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発注者ビュー検討会、推進メンバー
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実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会(以下、発注者ビュー検討会)は3月18日、2007年9月に公開した「発注者ビューガイドライン(画面編)」に続き、「同(システム振る舞い編)」と「同(データモデル編)」を策定し、同日から公式Webサイトにて公開すると発表した。
発注者ビュー検討会は、顧客(発注者)とSIベンダ(開発者)間でのコミュニケーションの円滑化を促進すべく、システム開発における仕様記述方法および合意方法を共同で検討し、ガイドライン化することを目的とした団体。NTTデータ、富士通、NEC、日立、構造計画研究所、東芝ソリューション、日本ユニシス、OKI、TISの9社が企業の枠を超えそれぞれのノウハウを惜しみなく提供。一丸となって、外部設計の工程(非機能要件を除く)におけるわかりやすい設計書の書き方、およびそのレビューのコツをガイドラインとして取りまとめてきた。
今回発表されたのは、外部設計でも特に「システム振る舞い」と「データモデル」における設計書作成・レビューのコツをまとめたガイドラインで、同日よりWebサイト上で公開される。
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発注者ビュー検討会の活動内容
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「システム振る舞い編」「データモデル編」公開で、当初の目標達成
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発注者ビューガイドラインを各社の開発標準に組み込むことで、ユーザー企業にとって分かりやすい設計書を実現
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システム振る舞い編では、発注者の業務に沿った情報システムの処理やその流れをシステム振る舞いと定義し、その内容について、一覧表や流れ図で表現するためのコツが盛り込まれた。具体的には、1)システム化業務一覧、2)システム化業務フロー、3)システム化業務説明書、4)システム振る舞い共通ルール、の4種類の工程成果物を定義し、それらの関連性も含め仕様書の書き方と確認のコツを提示。全35件の書き方のコツ、設計書記述の留意点を押さえたチェックリスト、全23件のレビューのコツが示されている。
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システム振る舞い編の概要およびメリット
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4種類の工程成果物とそれらの関連を定義
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記述されているコツの一例
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構造計画研究所 執行役員 設計技術部長の吉田善亮氏
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一方のデータモデル編では、情報システムで扱うデータの固まりの単位や、データがいつ作成・参照・更新・削除されるかの過程を整理し、設計書としてまとめるためのコツを提示。具体的には、1)ER図、2)エンティティ一覧、3)エンティティ定義書、4)CRUD図の4種類の工程成果物を定義し、「ユーザー企業にとっては一番分かりにくい」(構造計画研究所 執行役員 設計技術部長の吉田善亮氏)データの扱い方に関する仕様に関して、ユーザー企業・開発者間で合意を図るコツが示されている。
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データモデル編の概要とメリット
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4種類の工程成果物を定義
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4部構成で、全16件の書き方・レビューのコツなどが記されている
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OKI ユビキタスサービスプラットフォームカンパニー プレジデントの平沼雄一郎氏
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NTTデータ 技術開発本部 ソフトウェア工学推進センタ長の木谷強氏
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OKI ユビキタスサービスプラットフォームカンパニー プレジデントの平沼雄一郎氏は「素直に良くできていると感じた。これまで各社の記述方法はばらばらで、顧客の理解を阻害してきたが、このガイドラインであれば開発標準に組み込むのも容易。あとはユーザー企業内で実際に役立つとの認識が高まれば、おのずととファンが増えるのではないか。ぜひ効果を実感してほしい」と語った。
なお3つのガイドライン策定で、「当初の目標はすべて達成した」(NTTデータ 技術開発本部 ソフトウェア工学推進センタ長の木谷強氏)ことになり、2年間にわたり行われてきた発注者ビュー検討会としての活動には一応のピリオドが打たれる。
これに伴い、発注者ビュー検討会は3月31日をもって解散。今後のブラッシュアップや普及活動は、独立行政法人 情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター(以下、IPA SEC)が引き継ぎ、2010年をめどに「改訂IPA版発注者ビューガイドライン」としての公開をめざすことになる。
こうして当初目標としていた成果物が公開されたわけだが、各社口をそろえて「本当に完成にはまだ改良が必要。特にユーザーレビューが重要だ」と発言。。木谷氏は「システム振る舞い編、データモデル編については、東京証券取引所、AGS、三菱電機インフォーメーションシステムズが“発注者の視点”としてレビューを行ってくれた。有効性の評価や多くの改善点提案を頂き、策定の大いなる助けとなった」とした上で、「今後このガイドラインをデファクトスタンダードにしていくためには、より多くのフィードバックが必要」とした。
また普及活動も行っていく。これまでにも各種イベントでの講演や社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)との意見交換会などを実施してきた。木谷氏は「そのおかげで画面編は1万2000ダウンロードを達成できた。今後もガイドラインの使い方を説明する書籍を発行したり、各社の開発標準に同ガイドラインを組み込み実績を上げたりするなどして普及に努めていく」と述べ、発注者ビュー検討会は解散する形になるが、参加メンバーは今後もIPA SECの活動に貢献していく意向を表明。システム振る舞い編、データモデル編でも画面編と同等の、あるいはそれ以上のダウンロード実績をめざしたいとした。
■ URL
発注者ビュー検討会
http://www.nttdata.co.jp/cview/
株式会社NTTデータ
http://www.nttdata.co.jp/
富士通株式会社
http://jp.fujitsu.com/
日本電気株式会社
http://www.nec.co.jp/
株式会社日立製作所
http://www.hitachi.co.jp/
株式会社構造計画研究所
http://www.kke.co.jp/
東芝ソリューション株式会社
http://www.toshiba-sol.co.jp/
日本ユニシス株式会社
http://www.unisys.co.jp/
沖電気工業株式会社
http://www.oki.com/jp/
TIS株式会社
http://www.tis.co.jp/
ニュースリリース
http://www.nttdata.co.jp/release/2008/031801.html
■ 関連記事
・ 発注者ビュー検討会、顧客とSIベンダの対立なくすための仕様書ガイドライン(2007/09/18)
( 川島 弘之 )
2008/03/18 18:34
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