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日立とNTTファシリティーズ、データセンターの省エネ化システム共同開発へ

IT機器と空調機の連携で全体最適化図る

日立、理事 情報・通信グループ CSOの北野昌宏氏

技術協業により、省電力運用管理基盤システムの共同開発めざす
 株式会社日立製作所(以下、日立)と株式会社NTTファシリティーズは7月2日、省電力データセンターの構築で協業すると発表した。両社の技術を合わせ、データセンター内のIT機器とファシリティを密に連携させる「省電力運用管理基盤システム」を共同開発し、2009年3月の提供をめざす。

 データセンターで省エネ化すべき要素はいくつがあるが、そのうちIT機器が占める消費電力量は、全体の半分に満たないケースが多いという。グリーンITを実現するには、照明・給電・空調などのファシリティ分野の省エネ化が必須条件なのだ。両社が協業することで、IT機器とファシリティ両面から省エネ化を実現していく。

 日立、理事 情報・通信グループ CSOの北野昌宏氏は、「これまでのデータセンターでは、IT機器とファシリティの双方がそれぞれのシステムで運用管理されており、相互に接続した情報のやり取りが行われていなかった。今後、一層の統合運用と省エネ化を図るためには相互連携による全体最適化が必須」と述べ、IT機器とファシリティを密に連携させる省電力管理基盤システムを共同開発するのが協業の骨子だとした。

 具体的に同システムでは、日立の統合サービスプラットフォーム「BladeSymphony」とNTTファシリティーズの空調機「FMACS」などを組み合わせ、日立のシステム運用管理ソフト「JP1」で統合管理する。「JP1によって、ファシリティとIT機器の稼働状況を吸い上げ相互制御を実現。これまで各機器で異常な状態が確認された場合、マニュアルを使って別個に手作業で対応していたのをシステム化・自動化する」(北野氏)のが主な目的という。


NTTファシリティーズ、取締役 データセンター環境構築本部長の小泉泰之氏

省電力管理基盤システムを両グループに適用することで狙う効果
 同システムの実現のためには3つのステップを踏む。まずは、IT機器と空調機双方における稼働情報の収集を行う。「例えば、IT機器のワークロードと消費電力、空調機の消費電力の3つを並列表示させることで、IT機器のワークロードは低いのに空調機の消費電力が高いなど、これまでは見えなかった異常が発見できるようになる」(NTTファシリティーズ、取締役 データセンター環境構築本部長の小泉泰之氏)。

 次に、IT機器のワークロード平準化と、それによる空調機の設定温度の最適化を図る。「データセンターにおいては一部のIT機器が高負荷になるなどして、局所的な熱だまりが発生。これを冷ますために、空調機では過剰な温度設定がされている。これが問題となっているが、IT機器のワークロードを平準化した上で吸気温度を測定すれば、空調機の設定温度最適化が図れる」(小泉氏)。これだけでも空調機の消費電力を約10%削減できるという。

 最後に、運用ポリシーに基づき、IT機器とファシリティの相互連携による全体最適化を図っていく。「例えば、すべてのIT機器の稼働率が20%で平均が取れているとする。現状はこうした状況でも、空調機はすべて稼働した状態となってしまう。JP1でIT機器の稼働率を測定し、余裕があるようならば、仮想化技術などを利用して片寄せを行い、一部のIT機器の電源をオフにする。この動作に連動して、空調機も一部運転をストップすることで、必要最小限の稼働率で高い冷却効果を得られるようにする」(小泉氏)。

 現時点では、IT機器と空調機の連携のみが想定されているが、UPSなどの電源機器も統合管理の対象に組み込み、順次、全体最適化を進めていく方針という。両社は同日より共同開発を開始し、2009月3月に提供開始する予定。実現したシステムを両グループ・データセンターに適用することで、年間約7万トンのCO2排出量抑制をめざす。さらに他社への適用も図ることで、ビジネス展開も図る方針という。

 また「省電力データセンターの構築に向けては他社も巻き込めた方が良い」(小泉氏)との意向から、「2009年のシステム完成に先駆けて、まずはインターフェイス部分のみを2008年度中に公開する」とした。


IT機器と空調機双方における稼働情報により、状態の見える化を図る IT機器のワークロード平準化と、それによる空調機の設定温度最適化を図る 運用ポリシーに基づき、IT機器とファシリティの相互連係による全体最適化を図る


URL
  株式会社日立製作所
  http://www.hitachi.co.jp/
  株式会社NTTファシリティーズ
  http://www.ntt-f.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2008/07/0702a.html

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( 川島 弘之 )
2008/07/02 15:12

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