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写真右から、米澤香氏、山本晶子氏、小圷義之氏、鈴木依子氏
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アドビシステムズ株式会社は7月11日、PDF文書作成ソフトの最新版「Adobe Acrobat 9 日本語版」の販売を開始する。Acrobat 9では、さまざまなファイルを1つのPDFファイルに統合できる「PDFポートフォリオ」、Adobe Flashのネイティブサポート、共同作業機能の強化、などが図られている。
このAcrobat 9について、米Adobeナレッジワーカービジネスユニット シニアプロダクトマーケティング マネージャーの山本晶子氏、マーケティング本部ビジネスソリューション部 部長の米澤香氏、マーケティング本部ビジネスソリューション/Acrobatマーケティング部 フィールドマーケティングマネージャーの小圷(こあくつ)義之氏、マーケティング本部ビジネスソリューション/Acrobatマーケティング部 フィールドマーケティングスペシャリストの鈴木依子氏の4名に話を伺った。
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Acrobat 9ではウィザードを強化。写真はPDFフォーム配布用のウィザード
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―旧バージョンでは、Acrobatをどこから使えばよいか理解できるように操作ガイドというインターフェイスが用意されていましたが、Acrobat 9ではなくなっています。Acrobatを使うユーザーに初心者がいなかったということでしょうか?
山本氏
いえ、そういうわけではありません。われわれはユーザビリティテストに時間をかけていますが、その過程でわかったのが操作ガイドでは不十分であるということです。
操作ガイドはAcrobatの起動時に表示されるメニューで、したい操作にあわせて選んでいくというインターフェイスになっています。これはこれでわかりやすいのですが、いったん操作ガイドを閉じてしまうと何をしていいかがわからないという問題が発生していたのです。
Acrobat 9では、これを踏まえて、たとえばフォーム作成など各機能ごとにウィザードを用意することで、操作をガイドする方向に変更しました。これにより、フォームを作る、レビューを行う、といった機能を簡単なステップで行えるようになっています。操作ガイドはなくなりましたが、使い勝手という面では、より簡単になっています。
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Acrobat.comを利用して、最大3名までの共同作業に対応
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―Acrobat.comというリアルタイムコラボレーションサービスとの連携もありますね。Acrobat 8であったAcrobat Connectとはどう違うのですか?
山本氏
Acrobat 8ではAcrobat ConnectというWebカンファレンス機能を用意していましたが、日本語でのサービスがなかったためか、日本市場での反応はイマイチでした。
Acrobat Connectが一方的なトレーニングだったのに対して、Acrobat.comでは最大3名までの双方向のコミュニケーションが可能です。
米澤氏
製品版のAcrobat Connect Proをパッケージで販売していますが、こちらに関しては学校などでの導入が進んでいます。Webカンファレンスは、日本ではこれからくる市場ではないかとみています。
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PDFポートフォリオでは、PDFのほか、Flashムービーや画像ファイル、Office文書も統合可能
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ファイルの表示方法はさまざまに変更可能
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―Acrobat 9では、PDFポートフォリオという機能が用意されています。これはMicrosoft Officeで提供されていたバインダーのような機能でしょうか? バインダーに関しては、結局あまり普及せずに終わっていますが?
山本氏
PDFポートフォリオ自体は、前バージョンのAcrobat 8よりも前から議論を重ねてきた機能です。単にファイルをまとめるのではなく、整理するという方向に主眼をおいています。また、ムービーを使えるようにするなど、表現力にもこだわっているのが違いではないでしょうか?
PDFポートフォリオは、PDFファイルだけでなく、Flashムービーや画像、Office文書といったファイルを、1つのPDFファイルに統合できるのが特長です。Office文書については、再生するPCにOfficeが入っていればプレビューもできます。また、追加や削除も簡単に行えます。フォルダも保存できるので、階層構造を持ったコンテンツの保管も可能です。
―PDFポートフォリオの利用方法としては、どのようなものがありますか?
