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「CEOはイノベーションの仕組化に高い関心」-IBCS調査


IBCS パートナー 常務取締役 戦略コンサルティンググループ担当の金巻龍一氏
 IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(以下、IBCS)は6月19日、2004年度から実施しているCEOを中心に行った調査をまとめた「IBM Global CEO Study 2008」を発表。日常的にイノベーションを続けるための仕組み作りに関心をもつCEOが増えているという結果となった。

 この調査は2004年度から隔年実施しているもので、「今回の調査では、CEOがイノベーションを日常的に行うための仕組みを重要と考えていることが明らかになった。調査結果を比較すると面白い傾向が出ており、2004年時点ではコスト削減はほぼ完了し、成長戦略を模索するCEOが多いという結果が出た。2006年調査では企業を成長させるためのイノベーションを重視するCEOが多く、2008年調査ではそれをさらに推し進めるイノベーションを日常的に行うための仕組みに関心が高い」(常務取締役 戦略コンサルティンググループ担当・金巻龍一氏)

 今回の調査で、「企業が競争に勝つために、必要とされる変革の大きさはどの程度か?また、過去の変革達成度はどの程度か?」という質問を行った。その結果、抜本的な変革が必要と考えているCEOは、世界全体では83%だったのに対し、日本のCEOは96%が抜本的な変革が必要と回答。

 2006年調査での同じ質問に対しては、抜本的な変革が必要という回答は世界全体では65%、日本が83%だったことと比較すると、抜本的な変革の必要性を感じるCEOが世界でも、日本でも増えている。

 その一方で、過去の実現度合いについては、世界全体では2006年調査が57%だったのに対し、2008年調査では61%と、今後必要とされる変革の度合いと過去の変革実現度合いのチェンジギャップが22%と大きく拡大した。

 日本のCEOの回答も、2006年調査では61%だったのに対し、2008年は62%でチェンジギャップは拡大している。


過去2回の調査と比較し、今回の調査結果は、イノベーション企業として仕組み化を模索するCEOが増加していることが明確に 必要とされる変革の大きさと過去の変革達成度ではチェンジギャップ拡大が明確化

 「日本企業は保守的といわれるが、世界的に比較しても改革に前向きであることが明らかとなった。特に今回の調査で出た改革を仕組み化することは、日本が得意としてきた現場担当者が自ら改善を進める、『改善運動』への回帰といえるのではないか。少し前はBPR(ビジネスプロセス・リ・エンジニアリング)のような抜本的な改革が求められ、日本型改善運動では駄目だと見られていた。しかし、速いサイクルで改革を進めるにはBPRでは対応できない。日本型改善運動が見直されるタイミングに入ったのではないか」(金巻常務)

 事業に最も影響を与える外部要因がどのように変化しているのかという質問に対しては、変化を驚異ととらえるのではなく、チャンスととらえるCEOが出てきているという。

 「例えばCSR要求が高まっていることで、コスト負担が増えたと考えるのではなく、CSRという新しいマーケットが誕生するチャンスととらえるCEOが出てきている。環境問題は、国境を超えた各国共通の問題であり、グローバルビジネスがしやすいと考えるような発想転換により、事業拡大をする企業が誕生している」(金巻常務)


ネットワーク顧客層は、単なる店舗事業の置き換えではなく、新規顧客層が出現しているととらえ、戦略を立てることが必要
 インターネットを活用した商品販売についても、「店舗でできることをネット上でも展開することで、利便性を求める顧客がネットで購買するととらえるのではなく、まったく新しい顧客層が誕生しているととらえることができる」と金巻常務は指摘する。

 「ネットで商品を購入する顧客の中には、下手をするとメーカー自身よりも情報、知識を持った層が存在する。こうした顧客層は、きちんと理解さえすれば、価格が高くとも商品を購入してくれる。そのため顧客戦略としても、Web戦略ではなく、ネットワーク顧客向けの戦略が必要となってくるのではないか」

 グローバリゼーションの影響としては、アウトソーシングに対する考え方を変える必要があるという。

 「アウトソーシングというと、価値がないものを他社に任せるという考え方だが、IBMはインドでのプログラム開発を拡大している。これは価値がないものを人件費の安い国で実施するのではなく、世界で最も優秀な人材が存在するインドで開発業務を行うため。グローバリゼーションが当たり前となった中では、得意な分野をその国に任せることでビジネスチャンスを広げるという考え方をするべきと考えるCEOが増加している」(金巻常務)

 改革を起こすのが当たり前とする企業においては、変革の可視化も重要な要素として、自社が置かれている状況を把握していく必要があるという。

 さらにイノベーションを日常的に実施していく企業を実践するためのIT部門の役割としては、「提携を積極的に行っていくことが前提となるため、提携が決まった後で接続をどうすると考えていたのでは間に合わない。また、社内のプロセス改善、ビジネス改善といった個別の取り組みをつないでいく役割が必要となるが、それにはCIOが対応するのが望ましいのではないかと考える」(金巻常務)と、新たな役割が必要になるとした。



URL
  IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社
  http://www-06.ibm.com/services/bcs/jp/
  プレスリリース
  http://www-06.ibm.com/jp/press/2008/06/1901.html

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  ・ 「CEOの最大の関心事はイノベーション」-IBCSが世界規模で調査(2006/06/12)


( 三浦 優子 )
2008/06/19 16:22

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