「いろいろな会社がパフォーマンスマネジメント(以下、PM)を唱えているが、それらの多くは狭義のPMだ。SASであれば、過去の分析も将来の予測も行える」、そう語るのは米SAS Instituteパフォーマンス・マネージメント・ソリューション グローバル・プロダクト・マーケティング・マネージャーのゲーリー・コーキンス氏。コーキンス氏は、「パフォーマンス・マネジメント―戦略をすべての人の仕事に落とし込む」(東洋経済新報社刊)という書籍を執筆するなど、PMに関するエバンジェリストといえる存在だ。今回、来日したコーキンス氏に、SASが提唱するPMについて話を伺った。
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米SAS Instituteパフォーマンス・マネージメント・ソリューション グローバル・プロダクト・マーケティング・マネージャーのゲーリー・コーキンス氏
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―PMについて簡単に説明していただけますか?
コーキンス氏
PMを簡単に説明するということは、宇宙について簡単に説明してほしいといわれるくらいに非常に困難なことなんだよ(笑)。実際、PMは何かということについては、混乱があり、あやふやなこともあるのが現状だ。コンサルタントによって、ソフトウェアベンダーによって、また、ITのリサーチ会社などによって、定義もさまざまだ。
PMは、CRMやERP、シックスシグマ、戦略マップ、バランススコアカードなど、複数の手法を統合したものといっていい。CRMやERPはそれ自体で機能しているが、それだけでしかない。バラバラに存在するこれらを統合し、さらに分析ツールを追加すれば、パワフルなものになる。PMは、パフォーマンス(業績)をつねに監視することで、より早い段階で問題を発見するためのコンセプトといえる。
PMが注目される理由を見ると理解が深まるのではないだろうか。
―PMが注目される理由には、どういうものがありますか?
コーキンス氏
いくつもある。たとえば、経営陣による戦略実行の失敗というのはわかりやすい事例だ。多くの経営陣は、戦略を立案するのは得意だが、それを実行できないという問題を抱えている。実際、アメリカで2007年に交代したCEOの数は過去最高になっている。
では経営陣に能力がなかったからこうした事態になっているのかといえば、そうではない。彼らは非常に優秀だ。問題は、現場とのコミュニケーションがうまくできていないという点にある。また、効果測定もできていないという問題もある。PMでは、スコアカードや戦略マップを用いることで、こうした問題を解決できる。
また、不十分なマネジメントも、PMが注目を集める要因となっている。昔はセールスマンがどんどん売ればいいという時代だったが、今は顧客の満足度を重視する時代だ。それも男性・女性といった単純な分類ではなく、多次元による分類が必要になっている。SASが提供するツールであれば、300以上の次元に分けて分析できる。
管理会計という観点からもPMが注目されている。たとえば、レストランに複数の友人といって、自分は一番安いものを頼んでいるのに、高い料理を注文した友人たちと支払いの際に割り勘でといわれたら、どんな気分になるだろうか? 実際、企業の管理会計では、間接費を社員数で割って計算しているのだ。
PMでは、アクティビティベースコスティング(ABC)に基づいて、個別のP/Lを作成することで、コストを正確に分析できる。これにより透明性が高まるのが特長だ。
―こうした課題であれば、ERPなど既存のソリューションでも改善できるようにおもえるのですが。多くの経営者は、ERPを導入することで、ある程度これらの課題を解決できると考えているとおもっています。
コーキンス氏
ERPが日々のデータを処理するのに最適なソリューションなのは理解している。しかし、それだけだ。PMは、パフォーマンス(業績)をつねに監視することで、より早い段階で問題を発見するものなので、次のステップとして予測するという作業が必要だ。
これを理解するには、情報の流れを見るのがいいだろう。ERPは生データを収集するのに最適なソリューションだ。それを基本的なレポートにまとめたり、詳細なレポートにすることで、生データが情報に進化し、活用可能になる。ここまでは多くの企業で実現しているだろう。
その次には、原因分析が必要だ。なぜそうなったのか、どこが問題だったのか、なぜその問題は起きたのかといった分析だ。多くの企業では、データの収集と分析で別のツールを使っており、それぞれ別々にログインして使い分けなければならないのが現状だ。SASは、この両方を統合して提供している。また、業界ごとのソリューションとしても提供しているので、本当の意味での予測を行うことが可能だ。
―他社もBI機能に注力しており、PMを実現する環境は整っているようにも見えます。
コーキンス氏
他社もPMを唱えているが、多くは狭義のPMだ。それぞれの都合のいいように説明している。たとえば、ダッシュボードは見るだけのツールではいけなくて、動かせないとだめだ。PMはつねに循環するもの。SASであれば、過去の分析はもちろん、将来の予測も行える。
■ URL
SAS Institute Japan株式会社
http://www.sas.com/offices/asiapacific/japan/
( 福浦 一広 )
2008/03/10 13:00
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