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「サーバー統合の流れをつかんでWAN高速化を普及」、リバーベッド


 近年は、管理コスト削減やコンプライアンスの強化などを目的に、サーバーやデータの統合を進める動きが活発化しているが、これに伴って、データセンターと拠点を結ぶWANを高速化するための製品に対しても、注目が高まってきた。WAN高速化アプライアンス「Steelheadシリーズ」を中核にビジネスを進めるリバーベッドテクノロジー株式会社(リバーベッド)も、同分野の主要ベンダーの1つである。今回は、リバーベッドの代表取締役社長 遠井雅和氏と、マーケティングマネージャーの伊藤信氏に、同社の戦略などについて話を聞いた。


マーケティングマネージャーの伊藤信氏

Steelheadアプライアンス
―まず、WAN高速化や、リバーベッドという会社の認知度を高めていくために、国内でどういった活動をしていくのかをお聞かせください。

伊藤氏
 当社としては、単なるWAN高速化ではなく、IT統合とWAN帯域幅の最適化を実現する「WDS(ワイドエリアデータサービス)」という概念を広げていきたいと考えています。WAN高速化が、CIFSだけの高速化だと思われている方もまだいらっしゃいますので、WDSの中にWAN高速化があって、TCPやデータ、アプリケーションの高速化があるのだということを、正しく認識していただけるようにしていきたいですね。そうでないと、(幅広い高速化を提供できる)当社が損をしてしまいますから(笑)。

 そのために、今年の夏ごろに全国を回って、代理店などへメッセージを伝えていくつもりでいます。(WAN高速化製品のニーズが高いとされる)日本の製造業のお客様は、主要都市以外に複数の拠点を持っていることが多いですからね。


―その際には、どういったメッセージを発信されるのですか?

遠井氏
 国内は回線事情がリッチだといっても、拠点があるところにすべからく太いパイプ(回線)が引けるわけではありません。太くしてもレイテンシなどの問題は解決できませんし、また、パイプを太くして終わりでは先行きの問題もありますね。

 国内には、回線事情をどう解決するかということのキープレイヤーがいらっしゃいまして、たいていはインテグレータなのですが、そうした方々に、ストレージ統合にはこういうものが有効、アプリケーションを快適に使うにはこういうものがいい、というのをきちんとメッセージアウトしていきます。その結果、当社製品は(WAFSなどと違って)何でもできるじゃないか、という点を分かっていただければと思います。

 現実的には、回線事情に問題があって、アプリケーションをお使いの方がメインになるでしょうが、それが終わったらバックアップやディザスタリカバリ(DR)へと活用の幅を広げられるのは当社製品の良さなのではないでしょうか。


伊藤氏
 ここ最近のサーバー統合の加速化は、当社のビジネスチャンスを広げるいい機会です。エンドユーザーからのリクエストもあるでしょうし、Microsoft Exchangeを使っていらっしゃればその高速化もアピールできます。またサーバー統合の結果DRサイトを持つことになると、そこにも入っていける。この面では、ストレージベンダーとの協業も重要になると考えています。


代表取締役社長の遠井雅和氏
―すでに、そういった協業の取り組みは始めていますか?

遠井氏
 巨大なNASベンダーであるNetAppをはじめ、EMC、3PAR、EqualLogicとも協業しています。国内では日立とも話をしていますし、当社のOEMパートナーであるNECのiStorageとの協業も、付加価値としてやっていきたいですね。

伊藤氏
 ストレージベンダーが高速化装置を持っていても、さらに速くなりますよというアピールができます。例えば、RiOS 4.1から搭載されたDR機能では、大規模データ送信時のキャッシュ効率を高めています。この分野はROIが見やすく、また大きいので、お客様にとってもメリットがわかりやすいですね。


―今、iSCSIストレージベンダーの名前も出てきてましたが、リバーベッドのWAN高速化はiSCSIにも有効なのですか?

