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2007年度実績概要
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日本電気株式会社(以下、NEC)は5月15日、2007年度連結決算を発表した。
売上高は前年比0.8%減の4兆6172億円、営業利益は124.0%増の1568億円、経常利益は586.6%増の1122億円、当期純利益は148.5%増の227億円となった。
NECの小野隆男執行役員常務は、「営業利益は目標を大きく上回った。減収となった売上高についても、欧州の個人向けPC事業の売却、DVDの販売事業の売却などが影響したもので、これらを除けば前年比2%の増加になる。また、モバイルターミナルや半導体事業といった課題事業が黒字化し、NGN構築事業売上高は2000億円に達し、計画通り、前年実績の900億円の倍増となった。EMCとの共同開発、アルカテル・ルーセントとの提携など海外事業拡大の基盤固めができた」と自己評価。だが、その一方で、「まだまだ満足できるレベルにあるわけではない。一層の戦略的投資により、利益水準の向上を図っていく必要がある」とした。
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セグメント別の実績
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NECの小野隆男執行役員常務
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IT/NWソリューション事業の実績
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IT/NWソリューションは、売上高が前年比3.9%増の2兆8662億円、営業利益は4.3%増の1606億円。
IT/NWソリューションのうち、ITサービス/SI分野の売上高は前年比7.3%増の8325億円。営業利益は約610億円。「金融、通信分野などが好調な国内IT投資を背景に、ほぼ全業種で伸張した。厳しいといわれた官公庁も好調な業績となった。また、SI生産革新活動の着実な成果によって収益を改善した」という。
ITプロダクト分野の売上高は、前年比6.8%減の6068億円、営業利益は前年並みの約90億円弱。「DVDの販路移管で200億円程度の減収があり、これを除くと前年並みになる」とした。2007年度に新製品を投入したメインフレームが下期から貢献。利益確保に影響したという。
ネットワークシステム分野の売上高は5.8%増の1兆860億円、営業利益は前年並みの約780億円。国内事業の売り上げが減少したものの、NGN関連事業とグローバル事業が拡大。さらに、パソリンクや海底ケーブルが伸張したことで国内の減少をカバーした。
社会インフラ分野は、売上高が11.6%増の3409億円、営業利益は前年から実績して130億円となった。収益性が高い地上デジタル放送関連システムの投資が一巡したものの、公共・宇宙・防衛分野における社会システムプロジェクトの売り上げ増が貢献したという。
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モバイル/パーソナルソリューション事業の実績
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エレクトロンデバイス事業の実績
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一方、PCを含むモバイル/パーソナルソリューション事業は、売上高が前年比9.5%減の8729億円、営業利益は前年の赤字から576億円改善し、232億円と黒字転換。そのうち、PCおよびビッグローブ事業で構成されるパーソナルソリューション分野は、売上高が13.4%減の5326億円。営業利益は約120億円の黒字となった。
PCの国内出荷台数は、2007年度実績で前年比2%減の267万台と、2年連続で減少したものの、トップシェアを確保したという。「メモリ価格が下落するなど、部材価格が好環境下で推移したことで黒字幅が拡大した」としている。
携帯電話事業などのモバイルターミナル分野は、売上高が前年比2.7%減の3403億円と減収になったものの、営業利益は前年の約350億円の赤字から、110億円に黒字転換した。携帯電話の出荷台数は、前年比14%減の480万台。
「国内市場に集中し、しかも、ドコモ向けに特化した形で事業体質を強化。商品力の強化が、徐々に成果へと結びつきつつある。シェアは着実に回復している」とした。
エレクトロンデバイス事業は、売上高が前年比3.5%減の8309億円、営業利益は304億円改善し、74億円と黒字転換した。
そのうち、半導体分野の売上高は前年比0.7%減の6877億円、電子部品その他は15.1%減の1432億円となった。
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2008年度業績予想の概要
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セグメント別の予想
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2008年度の通期見通しは、売上高が前年比4.0%増の4兆8000億円、営業利益は8.4%増の1700億円、経常利益は20.3%増の1350億円、当期純利益は54.3%増の350億円と、増収増益を目指す。
NGNによる新事業および新市場の創造のほか、グローバル展開の加速、戦略投資の拡大、ハードおよびソフト分野における生産革新の継続的強化に取り組む姿勢を示す。
なお、NGN構築関連事業では、3000億円の売り上げ規模を目指すという。そのうちネットワーク関連分野とIT関連分野の比率は2対1となっている。
IT/NWソリューションは、売上高が前年比2%増の2兆9300億円、営業利益は6%増の1700億円。
そのうち、ITサービス/SI分野は、サービスプラットフォームの拡大、SI生産革新による継続的な収益改善により、売上高は8500億円、営業利益は670億円と増収増益を目指す。だが、「市場全体では4%増の成長が見込まれているが、IT投資減速懸念があることから、当社では堅めに想定し、売上高は2%増と見ている」とした。
ITプロダクトは、サーバーなどのハード市場が厳しいものの、差異化製品とソフトによる成長、海外における協業成果の刈り取りによるグローバル展開によって、売上高は6100億円、営業利益は80億円と、いずれも前年並みを予定している。
ネットワークシステム分野は、国内キャリアの設備投資の抑制が懸念されるものの、NGN構築案件や、ワイヤレスブロードバンドに向けた具体的な取り組みが加速することから、前年比6%増の1兆1500億円を計画。営業利益も約800億円を目指す。
社会インフラ分野では、大型プロジェクトが減少するものの、映像ソリューション、セキュリティソリューション分野へ注力することで、売上高は6%減の3200億円、営業利益は8%増の140億円とした。
モバイル/パーソナルソリューション事業は、売上高が前年比13%増の9900億円。営業利益は前年並みの240億円。
パーソナルソリューション分野は、生産革新活動の成果などにより安定的な黒字確保に向けた施策を展開。さらに、Luiによる新市場開拓に挑むことで、売上高は4%増の5550億円、営業利益は約100億円を見込む。2008年度のPC出荷計画は、前年比3%増の275万台として、3年ぶりの成長を計画する。
モバイルターミナル分野は、売上高が28%増の4350億円、営業利益は140億円と大幅な増収増益計画。携帯電話端末の出荷計画も、前年比46%増の700万台と大幅な成長を見込む。上期は300万台、下期は400万台の計画。
「ドコモ向けのシェアが拡大しているほか、今後、供給先キャリアの拡大により、機種数拡大、数量拡大につながる」として、今年度予定されているソフトバンクモバイル向けの製品展開がプラスに影響する考えを示した。
なお、「au向けに関しても、今後考えていかなくてはいけないと考えているが、2008年度中の具体的な展開はない」とした。
エレクトロンデバイス事業は、売上高が前年比1%増の8400億円、営業利益は49%増の110億円を予定している。
半導体分野は、売上高が6850億円、営業利益は100億円を目指す。
「2008年度は、NECにとって、トップラインの成長に向けた重要に1年になる。施策を確実に実行していきたい」(小野常務)とした。
■ URL
日本電気株式会社
http://www.nec.co.jp/
プレスリリース
http://www.nec.co.jp/press/ja/0805/1501.html
( 大河原 克行 )
2008/05/16 00:00
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