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日本IBM、SOAソリューションに関する戦略と施策を発表


IBMビジネスコンサルティングサービス 代表取締役社長の椎木茂氏

業界特化型SOAソリューション「CBS」

日本IBM金融SOAコミュニティーの概要
 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は5月16日、同社顧客およびIBMビジネス・パートナーを対象としたイベント「IMPACT JAPAN SOA CONFERENCE」に合わせ、同社のSOA(サービス指向アーキテクチャ)ソリューション戦略と施策について説明する、プレス向けラウンドテーブルを開催した。

 まず、SOAソリューションへの取り組みについて、IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社 代表取締役社長の椎木茂氏は、「SOAによって、顧客のビジネスモデルが変わるとともに、サービスを提供する側のビジネスモデルも変わろうとしている。そのなかで、当社では保険や医療など業界特化型のSOAソリューションを開発し、業界別の作成済み共通サービスであるCBSや業務プロセスモデルのテンプレートなどをパッケージ化して提供している。これにより、低コスト、短期間でのSOA実装を可能にした」と述べた。海外の実績では、米国の大手住宅金融事業会社であるCountrywideが、SOAによって開発コストを80万ドル以上削減した例や、欧州大手相互保険会社のStandard Lifeが、全アプリケーションの40%をSOA化することで、約6億円の開発費を削減した例があるという。

 日本市場においては、中堅企業向けSOAソリューション「MEGA-Frame」を展開。「受発注から出荷、仕入れ、在庫管理まで販売管理の基本的な業務をCBSとして組み込み、これをベースに顧客の個別業務に合わせたビジネスサービスを提供することで、ユーザーニーズに応じて柔軟性の高いシステムを迅速に構築できる」(椎木氏)としている。

 また、金融業界向けSOAソリューションとして、既存の基幹システムを活用し、即応性と柔軟性を備えた戦略的商品・サービスを提供。「金融ビジネス改革を見据えた提案を行い、顧客のビジネストランスフォーメーションのビジョンを共有し、当社の持つ各種アセットを活用することで、その実現に向けてサポートしていく」(椎木氏)という。このほか、米国市場で先行している製造業向けSOAソリューション「ePLM/PDIF」を、2008年度下半期をめどに日本市場でもサービス開始する予定。

 なお、金融業界におけるSOAの推進を目指し、5月15日に「IBM金融SOAコミュニティー」を設立したことも、ラウンドテーブルで発表された。このコミュニティは、金融機関が相互にSOAサービスを活用することを目指した研究会で、参加企業における顧客サービスの向上と情報システムの効果的な利用を促進するため、銀行・保険・証券など業種の垣根を越えて、SOAに関する研究・事例紹介・情報交換などを行っていく。日本IBMが事務局となってコミュニティを運営し、銀行、証券会社、保険会社など約20社が参加している。


日本IBM 専務執行役員 ソフトウェア事業担当の三浦浩氏

2008年度 日本IBMソフトウェア事業の施策
 次に、日本IBM 専務執行役員 ソフトウェア事業担当の三浦浩氏が、同社ソフトウェア事業としてのSOA戦略を説明した。同社では、2008年度のソフトウェア事業の重点領域として、1)SOAのさらなる推進、2)業界ごとにソリューションを提供、3)イノベーションを加速する5分野のソリューションを推進、の3つを挙げているが、「これらの重点領域の中心となるのがSOAの推進で、そのキーポイントになるのがBPM。現在、ビジネスプロセスの改善は企業のCIOにとって最重要課題になっており、この課題解決に向けてBPMソリューションを中心に顧客のSOA導入を促進していく」(三浦氏)方針を示した。

 今後、BPMソリューションについて、顧客のビジネスの俊敏性を実現するための機能拡張を図っていく考えで、ビジネス・イベント処理、ビジネス・インテリジェンスとの融合、BPMへの取り掛かりをより容易に、の3つの施策を展開する。

 具体的には、ビジネス・イベント処理では、1月に買収したAptSoftの製品をベースにしたビジネス・イベント処理の新製品「WebSphere Business Events」を投入する。この製品では、企業内に流れる大量のイベントをふるいにかけ、ビジネス機会とリスクに対して感知、応答。これにより、IDの窃盗、顧客サービス、詐欺/不正、金融取引、サプライチェーンの最適化、法令順守などの領域において、BPMの自動化を実現する。

 ビジネス・インテリジェンスとの融合では、同社BPM製品とCognos BI製品との連携を進め、BIコンテンツをプロセスの一部として組み込んでいく。「これにより、データから得た情報をプロセスの中に反映できるようになるため、人の判断に頼るのではなく、BIを活用した自動化された業務システムを構築できる」(三浦氏)としている。

 BPMへの取り掛かりをより容易にする施策については、BPMのパッケージング製品「IBM BPM Suite」を2008年第2四半期に発売する予定。プロセス中心、コンテンツ中心の2種類のパッケージを用意し、企業ニーズに応じてモデリング、配備、モニタリングのツールセットを提供する。スターターセットとして、プロセス中心では「WebSphere Business Modeler」、「WebSphere Business Services Fabric」、「WebSphere Business Monitor」のセット、コンテンツ中心では「FileNet P8 Process Designer」、「FileNet P8 BPM」、「FileNet P8 BAM」のセットを予定している。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/


( 唐沢 正和 )
2008/05/16 18:49

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