Enterprise Watch
最新ニュース

インテルがIT部門の取り組みを説明、「効率化を進めると自然にグリーンになる」


インテル 情報システム部長の海老澤正男氏

Intel IT部門の戦略目標
 インテル株式会社は5月13日、2007年におけるワールドワイドでの社内向けIT投資の成果を説明した。

 同社では毎年、「インテル IT パフォーマンスレポート」を公表し、ワールドワイドのIntelが、どうIT戦略を推進し、企業経営に役立てているかを公開している。それによると、同社のIT部門は、146拠点の8万6500名をサポートしているという。このようにサポート対象が巨大なため、サポートする側のIT部門自身も大きく、5500名がIT業務に従事。きちんとしたビジョンに従って、IT業務を推進している。インテル 情報システム部長の海老澤正男氏は、2007年の戦略目標として、コスト競争力のあるIT環境を提供して自社のビジネスを推進する「オペレーショナルエクセレンス」、大きな組織を効率よく動かす「実行力」、そして「収益性」の3つを挙げ、それぞれを説明した。

 まずオペレーショナルエクセレンスでは、「ITサービスの最適レベルを定めた」という。これまではコストをかけて高いサービスレベルを提供することに注力しすぎていたが、現在ではSLAを重視。ユーザー部門とも連携し、適正なサービスの提供を心がけているとした。また、ERP環境の変革も大きな課題で、各地でバラバラに導入されていた業務システムを、「SAP ERP 6.0」へ統一するとともに、マスタデータ統合を図り、業務効率を上げていく。さらに、各地で固有の要件を満たすために利用されているアプリケーションについても統合・標準化を行っている。

 また、コスト競争力の強化を目指し、プロジェクトのビジネス価値を正しく評価することで、「限られた予算を最大限の価値を生むものに割り当てている」(海老澤部長)とした。Intelでは、このような施策によって、売上高に対するIT支出の割合を年々削減していく考えで、無駄な管理費用など余分な部分を削り、2006年末に3.6%だったものを、2010年には2.6%まで落としていく予定である。

 次の実行力(実績)では、プロジェクト管理を改善。数年にわたる大規模なプロジェクトでも、今は最長6カ月単位のサブプロジェクトに分割し、それごとに実績を見ることで、効果の把握をしやすくしたという。また、IT部門のビジネスプロセスの構築によって、6500万ドルの削減を達成する、設計環境のセットアップ時間を66%短縮する、などの成果を上げた。「今は当社のロードマップはアグレッシブであり、それを支えるために環境を改善していくことは、競争力に大きなインパクトを与える」(海老澤部長)。

 最後の収益性では、サプライチェーンの改善、米国オンラインメディアとの連携による経験の積極的な発信などを行うとともに、「ユーザーとして、製品開発している事業部に、どこが悪いかを低減している」という。Intelでは、単なる半導体の販売から、vProなどのプラットフォーム提供へ軸足を移しており、その完成度は同社の経営に小さくない影響を与えるようになった。そこでIT部門は、大規模な自社製品のユーザーとして、その経験がプラットフォームに反映されるように、積極的に利用しているというのである。


vProも全社レベルで積極的に導入しているという

イスラエルのデータセンターにおける熱の再利用システム
 特にvProについては、2007年中ごろから購入を開始し、今では導入するPCすべてをvPro対応に統一。2008年中にも全社で5~7万台を購入する予定になっており、PC入れ替えサイクルが一回りする3~4年で、すべてのPCをvPro対応にする。海老澤部長は、「米国のヘルプデスクは、よりコストが安いコスタリカへ移し、そこから米国のPCをリモート管理する試みが成功している。また、インベントリ管理やセキュリティ向上にも効果を発揮している」と効果を説明した。

 また海老澤部長は、こうした活動の中で行われている、データセンター効率化への取り組みも説明した。Intelのビジネスを支えるデータセンターは、現在、実に117もの数が存在し、膨大な数のサーバーが稼働しているが、台数は年率12%、ストレージは同40~50%の割合で成長しており、多大な管理負担が生じている。加えて使用率も問題で、現在はわずか10%にとどまっているという。

 そこで同社では、2006年より効率化プログラムを開始。データセンター自体を8つに統合するほか、IT資源の仮想化を行うことで、サーバー台数を削減し、使用率の向上を図っている。海老澤部長によれば、すでにバッチ処理では仮想化が実現しているとのこと。「エンジニアが、どこのリソースを使うかは意識することなく、空いているところで実行されて、結果が返ってくる」(海老澤部長)。

 加えて、サーバーの入れ替えも進めている。現在、同社のPCはおおよそ3~4年で入れ替えられているが、サーバーは「Pentium IIのものもあったくらい」(海老澤部長)、古い機械がそのまま残っていた。同社の製品も含め、IAサーバーは数年前に比べて性能や電力効率が向上しているため、「使えるからそのまま使っておく、では、TCOはむしろ高くなる」(同部長)状況。Intelでもこうした現状をかんがみ、古いものをすべて撤去して、ブレードサーバーへ積極的に置き換えていると説明した。

 なお同社では、グリーンITにも積極的に取り組んでいるという。効率性の高いデータセンターを建設したり、サーバーの使用効率を上げたり、電力効率のいい液晶ディスプレイを全面的に採用したり、といった施策を行うだけでなく、イスラエルのデータセンターでは、熱の再利用を実現。そこで発生する熱を暖房や給湯に生かし、年間23万5000ドルの削減効果を上げている。こうした点を踏まえて海老澤部長は、「顧客の受けがいいからグリーンITに取り組むわけでなく、グリーンITにすることでコストへ跳ね返ってくるの。当社では、今後も積極的に取り組む予定だ」と述べた。



URL
  インテル株式会社
  http://www.intel.co.jp/


( 石井 一志 )
2008/05/13 18:00

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.