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「FC-SANとiSCSIは両輪」、デルがEqualLogic買収後のストレージ戦略を説明


イコールロジック営業本部 本部長の秋山将人氏

iSCSIでは標準技術ベースで仮想化が実現できるという
 デル株式会社は2月28日、ストレージ戦略に関する記者説明会を開催した。同社では米Dellの米EqualLogic買収を受け製品ポートフォリオが拡大しているが、これらの製品を社内でどう位置付けて販売していくかなどについて、買収前にイコールロジック日本法人の代表を務めていた、イコールロジック営業本部 本部長の秋山将人氏らが解説している。

 デルでは以前から、自社ブランドのDAS/NAS製品「PowerVaultシリーズ」を主にローエンド市場へ向けて扱う一方で、ミッドレンジからハイエンドに対しては、EMCとのアライアンスによる「Dell|EMC」ブランドを展開していた。そこに「Dell EqualLogic」ブランドのiSCSIストレージが加わったのだが、Dell|EMCブランドのCX-3/AXシリーズとDell EqualLogicブランドの製品は、価格帯が重複する部分もあり、一見すると自社内で競合してしまうようにも見える。これについて、エンタープライズ マーケティング本部 ストレージブランドマネージャーの矢部聖一氏は、「iSCSIストレージとFCストレージは戦うものではなく、両輪として進んでいくもの」と否定。顧客の持つニーズによって、両製品ブランドのすみ分けが可能であるとした。

 Dell EqualLogic製品のフォーカスする市場として矢部氏は、DASからSANへの置き換えと、サーバー仮想化環境の2つを例として挙げる。iSCSIを用いるDell EqualLogic製品は、FC-SAN製品と異なり既存のネットワーク環境をそのまま利用でき、パフォーマンスチューニングをストレージ自身が自律的に行う「自己最適化機能」などによって高い管理性を持っていることから、DAS製品のネットワーク化に取り組みやすいメリットがある。

 仮想化については、iSCSIは複数のストレージアレイにまたがる仮想IPアドレスを設定するだけで、簡単にグループ化ができるという特性を持ち、ストレージの仮想化が非常にしやすい。また、Dell EqualLogic製品の特徴である容易な増設、シンプロビジョニングといった機能とVMwareなどのサーバー仮想化ソフトとの親和性も高く、ハードウェアインフラの仮想化を実現しやすいという。

 では、肝心のパフォーマンスはどうか。FC-SANとの比較ではこの点がもっとも心配される部分だが、秋山氏は「アプリケーションの観点から見た場合、ビデオストリーミングのようなごく一部を除けば帯域を使い切るものは少なく、仮想化環境も含めて、バンド幅がボトルネックになるようなことはあまりない。またレスポンスはプロトコルに依存しないものなので、FCでもiSCSIでも変わらない」と述べ、iSCSIへの不安感を一蹴(いっしゅう)した。

 あわせて秋山氏は、旧イコールロジック時代からの特徴である、ソフトウェアオプションがない点もセールスポイントとして強調。「高度な機能までをすべて標準機能として提供するので、いつでも必要な時に必要な機能をご利用いただける」と述べている。


Dell EqualLogic PS5000シリーズ

エンタープライズ・マーケティング本部 本部長の中島耕一郎氏
 デルにおける旧イコールロジック製品は「Dell EqualLogic PS5000シリーズ」として再編されており、SATA HDD搭載の旧PS100E/300E/400Eが「PS5000Eシリーズ」、10000rpm SAS HDD搭載の旧PS3700Xが「PS5000X」、15000rpm SAS HDD搭載の旧PS3800XV/3900XVが「PS5000XVシリーズ」の各名称で継続して提供される。なおPS5000Eシリーズでは、1TB SATA HDDを16基搭載した新製品が、再編後最初の新製品としてすでに発売されているという。

 デルでは、こうした特性をアピールして、IAストレージ市場をDell EqualLogic製品の主なターゲットとし、Windows/Linux、仮想化サーバーなどの環境へ積極的に販売を進める考え。同社のサーバービジネスなどと同様の直販を進めるほか、これまでイコールロジック日本法人が行ってきたパートナー経由のチャネルも活用し、両面から販売を行う。秋山氏は「もちろん、デルのサーバーにしかつながらないわけでなく、パートナーとともにさまざまな市場へリーチしたい」とした。

 「PowerVaultやDell|EMCも当然継続するが、Dell EqualLogicのラインが加わることで、iSCSI革命を日本でリードしていく。FCを大きく超えるコストメリットがiSCSIにあり、ストレージの仮想化を通じてITのシンプル化を実現する」(エンタープライズ・マーケティング本部 本部長の中島耕一郎氏)。

 一方でDell|EMCブランドについては、「アプリケーションに対して最大限のパフォーマンスと技術を与える製品」と位置付け、すでにFC-SAN環境を構築済みの顧客や、アプリケーションごとにストレージをチューニングしたい顧客などを中心に販売する。デルでは、「基本的にお客様が選択できるように、選択肢を提供する」としており、今後も各系統のストレージをそろえていく方針だ。



URL
  デル株式会社
  http://www.dell.com/jp/

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( 石井 一志 )
2008/02/28 15:39

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