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「工場見学で故障率ゼロの理由を実感」、アメブロがH3Cスイッチを採用した理由


サイバーエージェント 新規開発局 インフラグループの吉川出氏

ネットワーク構成のイメージ図
 企業がネットワークを構築する際、担当者が明確な目的意識のもとで、導入すべきネットワーク製品を自分の目で納得いくまで調べ上げ、成功した堅実なケースがある。しかもこの企業の担当者は、自らが該当ベンダーの海外工場までおもむき、どのような環境で製造されているのかを、自分の目で確かめてから導入に踏み切った。

 この企業とは、国内最大級の会員数を擁するブログメディア「アメーバブログ」(アメブロ)の運営会社サイバーエージェントだ。同社では、このほどH3Cテクノロジージャパン(以下、H3Cジャパン)のGigabit Ethernet(GbE)スイッチファミリ「H3CS5100シリーズ」および「H3CS5600シリーズ」を採用している。

 アメブロは2004年9月にサービス開始以来、順調に会員数を伸長させ続けており、その数は270万人にまで増加、また1カ月あたりのアクセス件数も2008年2月ではおよそ31.5億PVに達した。会員数は今後も増加が予想され、トラフィックの増大へ対処する必要が生じてくるし、新規サービスの投下などさらに事業の収益化をめざすには、クオリティとスケーラビリティを維持した基盤ネットワークの整備が不可欠になる。しかも、これを限られた予算内で実現させなければならないという課題もある。そこで、サイバーエージェントではH3Cのスイッチへ白羽の矢を立てたという。

 と言ってしまえば、いとも簡単にことが運んだと思えるかもしれないが、実はネットワーク担当者は、きわめて綿密な戦略でネットワークの導入に臨んだという。サイバーエージェント 新規開発局 インフラグループの吉川出氏は「スイッチの導入に際しては、他社製品と同等のパフォーマンスが出なくてはいけないのはもちろん、作業メンバーの業務効率を下げず直感的に理解しやすいコマンド体系など、多くの条件が求められた。また、データセンターでは電力制限がきつく、低消費電力仕様でなくてはならない。こうした数々の過酷な条件を満たせるかどうか、多角的に社内検証を行った」と苦労話を語る。

 また、稼働台数およそ200台の環境で、「H3C製品は、パケット処理能力が他製品と比較して遜色(そんしょく)ないだけでなく、昨年6月の導入以来、初期不良率および故障率がともにゼロだった。100台あれば10%は不良や故障が伴うと体験上考えていたので、これは驚異に値する」と、現場担当者ならではの実感も話す。


 さらに吉川氏は、実感するだけにとどまらず、もう一歩踏み込んで製品を確認しようとも図った。「この故障率の低さは信じにくい話だ。自分の目でその理由を確かめたいので、H3Cの杭州工場を見せてほしい」とH3Cジャパンに頼み込み、さっそく現地を訪れたのである。その現場では、最先端設備のもと、若くて優秀な従業員がのびのび働いているし、なんといっても日本市場重視の同社の思い入れには、きわめて強いものを感じたという。

 その際の想いについて、吉川氏は「今だからいえるが、これが低賃金で実現した結果のパフォーマンスや低価格であれば採用を断念したかもしれない。しかし、同社では相場の4倍近い賃金のもとで実現しているし、従業員の仕事に対する意気込みを強く感じた」とコメント。その中でも特に、一定品質を確保した製品のみ日本に投入する姿勢に、一層確信を持ったとした。


アメブロのバックボーンを支えるデータセンターには、H3CS5100/5600シリーズが採用された 200台にもおよぶスイッチが導入されている

 なおサイバーエージェントでは、H3CS5100/5600シリーズに加えて、4月にはハイエンドマルチサービススイッチであるH3CS7500Eシリーズの導入も決定している。最近ではまれとなった、ユーザーおよびベンダーが一体となったビジネスチャレンジとして、注目されるところだ。

 アメブロで今回採用したスイッチを提供するH3Cジャパンの本社は、2003年に著名なネットワークベンダー、3comとの資本提携で設立したHuawei-3com(H3C)に始まるのだから、もともとの実績は十分にある。H3CS5100シリーズはレイヤ2、5600シリーズはレイヤ3で、スタック機能IRFを搭載。いずれも、ラインアップには、GbEを最大48ポート搭載できる製品や、10GbE、PoE(Power over Ethernet)対応製品などを含んでいる。

 H3Cジャパン 営業本部 本部長 山本憲氏は、「現在、H3Cにおける年間売上高の平均成長率は70%以上で、毎年、利益の15%は研究開発に継続投資している。従業員数5000人強であるが、うち約3000人が専任エンジニアだ」と述べ、限りなく高品質の技術力が同社のコアコンピタンスであることを強調する。反面、「当社の現状での弱さは、ブランド認知度の不足」と、自社の弱みについても話した。同社ではこれを克服するため、Interop Tokyoをはじめ、札幌から福岡までの全国主要都市でセミナー展開を行うほか、今後も、意欲的な取組みで継続してフォローしていく考えだ。



URL
  株式会社サイバーエージェント
  http://www.cyberagent.co.jp/
  H3Cテクノロジージャパン株式会社
  http://www.h3c.jp/jp/


( 真実井 宣崇 )
2008/03/24 14:31

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