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「シームレス」なパートナー連携進むSharePoint Server-マイクロソフトが現状報告


インフォメーションワーカービジネス本部の吉村哲也マネージャ
 マイクロソフト株式会社は4月25日、「Microsoft Office SharePoint Server 2007(以下、MOSS 2007)」に関する記者説明会を開催した。インフォメーションワーカービジネス本部の吉村哲也マネージャ、西岡真樹エグゼクティブプロダクトマネージャらが登壇し、MOSS 2007の好調をアピール。好調さの証拠として、ECM(エンタープライズコンテンツ管理)を強化する、3社のパートナー連携ソリューションが紹介された。

 吉村氏によると、「ECM市場の世界の総売上は29億ドルで、2011年まで年率12.9%の成長が予測される。また、IBMによるFileNet買収、Open TextによるHummingbird買収、OracleによるStellent買収など合併統廃合が進んだほか、国内でもすでに市場は155億円の規模で、年10~20%程度の成長が見込まれており、市場自体がいままさに転換期を迎えている」という。

 ガートナー調べによれば、今後3年間で重点投資すべきアプリケーションとして、47.9%の企業が「文書管理/情報共有」を挙げていることからも、この傾向は今後も継続すると見て間違いなさそうだ。

 MOSS 2007も好調であると吉村氏は話す。その要因としては、1)情報共有ニーズのさらなる高まり、2)コンプライアンスへのニーズの高まり、3)統合製品へのニーズの高まり、の大きく3つが挙げられ、「結果、ライセンス販売は1億本を突破し、10億ドルを超える売り上げを達成した。関連技術専門書籍も書店に行けば100冊以上を手にすることができる状況」(同氏)という。


パートナー増加

インフォメーションワーカービジネス本部の西岡真樹エグゼクティブプロダクトマネージャ
 こうした数字以外にも、MOSS 2007の好調さを測るバロメーターとなるのが、パートナーとの提携状況である。現在、MOSS 2007関連パートナーはSIerも含め約40社。同製品の前身、SharePoint Portal Server 2003のときと比べると、「格段に増えている」(同氏)という。

 一例を挙げると、2007年8月にはコネクトワンとの協業により、携帯電話からMOSS 2007にアクセスできる「ConnectONE SharePoint Pack」、同年12月にはスカイコムとの協業により、“PDFの管理 on MOSS 2007”を実現する「SkyPDF for SharePoint Server 2007」、2008年4月にはPFUとの協業により、MOSS 2007と連携可能な業務用ドキュメントスキャナなど、モバイル/ソフト/ハードと多岐にわたる連携製品・サービスが発表されている。

 このほかにも、アイティフォー、インテック、インディゴなど多くのパートナーが名を連ね、それらが一堂に会するイベント「SharePoint Conference 2008」が4月22日に開催されたばかりだ。

 マイクロソフトとしては、このようなパートナー戦略にどのような意図を込めているのか。MOSS 2007は、文書ファイル管理の器となる「ドキュメントライブラリ機能」を核としたMOSS 2007上における自由度の高い文書管理機能をはじめ、Information Rights Management(IRM)を核とした堅固なセキュリティ機能など、非常に多機能である。

 しかしそれでも「MOSS 2007には補う余地がある」と語る西岡氏。「例えば、紙文書の電子化にはハードウェアが必要なため、MFPベンダとの連携が必要。そのほかにも、高度なワークフローと基幹システム連携、ドキュメントの長期保管や原本保証、不要なドキュメントのアーカイブなど、パートナーソリューションを組み合わせないとできないこと、組み合わせた方が便利なことがある」。多機能という方向性をもつMOSS 2007にとっては、特にパートナーとの協業が重要なのだ。特に「連携はシームレスに実現されている」と同氏は強調する。


文書ファイル管理の器・ドキュメントライブラリ 万が一の事態に備えるセキュリティ機能 MOSS 2007はパートナーソリューションとの連携でさらなる強化が可能

スカイコム、取締役 事業本部 営業部長の金田康則氏
 今回の説明会では、スカイコム、アセントン、オープンテキストの3社が登壇し、それぞれの連携ソリューションを紹介した。