伊藤氏
 残念ながら、iSCSIに特化した高速化機能は持っていません。しかしながら、TCPベースの最適化やキャッシュなどだけでも、十分効果が上がりますよ。例えば、iSCSI経由のブートパフォーマンスを高速化し、10分かかっていたのを32秒へ短縮した例があります。


―さて、データセンター統合によってリモートオフィスなどの機能がセンター側へ集約されると、これまであったプリンタサーバーやDHCPサーバーなどはどうするんだ、という話が必ず出ますよね。それを解決する上では、RiOS 5.0でサポートされたRSPは面白い構想だと感じました。RSPの機能としては、どういったアプリケーションが組み込まれることになるのでしょう?

伊藤氏
 当社のWAN高速化アプライアンスへ独立した別の機能を搭載するRSPのアプローチで有効なのは、既存のエンタープライズ企業が拠点に入れなくてはいけない機能、つまり管理機能やセキュリティだと思います。具体的には、トラフィック・ネットワーク管理ですとか、UTM(統合脅威管理)、DNS/DHCPなどのベンダーとはすでに協議をしていますし、これからは、無線LANの管理機能とか、VoIPの呼制御サーバーとかも考えられるでしょうね。

遠井氏
 当社製品を販売しているパートナーが、現在は独自にインプリメントする必要があるもの、彼らが相乗効果として必要だと考えるものがありましたら、日本でも順次話をしていきたいと思っています。


―課金体系はどういった形になりますか?

伊藤氏
 お客様にはまず、RSP自体を有効にするためのライセンスをご購入いただきます。これによって、追加コストなくプリンタサーバーの機能は利用できるようになります。また、そのほかの追加機能に関しては、その機能を提供されるサードパーティから個別に購入いただくことになります。現実的には、Steelheadを導入するSIerが、まとめてお客様に販売・納入する形になるでしょうね。


―RiOS 5.0の発表会では、RSPの導入が可能なのはラック型以上の製品だという話がありました。ただし、小規模拠点にこそ有効な機能に思えるのですが、対象は拡大されていくのでしょうか?

伊藤氏
 RSPでのアプリケーション導入によって、WAN高速化本来の性能が発揮できなくなっては意味がありませんので、当初はリソースの一部しか割かないようにする設計がされています。これを考えると、現在の(小規模向け)デスクトップ製品では性能的に厳しいでしょう。今後は、ニーズとハードウェア性能を考慮しながら検討していきます。


―WAN高速化分野にも、多くのベンダーが競合として存在しますが、RSPは差別化の1つの鍵になりそうですね。それ以外では、強調できる差別化ポイントというと何になりますか?

遠井氏
 総じて言うなら、WDSという構想でしょう。アプリケーションの最適化も、CIFSの最適化も、RSPもあって、エンタープライズで使っていただけるだけの機能と拡張性、実績があります。それから、多くの拠点数をカバーして、きちんと動作している実績があるのも強みです。200~300拠点でもきちんと動いているのは、当社製品だけではないでしょうか。米大手金融機関の事例などを見ていただければ、相当多くの拠点数で動作しているのがおわかりいただけるでしょう。

 また当社では、WAN高速化のクライアントソフトもご用意していまして、モバイルでの利用や、小規模拠点でのコスト削減には効果があります。1世代目が出てまだ半年ということもあり、これから実績はあげていかないといけないでしょうけれども、強みの1つと思っています。


―最後に、販売を進めていく上での課題があればお聞かせください。

遠井氏
 アプリケーションの担当とインフラの担当が別の方というケースが多く、アプローチが難しいという面が、確かにあります。アプリケーションの高速化による効果を、アプリケーションの担当者に理解いただいても、インフラ担当が難色を示しては、導入できませんからね。

 そこで、RiOS 5.0から導入された透過型のアプローチが重要になります。実際に透過型で使うかどうかはまた別の話ですが、「ネットワークをいじらないで導入できます」とアピールできますから。


―ありがとうございました。



URL
  リバーベッドテクノロジー株式会社
  http://www.riverbed.com/jp/

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( 石井 一志 )
2008/02/27 17:03

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