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「一度体験すれば考え方が変わる」、HDビデオ会議の価値を訴求する日立ハイテクとLifeSize


HD画質のビデオ会議では、人の表情はもちろん、SD画質では難しかった、カレンダーの文字・色合いや時計の秒針まで確認可能。圧倒的な臨場感があるという

固定カメラの最下位機「LifeSize Express/Focus」。100万円を切る低価格ながら、画質はまったく劣らないという

リモコン1つで、カメラ、書画カメラ、PC、DVDなどの映像を簡単に切り替え可能
 株式会社日立ハイテクノロジーズ(以下、日立ハイテク)は、「ハイテクビジョン」というコンセプトのもと、コミュニケーション製品を展開しているが、MCU(多地点接続装置)の「CodianMCU」と並んでそのコアコンポーネントになっているのが、LifeSize Communications(以下、LifeSize)のHDビデオ会議システムだ。HDならではの高品質を強調し、日本市場に対して積極的に展開している両社に、その現状と狙いを聞いた。

 LifeSizeは、Polycomに買収されたViaVideoの共同創設者が興した、ビデオ会議専業メーカー。HDのビデオ会議に特化し、製品を市場へ投入している同社だが、その売りはなんといっても、「HDによる高精細な映像を、低価格で実現できること」(ライフサイズ・コミュニケーションズ株式会社 カントリーセールスマネージャー、小幡修氏)だという。本社側に設置されることの多い上位機「LifeSize Room」はもちろん、2月発売の下位機「LifeSize Express」や、5月発売の最下位機「LifeSize Express/Focus」といった支店・営業所レベルで採用されるような製品でも、最大解像度1280×720ドット、30fpsをサポート。対面する人物の表情はもちろん、書画カメラを使用すれば、基板の詳細な配線や着物の柄といった部分までを、WAN経由でも相手に見せられる。

 しかも価格は、LifeSize Expressが114万8000円、LifeSize Express/Focusが94万8000円と他社のSD機相当で購入可能。また、HDというと太く品質のいい回線が必要なのではないかと思うところだが、実は、「1280×720ドットを512kbpsから実用的な品質で利用できる点も当社の強み」(小幡氏)で、工場などの帯域の細いところでも問題なく利用できるというのだ。日立ハイテクのITソリューション営業本部 ネットソリューション部 今村秀行部長代理も、営業現場での手応えについて、「LifeSizeの競合はSD機。これだけ安い製品が出てくると、お客さまがSDで導入しようと思っていても、お見せしたとたん、なぜ今さらSDなんだ、HDにしよう、と思っていただける」と説明する。

 使い勝手の面でもLifeSize製品は工夫されており、1つのリモコンから簡単に操作可能。1つのテレビ画面を分割したり、小窓を複数表示することもできるなど、他社の製品と比べても遜色(そんしょく)ない機能・使い勝手を実現している。こうした各機能から、「じかにお持ちして見せると購入していただける率が高いものの、まだ知られていないのが最大の問題だ」と、日立ハイテクのITソリューション営業本部 ネットソリューション部 今村秀行部長代理が話すように、その課題は知名度という。

 HD画質による高精細な映像を一度見てもらうと、かなりの率で購入が決まるが、知名度が低い分、検討に載せてもらうまでが大変だというのだ。他社のSD画質製品と同等価格でHD画質を実現できるLifeSize Expressを発売した2月ごろから、徐々に認知度が高まっており、またメリットが総合的に評価されて、大規模・中規模の案件も増えてきたというものの、まだまだ十分知られているとはいえないのが現状。LifeSizeでは、リリースしたばかりの安価なLifeSize Express/Focusも含め、積極的に製品の価値をアピールしていく意向である。


ライフサイズ・コミュニケーションズのカントリーセールスマネージャー、小幡修氏(左)と、日立ハイテクのITソリューション営業本部 ネットソリューション部 今村秀行部長代理(右)
 また、「クリティカルな会議にも利用される製品だけに、単純な販売だけでなくサポートも求められる」ことから、ビデオ会議ではサポートについても手厚い体制が必要となる。そこで日立ハイテクでは、ビデオ会議の技術サポート、ソリューション開発、次世代技術のキャッチアップなどを図る新組織「ハイテクビジョンテクノセンタ」を4月1日付けで設立。「お客さまが抱く不安などを払しょくすべく、開発や問い合わせ対応をする部署を作った。あたかも国産製品であるかのような手厚いサポートを提供できる体制を整えた」(今村氏)という。

 また両社では次のビジネスとして、テレプレゼンスにも期待している。テレプレゼンスとは、会議の全参加者が1カ所にいるかのような、高い臨場感を提供できるビデオ会議システムのこと。シスコ、日本HP、ポリコム、日本タンバーグといったベンダーから製品が相次いで発表されており、ベンダーによっては、会議室そのものをテレプレゼンスにあわせて再構成するため、非常に高価な製品になっている。

 もちろんこうした需要もあるだろうが、LifeSizeのHDテレプレゼンスシステム「LifeSize Conference」では、「会議室は、お客さまの使い方にあった形で多様化するだろう。メーカーの都合で『こうあるべき』というのはおかしい」(小幡氏)との考え方から、コーデックやカメラ、マイクといったエンジン部分のみを提供。日立ハイテクが同製品とテレビ、家具などを顧客の要望を取り入れてインテグレーションする方式を採用した。今村氏も、「他社製品をご覧になってから当社へ相談されるお客さまも多いが、あそこまではいらない、簡易的なものでいい、という話はよくいただく。日本のオフィスでは引っ越しも多いが、それに対応できるソリューションも必要だろう」と述べ、LifeSize Conferenceでは導入しやすいテレプレゼンスを目指すとした。

 なおLifeSize Conferenceは、既存のLifeSize Roomを3つ合わせるような基本構成になるため、通常のビデオ会議製品との互換性がある点もメリット。LifeSize Expressなどのビデオ会議製品も含め、他社製品との相互接続性も備えているので、導入・切り替えについても段階的に行えるとのことである。さらに今後は、ビデオ会議で出張を代替することで交通機関の利用を削減し、結果として二酸化炭素排出量を削減できるという、ビデオ会議のグリーンITへの貢献をアピール。あわせて、新たな用途の開拓も積極的に行う考えで、さまざまな分野に提案したい意向を持っている。

 「昔のビデオ会議はしょせんは電話で、皆画面を見ていなかったが、今は会議で集まったときに、画面を見ながら普通に会話できる品質になった。これだけきれいな映像だと人の確認がきちんとできるし、ビデオ会議越しにある作業をしてもらうなど、HD画質ならではの使い方が出てくるのではないか。教育用、医療用など、多岐にわたった使い方が期待できる」(今村氏)。

 日立ハイテクとLifeSizeでは、こうした製品の特徴をアピールして競合に勝ち抜くとともに、新たな市場開拓などによって、今年度に国内ビデオ会議市場のシェア10%の獲得を、また2010年度までには30%の獲得を目指すとしている。



URL
  株式会社日立ハイテクノロジーズ
  http://www.hitachi-hitec.com/
  LifeSize Communications(英語)
  http://www.lifesize.com/
  ハイテクビジョン
  http://www.hitachi-hitec.com/jyouhou/hitec-vision/


( 石井 一志 )
2008/07/08 10:44

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