アダプテックジャパン株式会社は3月11日、性能と拡張性を大きく向上させたRAIDコントローラカード「Adaptec RAID 5シリーズ」を発表。SAS/SATAの両インターフェイスを1枚のRAIDコントローラでサポートする「ユニファイドシリアルアーキテクチャ」戦略を前進させている。今回は、発表に伴って来日した米Adaptecのブランド・プロダクト・ディレクター、スレッシュ・パニカー氏と、日本法人のマーケティング部マネジャー、若山卓也氏に、新製品の特徴やマーケティング戦略を聞いた。
|
今回発表されたAdaptec RAID 5シリーズは、全部で7製品だ
|
―まず、Adaptec RAID 5シリーズの特徴を教えていただけますか?
パニカー氏
昨年発表されたAdaptec RAID 3シリーズとは、まったく違うものだということを念頭においてください。前回の製品提供後、SIerやシステムビルダーとの緊密な情報交換をしてきましたが、その中で6つの大きな要望があったんです。そのうち、スケーラビリティや互換性、スピードといった点、これらを全部あわせて1つと数えますが、それを実現したのがAdaptec RAID 5シリーズなのです。残った5つの要件についても今後数カ月で実現する予定で、一部分はファームウェアのアップグレードで実装可能ですが、残りはハードウェアで提供されます。
―今回実現されたスピードや拡張性というのは、競合製品と比べても強調できるのでしょうか?
パニカー氏
優れたアーキテクチャを採用し、Intelとの協業によって高いパフォーマンスと拡張性を追求し、さらにその結果を自社内で強化してきましたので、Adaptec RAID 5シリーズの拡張性とパフォーマンスに匹敵するものはないと思っています。競合が持っている現状の製品のアーキテクチャではそれに対抗できません。Adaptec RAID 3シリーズには競合がいましたが、Adaptec RAID 5シリーズにはないのです。
―なるほど。ただ、価格的にさほど変わらないということで、Adaptec RAID 3シリーズとのすみ分けがしにくいようにも思えますが、これについてはいかがですか。
パニカー氏
確かにそうかもしれませんね。小さな価格上昇で大きなパフォーマンスが得られるわけですから、当社としては、既存のAdaptec RAID 3シリーズのお客様が、Adaptec RAID 5シリーズへ移行していただけるのではないか、とも期待しています。また、現在市場で提供できていない価値を、これからもAdaptec RAID 5シリーズへ盛り込んでいきますが、従来のシリーズでは実現できないこともありますので、より価値が上がると思っています。もちろん、既存のお客様が現在のままで十分、ということでしたら、それも構わないのですけれどね。
|
米Adaptecのブランド・プロダクト・ディレクター、スレッシュ・パニカー氏
|
―一方、製品を展開する上で、大規模な環境に耐えられる処理性能やスケーラビリティを持つということになると、Adaptecブランドではなく、SIerなどが提供するシステムの中へ組み込まれて、エンドユーザーへ提供される形がこれまでよりも増えますよね。
パニカー氏
はい、そうなりますね。そのために、昨年1年をかけてエコシステムを一生懸命作ってきました。当社だけで提供するのではなく、ほかのパートナー企業とともに提供する仕組みは、成功しているといえます。
―しかしそうすると、Adaptecというブランドがエンドユーザーからは見えにくくなってしまいます。マーケティング上、マイナスになりませんか?
パニカー氏
いえ、それはまったく違います。さまざまなSIerとお話をした結果わかったのですが、「こういったソリューションが欲しい」ということをお客様がSIerへ詳細に要望する中で、当社の製品を採用してくれという声がたくさんあるようなのです。当社のマーケティング戦略がそれだけ浸透しているといえますね。私が担当していることなのですから、当たり前なのですが(笑)。また、営業部隊の仕事を再定義して、(SIerなど)直接のお客様の、さらにそのお客様へ話をするようにしたことも、効果があったといえるでしょう。
―それでは次は、Adaptec RAID 5シリーズの活用に適している業種がどういったところになるのかを教えてください。
パニカー氏
急成長が見込めるところとしては、5つのセグメントを考えています。まずはインターネットデータセンターなどでのWebホスティングがありますし、デジタルビデオサーベイランス、医療画像、通信、教育といった市場ですね。これらの市場に特にフォーカスしているというわけでもないのですけれども、当社のお客様であるSIerが強いところであり、結果として力を入れていくことになるでしょう。
また、パフォーマンスと拡張性が提供できるようになったことで、新たな市場も狙えます。高いパフォーマンスが必須とされる3Dモデリングですとか、大規模な研究機関などが挙げられます。CERN(欧州原子核研究機構)が取り組んでいるような原子加速器などは、高いパフォーマンスや多くのストレージが必要ですので。当社ではすでに、SIerや研究機関とともにさまざまな作業を進めてきていますが、Adaptec RAID 5シリーズのパフォーマンスを評価していただいています。
―日本市場でも、それは同じですか?
パニカー氏
先ほど申し上げた5つに一番フォーカスするという点は変わりません。例えば、CTスキャンやMRIなどの医療画像処理は、すでにドイツや米国では例がありますし、近い将来、日本でも使われるだろうと思っています。
若山氏
やはり、国内でもワールドワイドと同じようなことをしていくようになるでしょう。また当社としては、お客様のニーズを聞いて製品にフィードバックできるかどうかが、一番のキーになると考えていますので、継続して取り組んでいきます。例えば、Adaptec RAID 3シリーズの時、「SATAのみの製品に比べて使い勝手はいいし、価格も手ごろだけど、もっとスピードがあるといいね」という声をいただきましたので、まずは同じシリーズ内でパフォーマンスを上げる努力をしつつ、そういった声があることを本社へ伝えて、ロードマップへ反映されるようにしてきました。こうした要望はお客様ごとに異なるものが本当にたくさんあって、ほかにも多くの要望をいただいておりますので、お客様のかゆいところへ手が届くようにしていきたいですね。そうすれば、ビジネスは自然とうまくいくでしょうから。
SIerとも、直接的には30~40社、代理店経由では数百社とお付き合いしていますし、ほかにも、ワールドワイドで協業しているスーパーマイクロとは、国内でも協業しています。また、技術検証の結果を公開していることも、お客様の(ソリューション構築に要する時間を)短くすることにつながっています。
―最後に、SASとSATAの動向をおたずねします。昨年6月には、SASは用途が限られていて、SATAの割合が圧倒的だとうかがいましたが、この傾向は変わっていますか?
パニカー氏
現状では当時とまったく変わっていません。SASは大規模なOEM用途がほとんどで、SIerレベルでは、SATAがまだまだ中心です。もっとも、これは変わるかもしれません。というのも、SATAのインターフェイスでのみ提供されていたHDDベンダーの1TB HDDのラインアップに、同じ価格でSAS HDDが追加されるんです。これで、業界が大きくSASに流れる可能性がありますね。これはSATAの価格でSAS/SATA両対応のRAIDコントローラ製品を提供している当社にとっては、大きなチャンスです。競合は、まだSATAとSASのラインアップが別々ですし、価格も違いますから。
―ありがとうございました。
■ URL
アダプテックジャパン株式会社
http://www.adaptec.com/ja-jp/
■ 関連記事
・ アダプテック、SASとSATAに対応したユニファイドコントローラを発売(2007/03/28)
・ SCSIのベンダからSATAのベンダへ-ユニファイドシリアル製品のビジネスを進める米Adaptec(2007/06/13)
・ アダプテック、速度と拡張性を強化したSATA/SAS両対応のRAIDコントローラ7製品(2008/03/11)
( 石井 一志 )
2008/03/11 18:18
|