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【左】SAPジャパンの八剱社長【右】日本BOの印藤社長
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SAPジャパン株式会社と日本ビジネスオブジェクツ株式会社(以下、日本BO)は2月26日、共同記者会見を開催。SAPジャパン 代表取締役社長兼CEOの八剱洋一郎氏と日本BO 代表取締役社長の印藤公洋氏が登壇し、2007年10月に電撃的に発表された独SAPの仏Business Objects(以下、BO)買収に関する説明を行った。
最初に登壇した八剱社長はまず、「当社はあくまで、買収に頼らず自ら成長していくオーガニックグロース(有機的成長)の企業で、それはこれまでも今後も変わらない。今回の買収は例外的な判断である」と発言。
この例外的判断の背景にあった思惑については次のように語る。「SAPでは、エンタープライズSOAやBPP(Business Process Platform)や、GRC(Governance/Risk/Compliance)などの新規ビジネスエリアの売り上げを、2005年から2010年にかけて倍増する計画を立てている。2007年もソフトウェア関連が大きく伸長し、総売上711億7000万円で前年比14%増するなど好調さの一方で、この計画を達成するためには重大な要素が欠けていることに気が付いていた。それを補うために、いまここで大きなエンジンを取り入れる必要があった。それがBOの買収。もちろん今までのようにオーガニックグロースで乗り切る手もあったのだが、2010年までという短い期間では間に合わない恐れがあった」。
ここでいう欠けた要素とは、いうまでもなくビジネスインテリジェンス(BI)の部分だ。SAPが得意な領域は、人・物・金の分析を行うERP。「企業の“過去”の成績を詳細にレポートして“現状”をとらえるためのもので、車で例えるならバックミラーに相当する。この領域はSAP ERP 6なども順調に導入数を増やしており、市場のリーダーを自負しているが、一方で車のダッシュボードやフロントガラスに相当する“未来”の視点、すなわちBIの領域は不足していたといわざるを得ない」(八剱社長)。
この部分を、時間のかかるオーガニックグロースで補うのではなく、迅速に対応できる統合という形で対応しようというのが、例外的判断の理由だ。
では、BO以外という選択肢はなかったのか。これについて八剱社長は「もちろんBOを選んだことには意味がある。統合することでSAPの弱点をカバーできるだけでなく、両社が以前より良好な関係にあり、統合後も社員などに不安を与えることなく、極めて友好的に手を組めるということがあらかじめ確信できていた」とそのほかの選択肢を否定した。
SAPはこの買収により、既存のBPM、中堅中小向けの業種別ソリューションに加えて、「ビジネスユーザーソリューション(BUS)」という3つ目の事業を展開することになる。BUSを簡単に説明すると、「ERPで過去と現在を分析し立案したビジネス戦略と、これを達成するために必要な実行部分を合わせて提供するものだ。これで経営戦略のPDCAを確実に回せるようになる」(八剱社長)。
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SAPジャパンの2007年ハイライト
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グローバルでのエンタープライズSOA浸透度
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統合により戦略立案から実行までのPDCAサイクルを実現
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BOのポートフォリオ
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一方、日本BO側から今回の買収を見るとどうか。印藤社長はまず「CEOにとってBIの重要性は年々高まっている」点に触れ、「BIのためには高品質なDWH構築が重要である」と説明。DWH構築の領域においては、データ抽出やクレンジング、メタデータの管理を行うような「Enterprise Information Management」というポートフォリオを持っている同社だが、「ここにSAPのマスタデータ管理が加わることで、より高品質なDWH構築が可能になる」とした。
それを分かりやすい表現で示すのが、BOの真骨頂であるBIの領域だ。さらにその上のレイヤであるGRCやパフォーマンス管理の領域でもSAP・BOが相互補完することで、印藤社長は「日本BOがこれまでに描いてきたビジョンに向かって一層まい進していける」としている。この言葉通り、買収によってBOという存在が消えるわけではなく、統合は非常に緩やかに行われていくようだ。
「BOはSAPの1ビジネスユニットとして今後も独立性が保たれる。その上でクロスセルや製品の相互補完などシナジーが生み出せるところは積極的に連携していく。製品の競合を指摘する声も多いが、それについては確かに似た製品を扱っており、一部競合している部分もあるが、世間が思っている以上に実は相互補完する領域の方が多い」(八剱社長)。
日本BOの既存ユーザーに関しても、これまでと変わらず製品販売・サポートを行っていく方針。印藤社長は「日本オラクルなどの既存パートナーとの提携も今までと変わらず行っていく」と力強く明言しており、八剱社長も「日本BO製品は、SAPのERPと非常に相性がいいが、そのほかの製品とも相性がいいのが特長。その魅力を消すようなことはしない」とコミットしている。
その中で一部競合する分野については、製品や顧客のニーズなどを十分考慮した上で、最適なロードマップを決めていく予定だ。なおSAPオリジナルのBI領域に関しては、「今後縮小していくなどの決定事項は現時点では何もない。私見では、両社の製品のいいとこ取りという形で最適なロードマップを今後発表できていければよい」というにとどめ、具体的な今後の予定に関する発言は持ち越された。
■ URL
SAPジャパン株式会社
http://www.sap.com/japan/
日本ビジネスオブジェクツ株式会社
http://japan.businessobjects.com/
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( 川島 弘之 )
2008/02/26 17:49
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