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経営戦略研究センター ディレクターの木村公昭氏
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BIの導入状況
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BIのユーザー層
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アビームコンサルティング株式会社(アビーム)は4月23日、「ビジネス・インテリジェンス(BI)導入企業における活用実態に関する調査結果」を発表した。この調査は、同社が2007年12月から2008年1月にかけて実施したもの。主に、連結売上高1000億円以上の東証1部上場企業、および、有力未上場企業(外資系を含む)約600社を対象にアンケート調査を行い、61社から有効回答を得た。
これまで、BIの導入実績やBIツール、BI市場に関する調査はあったが、BI導入後の活用実態を詳細に調査分析したものは今回が初めてという。経営戦略研究センター ディレクターの木村公昭氏は、「BIに関しては、各社がさまざまな定義をしているが、今回の調査では、経営や業務に関するデータを組織的かつ系統的に蓄積し、それを加工・分析して、ビジネスの業績管理、意志決定、業務改善などに役立てるシステムをBIとして定義した。そして、そのBIが企業の中にどの程度普及していて、どう具体的に活用されているのか実態を調査した」と説明している。
調査結果によると、BIの導入状況は、61社中45社の企業が「導入済み」と回答し、全体の74%を占めた。「導入予定」と回答した8社を合わせると、導入意向は8割強に達しており、日本の大手上場企業の多くがBIを活用し始めていることがわかった。実際にBIを活用しているユーザー層については、「課長・店長レベル」、「現場担当者」、「バックオフィス担当者」が最も多く69%で並び、課長・店長以下の管理者層、担当者層を中心に活用されている現状が明らかとなった。BIを活用している業務は、「営業・マーケティング」(82%)、「経理・財務」(78%)、「経営企画」(69%)が上位を占め、活用している機能は「レポーティング機能」(クエリーの実行とレポートの作成)が中心であった。
今回の調査結果で、特に注目されるポイントとして木村氏は、「海外事業を展開しているBI導入企業における海外データの活用実態」を挙げた。調査によると、海外事業を展開しているBI導入済み企業は35社。そのうち海外の財務データをシステム上で「参照可能」と回答した企業は54%、非財務データを「参照可能」と回答した企業は51%と、いずれも約半数にとどまった。さらに、参照可能と回答した企業でも、その切り口は「地域別」(79%)、「事業部別」(68%)までが多く、「グローバル経営を進める上で重要な製品別、顧客別データはタイムリーに参照できていないのが現状」(木村氏)であることが浮き彫りとなった。
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BIを活用している業務領域
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活用しているBIの機能(適用業務別)
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海外データの参照状況
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また、木村氏は、「もう1つ、BI導入後のデータ品質に関する調査についても興味深い結果が出ている」と指摘。BIにおけるデータ品質問題の発生状況について、62%の企業が「一部発生しているが業務に支障はない」と回答。「問題が発生しており、業務に支障が出ている」(7%)を合わせると、BI導入企業の7割がデータ品質に問題があると認識していることがわかった。データ品質問題の中身については、「数値に整合性がない」(35%)、「データが欠損している」(32%)との回答が目立ち、これらに対するデータ品質の向上策としては、「データの標準化」(82%)、「データの一元管理」(73%)を実施している企業が多かった。
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データ品質問題の認識
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データ品質問題と対応策
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BI導入で実現した効果
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3段階でのBI活用
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BI導入で実現した効果としては、「多様な切り口によるデータ参照」(96%)、「レポート作成作業の省力化」(96%)、「レポーティングの早期化」(91%)、「適時でのデータ参照」(87%)といった“可視化”の効果について、導入企業の9割前後が「効果あり」と回答した。一方で、“分析活用”や“戦略的活用”について「効果あり」と回答する企業は、大きく減少している。
木村氏は、「この結果から、可視化、分析的活用、戦略的活用の効果は段階的に現れることがわかり、BI導入済み企業をそれぞれ活用度に応じて3つにグルーピングすることができた」と説明。今回調査した45社の活用度を見ると、可視化レベルにあたる「活用度低」が全体の33%、分析的活用レベルの「活用度中」が同31%、戦略的活用レベルとなる「活用度高」が同36%で、比較的ばらついていることが明らかとなった。
BIの効果を上げるための施策の実施状況について、「活用度中」と「活用度低」のグループを比較すると、「経営トップによるBI活用に対するリーダシップの発揮」、「全社ポータル掲載によるレポートの共有」、「BIの分析で得たナレッジの蓄積・共有」、「ユーザーに対する非定型レポートの作成や分析の支援体制」で、回答に大きな開きが出た。同社では、「活用度低のグループが、次のレベルにステップアップするためには、経営トップのリーダシップの下で、全社でBIを活用できる体制を整備する必要があると考えられる」(木村氏)と分析する。
同様に、「活用度高」と「活用度中」のグループを比較すると、「KPI(重要業績評価指数)の継続的改善・見直し」、「ビジネス部門の協力によるBI活用方法の検討」、「KPIに対する責任分担の明確化」で、回答に大きな開きがあった。「活用度中のグループが、戦略的効果を実現するためには、ビジネス部門と協力してBI活用を推進するとともに、KPIを活用したマネジメント・サイクルを確立することがポイント。さらに、BI専門組織としてBIコンピテンスセンター(BICC)を設置することも重要だ」(木村氏)と指摘している。
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BI導入企業の活用段階
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活用度低から活用度中へステップアップする取り組み
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活用度中から活用度高へステップアップする取り組み
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■ URL
アビームコンサルティング株式会社
http://www.abeam.com/jp/
プレスリリース
http://www.abeam.com/jp/news/pr2008/20080423.html
( 唐沢 正和 )
2008/04/23 18:55
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