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「セキュリティのポートフォリオ企業であるがゆえの強み」、米SafeNet


日本担当コーポレート副社長、ラッセル・ハバード氏
 米SafeNetは、暗号化や認証、DRM(デジタル著作権管理)をはじめ、さまざまなセキュリティ製品を提供する総合ベンダーだ。最初の顧客が米国政府という同社では、政府向け製品を提供する一方で、エンタープライズ市場向け、OEM向けなどの商用製品をさまざま提供。「当社ほど広範なポートフォリオをそろえているベンダーはいない」という点を売りに、ビジネスを進めている。その概要と戦略について、同社 日本担当コーポレート副社長、ラッセル・ハバード氏に聞いた。

 ハバード氏が繰り返し強みとして強調するのが、同社が幅広いポートフォリオを提供する企業であること。「ほかのテクノロジー企業は1種類の製品に絞り込んでいるところが多いが、当社は、成熟市場であるウイルス対策以外の多くの製品を抱えてポートフォリオで勝負している」とした同氏は、その理由として、「セキュリティはさまざまな分野で実装の仕方が異なること」を挙げる。

 そうした発想のもとに提供される製品形態は、大きく3つに分類される。1つは、完全な製品として提供されるもので、例えば、独自技術を使ってEthernetフレームを暗号化するアプライアンス「SafeEnterprise Ethernet Encryptor」や、クライアントPC向けの暗号化・認証トークン「iKey」などがここに含まれる。2つ目はチップの形態。アプライアンスメーカーなどに対しては、同じ技術を、ユーザーがすぐに製品として使えるものではなく部品として提供し、提供を受けたメーカーが製品中に組み入れて製品化するのに利用される。また3つ目の形態として、チップメーカーに対しては技術そのものがライセンスされるという。

 同社ではこのように、完成品以外の形でビジネスをしていることも多いため、エンドユーザーの目からはブランドが見えなくても、さまざまなところでその技術が使われている。ハバード氏は、例としてVPNを取り上げ、「大手ベンダーへIPsecの技術をOEMしているので、VPNユーザーの8割は当社のコードを使っている」と、そのビジネスの広がりを説明する。実際、売り上げも堅調に伸びており、「2001年に16万ドルしかなかった売り上げが、7年で20倍の成長を遂げた」ほど。セキュリティ専業ベンダーの中では、Check PointやL-1 IDENTITYに次ぐ3位にまで成長した。


 この成長を下支えしているのが、技術開発と買収だ。同社では、1300名の従業員のうち400名以上が暗号技術者で、政府機関から一般企業、ISVやOEMベンダーまでの幅広い顧客の要求に日々応えているという。一方、買収による技術獲得も進めている。SafeNetは2007年に投資会社に買収されているのだが、その時にポートフォリオの見直しを行い、足りなかった部分を補完するための買収を行った。

 具体的には、2008年4月に暗号化技術を手がける米Ingrianを買収した。同社の強みは、PC、メインフレーム、ストレージ、データベースなど、企業内の一連のフローに対して、暗号化が提供可能なこと。スケーラブルなソリューションを望んでいるエンタープライズ市場に対して、効果的なソリューション提供が可能になるという。また、PCI DSSの要求基準を満たす製品を提供できる点も大きいとのことで、「暗号化に新しく関心を持ち始めた、小売業などに対しても、効果的なソリューションが提供できる」(ハバード氏)メリットもある。

 数百から数千にものぼる分散リモート拠点に対して、効果的なデータ暗号化を提供できるという、「SafeNet EdgeSecure」アプライアンスも、Ingrianの技術をベースにした製品の1つ。バッチ処理やオンライントランザクションの処理を暗号化できるこの製品は、日々膨大なトランザクションが生まれるようになっている現在、非常に成長が期待できるとのことで、ハバード氏は、「ハイボリュームなクレジットのトランザクションが起こるような分野にも注目していきたい。こういった分野にも、きちんとしたソリューションが提供できると思う」とした。

 また買収ではもう1つ、2008年5月末にBeep Scienceを買収し、こちらではDRMを補完した。同社の強みは、携帯端末向けのDRMにあり、これをSafeNetが長年手がけてきたサーバー向けのDRMと組み合わせることで、端末キャリアやチップベンダー、またはコンテンツ提供者向けのビジネスが生まれるという。主な適用用途は携帯端末向けのビデオ配信で、「ビジネスとしてはすばらしいポテンシャルがある」(ハバード氏)というものの、「DRM関係のビジネスは、権利関係の処理が難しく、それが解決するまでの間は業界の動きが止まってしまうので、それがどうなるかにもよるだろう」と、こちらはやや慎重なところを見せる。

 なおこれらのビジネス以外では、ネットワーク暗号化アプライアンスの分野で大きなチャンスがあるとする。ハバード氏はその理由として、キャリアや企業が扱う帯域幅がますます広くなっていることを挙げ、「従来のIPsecはプロトコルとして重いため、より多くのトラフィックが流れてくると暗号・復号を効率よく処理することが求められるので、レイヤ2レベルの暗号化が可能なSafeEnterprise Ethernet Encryptorはがますます重要になってくる。顧客企業の数は多くないが、実装のスケールが大きくなるため、ビジネススケールも大きくなる」と説明した。



URL
  米SafeNet
  http://www.safenet-inc.com/


( 石井 一志 )
2008/06/12 08:59

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