 スカイコムが提供するのは、前述したとおり、MOSS 2007上でのPDF管理を実現する「SkyPDF for SharePoint Server 2007」。MOSS 2007のライブラリ下でPDF生成ができるほか、閲覧する機能も提供する。同製品でPDF化したファイルにもIRM権限が付与できるため、「IRM対象外ファイルでもPDFへ変換することで、MOSS 2007のIRM権限対象ファイルとして扱うことができるのが大きな特長」(スカイコム、取締役 事業本部 営業部長の金田康則氏)という。


スカイコムのPDFソリューション SkyPDF for SharePoint Server 2007の特長

アセントン、カントリー・マネージャの佐藤尋美氏
 アセントンは、Visioのアドオンモジュールとして、各種ビジネスフローの構築や編集を行えるツールを初めとしたスイート製品群「AgilePoint BPMS」を提供する。「GUIによるノンプログラミングなフロー設計が可能で、構築したプロセスは、MOSS 2007上でそのままDLMの1機能として利用ができる」(アセントン、カントリー・マネージャの佐藤尋美氏)。


基幹システムとOffice製品を融合 AgilePoint BPMSでは、GUIによるノンプログラミングなフロー設計が可能。構築したプロセスは、MOSS 2007のファイル操作と連携する 複雑なワークフローも簡単に作成できるのが特長だ

オープンテキスト、執行役員 副社長兼営業本部長の荒川勝也氏
 オープンテキストは、MOSS 2007上でのファイルアーカイブ、リポジトリ管理を実現する「Open Text CLM Services for SharePoint」を提供する。MOSS上の右クリックメニューから簡単にアーカイブし、アーカイブファイルに対して、全文検索、メタデータ管理、レコード管理、監査証跡などを柔軟に行うことが可能だ。さらに「昨今リソース圧迫の要因となっているBLOB(Binary Large OBject)のリモートアーカイビングにも対応している」(オープンテキスト、執行役員 副社長兼営業本部長の荒川勝也氏)という。


オープンテキスト製品のアーキテクチャ MOSS 2007にハイレベルなリポジトリ管理機能を提供 BLOBのリモートアーカイブにも対応する

 西岡氏が強調するように、3製品のデモを見て実感するのは、そのシームレス性である。スカイコム製品では、スキャナから取り込んだ文書がPDF化され、そのままIRM権限管理することもできるし、検索を行ってもOffice文書とまったく同じように検索することもできるようになっている。アセントン製品でも、MOSS 2007上でのファイル編集・保存といった何でもない操作を行うだけで、承認ワークフローによる管理がリアルタイムに行われる。オープンテキストでも、アーカイブや監査証跡などの機能がMOSS 2007の右クリックメニューから利用することができ、どの製品もまるで最初からMOSS 2007に搭載されていたかのように自然である。

 そもそもMOSS 2007自体が「統合プラットフォーム」というコンセプトで開発された製品であり、マイクロソフトでもクライアントOSとの親和性、一貫した操作性・運用性を再三アピールしている。

 そうしたこともあり、パートナー各社も「シームレス」には特にこだわったのか。それともスカイコムの金田氏が「マイクロソフトの強い要望により、製品にSharePointという文字を入れたため、長い製品名になってしまったが…」とこぼしたように、マイクロソフト側のこだわりによるものなのか。ともかく、エンドユーザーにとって、拡張機能もまったく変わらない操作感でシームレスに利用できることは、喜ばしいことに違いない。

 吉村氏はまとめとして最後にこう語る。「MOSS 2007の現状は、ドキュメントの共有やポータル、検索といった製品としての基本機能を中心に活用されている。ワークフローなどのアプリケーション構築は、プラットフォームとしてMOSS 2007導入後にプロジェクトが開始されるケースが多い。MOSS 2007は非常に拡張性のあるプラットフォームだ。ECMパートナーも順調に増え、さまざまな機能強化が可能になってきている。MOSS 2007上でのアプリケーション構築はこれからが本番といえる」。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  株式会社スカイコム
  http://www.skycom.jp/
  アセントン株式会社
  http://www.ascentn.co.jp/
  オープンテキスト株式会社
  http://www.opentext.co.jp/

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( 川島 弘之 )
2008/04/25 17:04

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