りたい」という現在のビジネスニーズにも、Ruby on Railsは非常にマッチしているのです。また、Javaを使ったアプリケーション開発が複雑であることも、Ruby on Railsが支持される理由だと思いますね。


―そうすると、今後のWebアプリケーション開発において、Ruby on Railsが主要な言語になっていくとお考えなのですか?

インターシモーネ氏
 私も、そしてCodeGearも、ここ1年から2年の間に、Ruby on Railsが多くの企業で採用されることになると信じています。そしてこのことは、Sunをはじめ、ほかの多くのベンダーも信じていますよ。

藤井氏
 Rubyは日本発のプログラミング言語ということもあり、国内ではRubyに対する反応が若干海外とは異なっています。海外でRailsというフレームワークによってRubyフィーバーが起こり、今はそれが逆輸入という形で日本に入ってきたという状況です。不思議なことに海外で評価されたことで、はじめてRubyはいいものだと認識した人も多いのですが、その一方で日本には古くからRubyのコミュニティがあります。そして、Rubyコミュニティには、これまでRubyを育ててきた心と、蓄積された多くのナレッジが存在しています。当社はこれから、コミュニティの方々と協力し合って、これらのナレッジをビジネスで利用できるようにしていかなければなりません。


CodeGearの開発ツール群

製品ロードマップ
―次世代のJBuilderで搭載される「アプリケーション・ファクトリーズ」も注目されているようですが、どのような機能なのでしょうか。

インターシモーネ氏
 アプリケーション・ファクトリーズはそもそも、当社がJBuilderを開発しているときに、再利用可能なオブジェクトや、そのほかの関連情報をチーム内で共有するために開発された機能でした。本当にチーム開発で必要な機能ということを、私たち自身が証明した機能で、それがそのまま製品化へとつながったのです。ただし製品化にあたっては、単に再利用可能なプログラムのモジュールだけでなく、たとえばオンラインショップのショーケースや買い物カゴなど、ビジネスで利用可能なモジュールも提供していく予定でいます。また、このアプリケーション・ファクトリーズをプラットフォームに、ほかのベンダーとの協業によって、新しいビジネスへ展開することも考えています。


―ところで、Eclipseなどオープンソースのソフトウェアの登場によって、開発ツール単体では利益が上がらないのではないかという声も聞かれます。CodeGearは開発ツール単体のベンダーとして今後も成長できるとお考えでしょうか。

インターシモーネ氏
 もちろん答えはイエスです。確かにEclipseやNetBeansといったオープンソースの開発環境はあります。しかし、私たちはそれらの環境、たとえばEclipseに追加する形の製品によって、お客様のケーパビリティをより高めていきたい。世界中でソフトウェア開発にかかわっている開発者の人数は、全部で1500~1700万人にものぼるといわれています。これらの多くの開発者が、デスクトップアプリケーションやエンタープライズアプリケーションの開発を成功させるために必要なことを、当社では最大限やっていきたいと考えています。


―製品に相当の自信をお持ちであることは理解できました。では実際、CodeGearが持つイニシアティブは何であるとお考えでしょうか?

インターシモーネ氏
 いろいろな分野でそれぞれにあると思います。たとえばWin32のネイティブコードによる開発ですが、MicrosoftはすでにVisual Basicの供給をやめています。もちろんOSやそのほかの目的のためにVisual C++は提供していますけれども、ラピッド開発やEase of Development(EoD)の開発ツールを提供しているのはCodeGearだけです。デスクトップでもクライアント/サーバーでも、Win32のネイティブコードはたくさん利用されていますし、ISVやMicro ISVでもやはり同様です。

 また、マネージドコードの分野においては、Eclipseに対して付加価値を提供するJBuilderがあります。これは、EJBやWebサービスの開発において、ビジュアル開発できる環境を提供する製品です。そして、ダイナミックの分野においてはRAD(Rapid Application Development)を実現するツールとして、Delphi for PHPや3rdRailといった新製品を提供しています。これらの各分野についてだけでも成功する要因は多くあると思いますが、そのほかの分野においても、さらなる研究開発を続けていきます。



URL
  ボーランド株式会社 CodeGear事業本部
  http://www.codegear.com/jp/


( 北原 静香 )
2008/02/22 09:30

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