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マイクロソフト、ITエンジニア向け支援活動を強化し「Power to the PRO Next」へ


【左】ダレン・ヒューストン社長、【右】樋口泰行COO

Power to the PROの4つの取り組み
 マイクロソフト株式会社は3月5日、ITエンジニア向けの支援活動「Power to the PRO」を強化すると発表した。ITプロフェッショナル(以下、IT Pro)や開発者からの声や顧客満足度調査の結果を踏まえ、新たな施策も加えた「Power to the PRO Next」として再スタートを切る。

 Power to the PROは、同社が2005年に発表した3カ年計画「PLAN-J」の一環として、ITの開発や運用の現場に対する支援を目的に取り組んできた活動。

 具体的には、1)MSDNやTechNetなどのオンラインでの技術情報の提供をはじめ、2)各種の集合型・出張型セミナーによるFace to Faceのコミュニケーション確立、3)資格試験やそれに対応するトレーニングコースの提供、4)フォーラムやブログによる企業や組織の枠を超えたコミュニティの確立、と主に4つのテーマで取り組みがなされてきた。

 PLAN-Jの中にも日本への投資引き上げなどが盛り込まれており、こうした活動には力を入れる同社だが、代表執行役兼COOの樋口泰行氏が「まだまだ日本のIT Proや開発者には不足していると思わせる部分が多く、当社が年に2回行っている顧客満足度調査でも気を引き締めなければならない結果が出ている」と語るように、必ずしもうまくいっているとはいえない状況である。

 樋口氏との社長職交代で、同発表会が国内最後の舞台となる代表執行役社長のダレン・ヒューストン氏も、「日本ではエンジニア不足、スキルの維持や向上などに課題を抱えており、当社としてのIT Proや開発者に向けての支援が十分に行えているとは言い難い状況。社長としてやってきた中で唯一後悔があるとしたらまさにこの点で、今回最後の発表会にこのテーマを選んだ理由でもある。日本は世界のイノベーションをリードする重要なマーケットで、そこから上がってくる声は世界品質につながっている。当社として、もしくは業界全体にとっても、日本の技術者に対するより多くの情報提供は非常に重要なことで、今回発表するPower to the PRO Nextはそのコミットメントの証でもある」と述べている。


ITエンジニアからの声

Power to the PRO Nextの内容
 そのPower to the PRO Nextには、現場から実際のフィードバックを多く反映した施策が盛り込まれており、具体的には、1)技術資料の提供内容や提供形態の強化、2)技術的な問題解決に役立つサービスの強化、3)中小規模企業への支援プログラム、の3点を軸にアップデートが図られる。

 1)については、「とにかく日本語の技術資料を充実してほしいという声のほか、技術情報があってもWebサイトが複雑で見つからないといったフィードバックを多くいただいた。そこで施策としては、MSDN・TechNetオンライン上の特に要望の高い資料1万ページの翻訳を進めるとともに、これらWebサイト自体も分かりやすく一新する。さらにVisual Studio 2008やSilverlightなどの新技術を中心に約20タイトルの書籍を出版していく」(樋口COO)と述べ、9月の完了をめどに作業を進めていくとした。なお翻訳する資料の選定のためには、4月4日までの1カ月の間にPower to the PROのWebサイト上で「あなたがほしい技術情報を5つお選びください」とのアンケートを実施する予定だ。

 2)については、「トラブルシューティングに関する資料や気軽に相談できるオンライン窓口がほしいという声をいただいた。これに応えるために、MSDN・TechNetフォーラムなどを通じて質問に回答する窓口を設置するほか、情報検索サービスも提供する。このためエンジニア5名を専属要員として配置し、6月までにサービスインする予定だ」(樋口COO)。この情報検索サービス「オンラインコンシェルジェ」では、単なる製品情報だけではなく、導入・運用に関する情報に素早くたどり着けるよう、IMを利用して情報の所在地をチャット形式で案内するという。

 3)については、中小規模のISVやSIerのITエンジニアを対象に、製品評価版や技術書籍の提供を行う予定。「詳細は現在つめている段階で、4月には正式に発表できる」(同氏)としている。

 以上が新施策となるが、既存の取り組みに対する叱咤(しった)も多く、特に「製品自体の品質を上げてほしい、製品のライセンスが分かりづらく提案や購入が難しいという声も多くいただいた」(同氏)という。そこで既存施策の強化としては、「2007年9月に着任したCQO(Chief Quality Officer:最高品質責任者)を中心に製品品質の向上に今まで以上に努めるほか、ライセンスアドバイザーという無償ツールの日本語化を進める。併せてライセンスコールセンターも1.5倍にリソース拡充を図る」とした。

 最後に樋口COOは、「すべてのITエンジニアの皆様に、もっとも信頼されるパートナーをめざす!」と力強く宣言。ヒューストン社長からは、「社長就任中に当社が成し遂げてきた数々の実績、例えばイノベーションセンターの活動や新製品の発表を世界と同時に行えた実績については誇りに思っている。一方で、日本は有数のIT社会でありながら、職場環境はまだまだ良いものではなく、生産性も西欧諸国と比べて30%くらい遅れているといわれている。これは逆にチャンスである。樋口氏にはさらなるテクノロジイノベーションやITエンジニアへの取り組みを推進していってほしい」との言葉が贈られた。同氏は今後、米国本社に戻り、「Yahoo!などさまざまある問題に取り組んでいく」ことになる。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  プレスリリース
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3376

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( 川島 弘之 )
2008/03/05 18:55

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