山本氏
複数ファイルをPDFポートフォリオで1つのPDFファイルにしてメールで添付するというのが基本的な使い方になるとおもいます。複数の文書がばらばらに添付されていると、どれからみればいいのかわかりませんが、PDFポートフォリオを使えば1つのPDFファイルにまとめられ、なおかつ読んでもらいたい順序で並べることもできます。
また、営業部門がプレゼンテーション用に使うというのもあります。Flashムービーを組み込めますので、表現力豊かな資料を作ることが可能です。そのほか、顧客向けのカタログにPDFポートフォリオを使うといった利用法もあります。
プレゼン資料など、開いた人がいかに関心を持ってもらうかが重要ですが、PDFポートフォリオを使えば、読みたくなる資料が手軽に作れます。米国では広告会社などが関心を示していますね。
―PDFファイル内でFlashムービーをサポートしたのも大きな機能強化ですね。
山本氏
サポートしているのは、Acrobat独自のランタイムになりますので、実際のFlashとは異なるのですが、さまざまな可能性が生まれました。たとえば、Flashでゲームを作っている企業などは、PDFポートフォリオと組み合わせて、Flashベースのゲームを売り出す際に、PDFポートフォリオ化して宣伝するといった使い方も可能です。
また、Acrobat 9で強化されたWebページのPDF化では、Flashが埋め込まれたページをそのままPDFにすることもできます。埋め込んだFlashムービーはPDF内に保存されているので、取り出すことは不可能ですから、動画サイトなどで心配されるような悪用はないとおもいます。
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Webページに埋め込まれているFlashもちゃんと再生可能
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―話が出ましたが、WebページのPDF化も強化されていますね。Internet Explorer(IE)からボタンひとつで変換できるのも手軽です。
山本氏
IEからボタンひとつで変換できるので、IEの機能を使っているようにおもわれますが、実はまったく使っていないんです。
鈴木氏
Acrobat 9では独自のWeb解析エンジンを採用することで、Webページを忠実にPDF化できるようになっています。Webブラウザには依存していません。ですので、使っているWebブラウザの見た目とは違った結果になるかもしれません。その場合、Acrobatでフォント設定なども行えますので、見栄えに関しては自由に変更可能です。
―パフォーマンスも向上したということですが。
山本氏
Acrobatの起動も、PDFの作成も高速化しています。Acrobat 8と比べて2~3倍くらいでしょうか。特に作成に関してはエンジンを改良して高速化を実現しています。Flashムービーを変換しながらでも高速に変換できます。
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Acrobat 9では回答状況のトレースが可能になった
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―PDFフォームの機能強化も興味深いですね。
山本氏
PDFフォームの作成機能は、Acrobat 8からありましたが、作業フローがばらばらで使い勝手がいいとはいえませんでした。今回、作成からデータの収集、途中経過のモニタリング、分析、CSV出力までをAcrobat内で完結しているのが特長です。
特に途中経過のモニタリングは新しい機能です。これまでは、だれが回答したのか追跡不可能でしたが、この機能を使うことでだれが未回答なのかを簡単に把握できます。
小圷氏
収集した結果もこれまでは共有フォルダに保存するだけでしたが、今回からSharePointのフォルダにも保存できます。また、Standard版でPDFフォームを作成できるようになっているのも大きな変化です。
山本氏
PDFはスタティックな使い方しかできないとおもわれがちですが、Flashとの統合でさまざまな使い方が可能になっています。FlashでRSSを表示することも可能なので、これを組み合わせれば商品カタログなどで価格情報をリアルタイムに更新するといった使い方も可能です。
今回のAcrobat 9は、他社がまねできないプラットフォームに仕上がったと自負しています。
■ URL
アドビシステムズ株式会社
http://www.adobe.com/jp/
ニュースリリース
http://www.adobe.com/jp/aboutadobe/pressroom/pressreleases/200807/20080710_acrobat9.html
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( 福浦 一広 )
2008/07/11 00:00
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