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業績目標を発表する近藤社長
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株式会社リコーは3月18日、2010年度を最終年度とする第16次中期経営計画を発表した。2010年度の業績目標は、グループ連結売上高2兆5000億円、営業利益2500億円、営業利益率10%としてほか、ROEで12.5%、配当性向では30.0%を目指す。
同計画では、基本戦略として、1)狙いの事業領域でトップになる、2)環境経営を強化、加速する、3)Ricoh Qualityを確立する、4)新しい成長領域を創出する、5)グローバルブランドを確立する-の5つを基本戦略とした。
代表取締役社長執行役員の近藤史朗氏は、「第15次中期経営計画で狙った新たな顧客価値創造、効率化の仕込みができつつある」として、「15次中計の刈り取り」、「効率化」、「さらなる成長」の3点を、次期中期経営計画の課題に掲げた。
「数字を見ると、保守的と思われるかもしれないが、第15次中期経営計画は、売り上げ成長にこだわった反省がある。第16次中期経営計画では、営業利益率10%をミニマムラインとする。リコーを筋肉質の会社にしたい」とした。
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第16次中期経営計画の基本的な考え
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第16次中期経営計画の基本戦略
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代表取締役社長執行役員の近藤史朗氏
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基本戦略で掲げた「狙いの事業領域でトップになる」という点では、既存の事業をベースとした新しい顧客価値の創出、プロダクションプリンティング(PP)事業の立ち上げおよび市場の変化によるビジネスチャンスのほか、サーマルメディア事業、電子デバイス事業、デジタルカメラ事業といった、今後拡大が見込まれる市場をターゲットに事業を成長させるとした。
「既存事業領域においては、機器だけを提供するだけでなく、ソリューション提案力をはじめとする顧客価値の提供が必要になってくる。いい商品ができましたというだけでは、機器は売れない。強いハード、ソフトの存在も必要だが、いまや、産業がひとまわりして、新たな提案が求められるともいえる時代に入ってきた。次期中期経営計画でリコーが進んでいく道のなかで、こうした価値提案の手法をみつけていきたい」とした。
また、PP事業領域においては、「市場は劇的な変化のなかにあるが、これを機会ととらえ、徹底的に強化していく」と語る。
サーマルメディア事業では、中国を中心に新興市場での事業拡大を進め、中国・無錫の新塗工法による新工場を設立したのに続いて全世界へと展開する一方、成熟市場では高付加価値ソリューションの提供に取り組む。また、電子デバイス事業では、携帯電源ICでのトップシェア維持に加えて、デジタル家電用の新規電源分野での成長を狙う。デジタルカメラ事業ではハイエンドコンパクトカメラ市場の拡大を牽引できる製品の投入を掲げ、「デジタルカメラは、なかなか売り上げにつながらないが、少しお金をかけて、もう少し広く販売できる体制づくりに取り組みたい。とはいえ、ニコっと笑ったらシャッターが落ちるカメラは作らない。リコーらしいカメラを作り、リコーの良さを知って使ってもらえる方々に対して、ハイエンド領域の製品提案を引き続き行っていく」と、デジカメ事業における基本的な考え方を語った。
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「Ricoh Qualityを確立する」の取り組み内容
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「新しい成長領域を創出する」の取り組み内容
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「環境経営を強化、加速する」では、環境技術開発、ライフサイクルマネジメント、お客様への社内実践の提供を強化項目にあげたほか、「Ricoh Qualityを確立する」においては、マーケティング機能の強化、研究開発マネジメントの刷新、研究/開発/生産/販売/サービスの連携強化、「作らずに創る」プロセス改革の徹底とグループ展開をあげる。
