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日本タンバーグの代表取締役社長、林田直樹氏
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「コミュニケーションの手段には、電話、インスタントメッセージング(IM)、音声会議などさまざまありますが、一番生産性が高いのは、やはり面談すること。ビデオ会議はそれに一番近いコミュニケーションを提供できる手段です」、そう話すのは、ビデオ会議ソリューションを提供する日本タンバーグ株式会社の代表取締役社長、林田直樹氏だ。「仮想的に場所と時間を共有でき、限りなく面談に近いビデオ会議を使うことで、コストと時間をセーブできるのです」と語る林田社長に、ビデオ会議の価値と、同社製品の特徴を聞いた。
ワールドワイドのTANDBERGはノルウェーのオスロに本社があり、約1200名の社員が在籍しているが、入社時に携帯電話とPCに加えてビデオ会議端末が配布され、社内コミュニケーションの90%をビデオ会議で行うようになる。自身も、一日5~10回程度ビデオ会議を利用するヘビーユーザーだという林田社長はこの状況を、「ビデオ会議を社員がこれだけヘビーに使っている企業は、世界中に類を見ないのではないか」と評する。
「当社では毎週月曜日に会議をしているのですが、遠隔地の大阪事業所の社員はもちろん、受付や電話応対のために自席に残らなければならない社員も、ビデオ会議端末を使うことで、会議に参加できるメリットがあります。もし電話がかかってきてもきちんと応対できるし、本人も会議に出られないという疎外感を受けずにすみます。また携帯電話向けのゲートウェイ製品もありますから、配布している3G携帯電話を使って、どこからでも会議に参加できる。携帯電話の映像というのは、正直そうきれいではありませんけれど、どこにいても顔を見ながら話ができるので、コミュニケーションのクオリティは高くなりますよ」(林田社長)。
「また、北欧に位置するオスロは、1年の半分くらいが冬で、マイナス30度くらいの日が続くそうです。その環境にある本社は、棟が分かれていて、本来、社員はそれらを行き来しないといけないのですが、ビデオ会議端末を卓上へ置くことによって、仮想的な会議環境を提供し、社員の負荷を軽減しているそうです。こういった使い方もあるんですね」(林田社長)。
自社製品を“使い倒す”のは、業務を円滑に行うためではあるのだが、別の側面として、ユーザーの立場を最大限理解できる強みにつながってくる。「ユーザーとしての立場からビデオ会議製品を見た場合、安定性、つまり、映像や音声が途切れない、違和感のない自然なビデオ会議ができるかどうかが重要になります」とした林田社長は、それを考慮し、同社製品は管理しやすさを重視していると強調する。
またユーザーに対して、どれだけのコストを削減できたかを示す「ベンチマーク」ツールを提供しているのもユニークな点だという。これは、あらかじめ拠点間の交通費などを入力しておくと、移動に要する時間や費用を計算し、どのくらい節約できたかを示してくれるツール。実際に導入したソリューションの効果を、明確に確認できるこういったツールは、経営者の立場から見ると非常に便利だ。同時にこのツールでは、移動によって発生するはずだったCO2を計算することにより、CO2の削減効果を具体的に示すことも可能で、昨今注目が集まっている環境対策についても、貢献度合いを数値化できるとした。
一方製品面では、PC向けのソフトフォンから、ビデオ会議端末、会議室全体を使って遠隔コミュニケーションを行うためのテレプレゼンス製品まで、幅広いラインアップを用意している。インフラ製品も、MCU(多地点接続装置)や携帯電話・ISDNとのゲートウェイなどをそろえた。PCや機器の性能向上、安価なブロードバンド回線の普及といった要因もあり、ビデオ会議市場はワールドワイドで30数%伸びているが、実は、林田社長によれば、導入されても効果的に利用されていないケースが結構多いという。
「ヘビーユーザーもリピーターのお客様も増えてはいますが、導入した大半の企業は、ひんぱんに使うというところにまでは至っていないんです」とした林田社長は、普及の核となるのは、PC向けやビデオ会議端末など、各個人の卓上に設置される製品だと主張する。それは、利用しやすい環境が整い、実際に使ってみれば、必ずユーザーはその価値を理解できると考えているからだ。また、「同じネットワーク上はもちろん、違うネットワークとの接続製品までを提供し、誰がどこにいてもビデオ会議に参加できる環境を整えています。これが利用率の向上につながるんです」(林田社長)。
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TANDBERG Experia
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さらには、単価の高いテレプレゼンス製品の販売にも力を注ぐ考えで、2007年11月より、「TANDBERG Experia」を本格的に販売開始した。ここは他社製品も続々と登場している分野だが、その中でのExperiaの特徴は2つ。1つは相互接続性で、自社のビデオ会議端末、ソフトフォンなどはもちろん、他社製品との接続性も確保する。林田社長はこれについて、「(ほかの製品を含め)世界標準の技術を搭載し、相互接続性を確保するために力を入れている。社内だけなら1ブランドでそろえるでしょうが、外部企業とやり取りする場合は、他社製品が設置されていることが多く、極力互換性を維持しています」と話す。
もう1つは、価格が競合製品と比べて安価なこと。価格が低い分、映像の没入感は確かに他社製品より劣るが、その分導入の敷居も下がる。日本タンバーグでは、他製品との相互接続性を含めて、利用しやすい環境を整えることで、テレプレゼンスの普及を図りたいとした。ただし、低価格とはいっても、1000万円以上の投資が必要となることから、導入はトップダウンで行われるケースがほとんどだろう。使ってみて、トップがビデオ会議の必要性を感じれば、「社員にどんどん入れていこう、ということになるでしょう。市場そのものも、今以上に活気を帯びていくと思います」(林田社長)という狙いもある。同社では、実際に効果を体感してもらうため、Experiaのデモルームを東京の本社内に用意。顧客向けの内覧会などを開催して、その普及に努めていくとしている。
■ URL
日本タンバーグ株式会社
http://www.tandbergjapan.com/
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( 石井 一志 )
2008/06/02 11:03
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