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米TIBCO Softwareのアジア太平洋地域・日本担当最高技術責任者(CTO)、ダン・ターンズ氏
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「SOA(サービス指向アーキテクチャ)はコンセプト自体がとてもシンプルだが、実はそこに落とし穴がある」―そう語るのは、米TIBCO Software(以下、TIBCO)のアジア太平洋地域・日本担当最高技術責任者(CTO)、ダン・ターンズ氏だ。「SOAは非常に複雑で、そのためにコストも時間もかかる。当社のSOAスイート『ActiveMatrix』はSOAのための新しい製品であり、前世代の製品を参考に、問題に初めから対応しているものだ」と主張する同氏に、TIBCOの優位性について話を聞いた。
SOAのコンセプトは、ビジネス機能をサービスとして切り出し、それらを再利用できるようにするというもので、とてもシンプルなため、解決への道のりも非常にシンプルに見える。しかし実は、ここに落とし穴があるというのだ。「パイロットプロジェクトを作るときはシンプルでも、ユーザーの数が増えてくるととたんに複雑になる。エンタープライズではサービスを.NETやJavaといったさまざまなテクノロジで構成しているし、トランスポートについてもSOAP、HTMLなどさまざまなものがあり、最初にプロジェクトを始めた段階ではわからないような複雑性が顕在化してくる」(ターンズ氏)。
そこでTIBCOでは、そうした課題を初めから見据えて製品を拡張しているという。どんな技術を利用していても対応可能なようにしているのも、その1つ。「ヘテロジニアス、つまりどれだけの多様なテクノロジをサポートできるか、それが、ActiveMatrixと他製品との重要な差別化要素になっている」と述べたターンズ氏は、続けて管理性の重要性について指摘。「複合型のアプリケーションを作ろうとすると、さまざまなサービスを集めて作ることになるが、エンジンも違えば実装方法も管理方法も違うテクノロジが4~5種類も使われることになりかねない。これは、管理者にとっては悪夢だ」と話したが、TIBCO製品ではこうした課題は解決されているとした。
またActiveMatrixでのサービス作成時にかかる労力について、「SOAは新しいサービスを作るためのプログラミング作業ではなく、機能をどう複合化するかが重要なので、コンフィグで行えるようにしている」としたほか、ガバナンスの機能を包含している点についてもメリットとした。加えて「小さく見えるが実は重要な点」(ターンズ氏)として、「ヘルスチェック」を挙げ、「サービスの詳細な部分、例えばスループットやエラー、メッセージのペイロードまで見ることができる」と話している。
TIBCOではこのように製品自体を強化するのみならず、その導入についてもきちんと支援できる体制を整えているという。ターンズ氏は、「世界で一番いいSOA製品を持っているとしても、必ずしもSOAが成功するとは限らない」と指摘。「SOAでは製品と同じくらい方法論や実装が重要であり、実装時にきちんと体系化された方法論やベストプラクティスを持ち込めれば、リスクは小さくなる。大事なところから始めて前者レベルへ広げていく手法はよく採用されるものの、その最初の実装が間違っていて、スケーラビリティがなかったということでは困るだろう」と述べ、自社の優位性を強調した。
また、TIBCOでは実際にそうした優位性があるかどうかを証明すべく、調査会社の米PushToTestへ評価を依頼している。7カ月をかけて行われたこのテストでは、TIBCO、Oracle、IBM、BEAの各製品を用いて、SOAアプリケーションを実装し、どのくらいの時間やコストがかかるかが調査された。
それによると、TIBCO製品はもっともコスト効率がよく、競合3社の中でもっともよかったIBMよりも22%、一番悪かったBEAよりも49%よりも安く上がっているという。具体的な違いとしては、「既存のアプリケーションをどうサービス化するか」「複数のテクノロジがある時にどうサービスを作っていくか」といった点を挙げたほか、「サービスの再利用ではガバナンスやリポジトリが重要になる。他社製品では複数の開発ツールを提供しようとしているが、それらとガバナンスの間の整合性に問題がある」とした。
「ActiveMatrixはSOAのために作られた新しいプラットフォームだが、他社は既存の古いプラットフォームをSOAへ合わせようとしているため、サービスを作るために必要な製品の数やスキルは他社の方が大きくなるのだ。『全部自社製品だと素晴らしいものができる』というのは現実的でなく、自社のものでないサービスが入ってくるととても苦労する。ActiveMatrixでやろうとしているのは、SOAへ向かう新しい道筋を作ることで、具体的には、ガバナンス、開発、仮想化、オーケストレーションなどに必要なすべてのツールを1つのパッケージで提供すること。これが正しいSOAのアプローチだ」(ターンズ氏)。
なおこのテスト自体についてターンズ氏は、「顧客や他ベンダーは疑心を持ってこの結果を見ると思うが、正当性を証明するために、非常に細かいテストを行ったほか、開発者がつけた日誌もWebで公開され、ユースケースや方法論まで事細かに語っており、自分でテストができるくらいオープンにされている」と主張。「テストの一環として利用したファンクションや要求には、本物のソリューションを作る際に必要なものがすべて入っている。参加者のコストも現実的に含めている」とも語っていた。
■ URL
米TIBCO Software
http://www.tibco.com/
日本ティブコソフトウエア株式会社
http://www.tibco.com/jp/
The Composition Approach for Large-Scale SOA(英文)
http://soakit.pushtotest.com/
■ 関連記事
・ 米Tibco、ESBを追加した最新のSOAプラットフォームを発表(2008/02/12)
( 石井 一志 )
2008/03/17 13:30
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