「いまや、CS(顧客満足度)だけでは駄目。使う人の感動を与える価値を作る必要がある。また、もっと顧客の側でビジネスを行う必要がある。そのために、すべてのプロセスを抜本的に改革し、マトリックス経営を進めていく。4月1日から、組織を改革し、商品開発、技術開発のやり方を抜本的に変える」とした。
「新しい成長領域を創出する」という点に関しては、デジタルカメラ事業の成長などのほか、MFP事業から技術派生する伝送ユニット事業、電子デバイス事業、光学ユニット事業などの拡大を目指す。「リコーのDNAはイノベーションと成長。事業やテクノロジーが連鎖して、新たなものを創出させる」と語る。
研究開発費は売上高比率で6%を維持、設備投資は年間1000~1500億円を継続するという。
「グローバルブランドを確立する」という点では、「グローバルに最適な視点で、持続的な価値提供をすることにより、お客様の信頼に応え続ける」として、「約束(期待に応える)することが、信頼につながり、それがリコーブランドにつながる」とした。
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第15次中期経営計画の見通し
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2008年3月で終了する第15次中期経営計画では、売上高で2兆3100億円、営業利益では2350億円を目指していたが、見通しでは売上高が2兆2250億円、営業利益では1880億円といずれも未達予想となっている。
「市場の影響というよりも、構造改革のスピードがあがらなかったという、われわれ自身の問題があった。営業利益の未達は、刈り取りに時間がかかったことが課題としてあげられる。だが、これはしっかりと刈り取れれば、収益の向上につなげることができるということ。第15次中期経営計画で掲げた2350億円という営業利益は先送りになったが、これを早期に達成する」とした。
第15次中期経営計画では、プリンティング市場においては、プロダクションプリンティング、GELJETプリンタによるローエンドMFP/LP、オフィスハイエンド、オフィスローエンドの4つを成長領域に置き、カラー比率の向上、GELJETベースのラインアップ完成、A3のMFPでは日本、米州、欧州の三極でのシェアナンバーワンを達成した成果をあげたことを示す一方、PP事業では、日立プリンティングソリューションズの買収、Danka欧州の買収、IBMのジョイントベンチャー事業によるIPS(InfoPrint Solutions Company)の設立といった大規模投資によって、事業基盤を確立した実績を強調した。
だが、その一方で、「PP分野においては、投資に対する回収は、1年から1年半の遅れという感覚がある」としたほか、「まだ、シナジーが出ていない。夫婦に例えれば、結婚したものの、お互いに言いたいことをいっている段階であり、実際、市場でのバッテイングなどの声があがってきている。PP事業は、次期中期経営計画で取り組むべき重要なポイントになる」とした。
また、GELJETプリンタでは、水や光、こすれに強い同技術の強みを生かして、「ハマリ業種展開」と社内で呼ぶ、特定領域に集中した展開を行い、「使ってもらえる人に使ってもらうことに力を注ぐ。ひとつのセグメントを確立するには時間がかかる。だが、きっちりとやっていく」とした。
さらに、「オフィスプリンティング事業全体は、成長領域ととらえており、ますますリコーの存在感を強くしていくことができる」と語った。
一方、第15次中期経営計画で販売構造改革を推進した実績にも言及。日本、米国、欧州、アジア・パシフィックでのテクノロジーセンターの設置による現地での顧客ニーズの発掘、カスタマイズ対応、ローカルソリューションの開発か可能になる体制が整ったほか、「痛みを伴った改革だったが、日米欧の販社統合、サービス統合、基幹システムの構築を実現できた」とした。
第16次中期経営計画では、「第15次においては、黒字であればいいとか、あまり成果が求められない事業でも存続できたが、これからは利益を出せないマネジメントに対しての処置、事業に対する処置を適宜決めながら、未来に対して成果が出る投資に集中していく。シナジーにつながっていかない部分や、未来がない事業に関しては入れ替えるということも考えたい。リコーがリコーであり、健全であり、お客様にリコーを買ってもらうために必要な体質変更を、第16次中期経営計画のなかで取り組んでいく」として、引き続き、構造改革に取り組んでいく姿勢をみせた。
■ URL
株式会社リコー
http://www.ricoh.co.jp/
( 大河原 克行 )
2008/03/18 15:37
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