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Serena、シニアバイスプレジデントのレネ・ボンバーニ氏
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米Serena Software(以下、Serena)の日本支社は6月3日、国内展開を本格化したワークフロー作成・マッシュアップツール「Serena Business Mashup」に関して、同社が提唱する「ビジネスマッシュアップ」の概念や製品についての説明会を開催した。
「企業のIT部門は、複雑なアプリケーション開発にリソースをとられ、現場が本当にほしいと思うアプリケーションの開発まで手が回っていない状況」。登壇したSerena、シニアバイスプレジデントのレネ・ボンバーニ氏はそう語る。「現場では、些細(ささい)だが、本当に求められている機能がある。しかしそれが単純であればあるほど、IT部門はそうした現場のニーズより、もっと複雑でインパクトの大きいアプリケーション開発・導入を優先してしまいがちだ」。そこで現場ではしばしば、日々の業務を円滑に回すため、メールやExcelなどのツールを活用して足りないアプリケ-ションや機能を補う努力がなされている。「運用」によって「機能」を補う、人類の知恵だ。社内リソースに限りがある以上、それは仕方のないことでもある。だが、現場が本当に求めるアプリケーションや機能が、必要なときにそこにあれば、業務プロセスがより潤滑に回り出すことも厳然たる事実である。
ではもしも、ビジネスパーソンが必要とするアプリケーションを、IT部門に頼ることなく簡単に自分たちで作れるとしたらどうだろうか。それを実現するのがSerenaが5月30日から国内販売を本格化したSerena Business Mashupという製品だ。
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コンポーネント概要
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Mashup Exchange概要
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システム構成図
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Serena、リードリサーチャーの川岸達之氏
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ひな形の一例
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基本的には、業務プロセスのワークフロー作成・管理ツールである。完全日本語化されたGUI上で、ドラッグ&ドロップでワークフローを作成できる。コンポーネントとしては、マッシュアップ作成用のクライアントソフト「Mashup Composer」、ユーザーアカウントの管理などを行う「Mashup Administrator」、実行環境の「Mashup Server」などが提供される。併せて、Serena側で用意したワークフローのひな形をダウンロードできるユーザーコミュニティ「Mashup Exchange」といったツールも用意されている。ひな形をダウンロードし、ノンプログラミングで使えるMashup Composerを利用することで、開発言語などを知らないビジネスパーソンでも簡単にワークフローが作成できるというわけだ。
ひな形は「新入社員環境設定プロセス」「休暇申請プロセス」「ハードウェア変更リクエストプロセス」など豊富な種類が無償公開されている。ユーザーは好きなものをダウンロードし、自社内のMashup Server上に放り込むだけで利用が開始できる。ひな形では、「大抵の企業に当てはまるように標準化されたワークフローをあらかじめ構築している」(Serena、リードリサーチャーの川岸達之氏)というが、もしもユーザー環境に適さない場合は、Mashup Composerを使って簡単にカスタマイズできる。
カスタマイズしたマッシュアップは再公開することも可能。ひな形が保管されているMashup Exchangeはユーザーコミュニティとしての役割も持つということは前述した通り。ここではマッシュアップをアップロードし、世界中のユーザーで共有することができる。ひな形をカスタマイズするまでもなく、誰かが作ったマッシュアップがそのまま流用できるかもしれない。その上でカスタマイズ主が利用者から利益を得るというビジネスモデルも創出できるかもしれない。この仕組みを採用したのも、Serena Business Mashupの大きな特徴である。
それだけではない。Serena Business Mashupでは、そうして作成したワークフローに、容易にSOA化された社内システムや社外のSaaSなどを採り入れることができるのだという。Google Maps上に不動産情報を表示するような単純なインターネット上のデータ融合だったり、企業内システム同士を融合したりする従来のマッシュアップと違うのはこの点。ビジネスマッシュアップとはすなわち、「企業の内と外を結び、人・データ・プロセスを一連の業務ワークフローとして融合することである」とボンバーニ氏は語る。
誰もがマッシュアップできる、とはいえもちろんアクセス権限を設定することも、マッシュアップした履歴をすべて記録しておくことも可能。業務の促進を実現しながら、内部統制やガバナンスへも対応できる。「ビジネスパーソンは柔軟にワークフローをカスタマイズしていくことができる。現場で必要とされる機能をその場ですぐに追加できる。それはビジネスニーズに迅速に対応し、企業の継続的な変革を実現することにつながる」。それがSerena Business Mashupという製品であり、ビジネスマッシュアップという考え方だと川岸氏は説明した。
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人・データ・プロセスを業務ワークフローとしてマッシュアップ
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外部のSaaSとのマッシュアップも可能。企業の内と外をつなぐのが「ビジネスマッシュアップ」である
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Mashup Composerの画面
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外部サービスとの連携を実現するオーケストレーション編集画面
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同製品は5月30日より国内で本格展開する旨アナウンスされている。同社は十数年におよび変更管理製品を提供してきた。そのユーザー数はすでに1000を超え、同社によれば「そのうち70%が組み込み用途に利用するユーザー」という。まずはこうした既存ユーザーにターゲットオンする。「さらにビジネスマッシュアップという新製品・新概念の投入で、もっと広いターゲットへのアプローチが可能になる。新規ユーザーも積極的に狙っていく方針だ。そのためにマーケティングを強化し、コンサルティングやリセラーなどのパートナー戦略も今以上に積極的に打ち出していく。そして少なくともSerena全体の売り上げのうち10%を日本で獲得することが目標」(同社)と販売戦略を明らかにした。
■ URL
セレナソフトウェア
http://www.serena.com/geo/jp/
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( 川島 弘之 )
2008/06/03 18:48
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