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富士通野副新社長が経営方針を発表、「サービスビジネスは富士通の強み」


代表取締役社長の野副州旦氏

3つの「起点」を実行方針に
 富士通株式会社は8月5日、6月に代表取締役社長に就任した野副州旦(くにあき)氏による記者向けの経営方針説明会を開催した。

 野副氏は、「黒川前社長が5年間かけて作り上げてきたものをいっそう強くする。富士通の強さをさらに強くし、弱い部分は選択と集中を行っていく」と紹介。「フィールドイノベーション、グローバルカンパニー、地球環境貢献の3つをテーマに活動しているが、これをさらにすすめ、“お客様のお客様起点”、“グローバル起点”、“地球環境起点”で実行していく」と、活動の方向性を示した。

 また、野副氏は、現在の分野別の売上高と営業利益を示し、「テクノロジーソリューションが売上の57%、営業利益の68%を占めている。このテクノロジーソリューションの中でも、ソリューション/SIとインフラサービスの売上が2兆5593億円と全体の約半分に、営業利益が1404億円で56%を占めている」と説明。「本業をいかに強くするかが重要」と、同社にとってサービスビジネスが主力事業であると強調した。

 「ソリューション/SIビジネスが大きく改善したのは、2004年からの改革の成果があらわれた結果。たとえば、営業とSEの一体化やパイプラインマネジメント、SIアシュアランスなどのプロセス改革を実行。これにより、6万件近い手持ち案件を獲得している。また、SI進行基準をいち早く導入することも効果的だった。進行基準は契約ベースで受注することになり、手直しなどの問題を軽減する結果につながった。そのほか、19社ある地域SE会社をバーチャルに4ブロックに統合し、それぞれに責任を持たせて活動することで成果も生まれた」と、これまでの改善活動が成果として如実に表れていると説明した。

 ただし、ソリューション/SIビジネスの原価率が下がっていないという現実もある。「これに関しては、SEの回転率を高めたり、生産性を向上するなどにより改善していきたい」とした。


ビジネス構造。サービスビジネスが大きく貢献 ポートフォリオ。サービスビジネスを中心に、プロダクトビジネス、海外ビジネスの拡大を図る 各ビジネスのポジショニング

海外ビジネスのレポートラインを一元化
 就任会見で触れていた海外ビジネスの強化に関しては、「2004年から2007年までの売上高の伸びをみると、国内ビジネスが1.7%の成長だったのに対し、海外ビジネスは11.8%と高い成長を実現している。ただし、利益率はまだまだ低い。買収効果がまだ出ていなかったり、グローバルなパートナーシップの効果が不十分。今後は海外各社のコスト構造にメスを入れ、収益力を高めていく」と説明。

 また、新たに海外ビジネスグループを用意。「リチャード・クリストウ氏をビジネスグループ長にすることで、レポートラインをひとつにまとめる」と、シンプルな体制にしたことも紹介した。

 PCや携帯電話といったコンシューマプロダクトに関しては、「2007年度の業績をみると、525億円の営業利益が出ており、利益貢献しているビジネス。また、海外ビジネスを強化するにあたっても重要なビジネス分野」と説明。「SIなどのソリューションでは、日本の成功体験がそのまま海外ビジネスで通用はしない。海外では、やはりプロダクトが中心になる。そのときに携帯電話は大きな武器になるとみている。単に携帯電話を持っていって売るのではだめで、WiMAXや基地局など他のビジネスとのシナジーを持った展開が必要になるだろう」と、海外ビジネスの鍵をにぎる分野であると述べた。

 説明会では、先日起きた東証でのシステム障害に関連し、「特定社会システム監視本部」を8月1日付けで設置したことも発表。社会的に大きな影響のあるミッションクリティカルシステムを第三者視点で集中監視するもので、社長直轄で対応するとしている。「東証のシステムのように、停止することが許されない社会インフラとなったシステムの障害に対応するもので、すべてのSEから情報を収集できるなど高い権限を与えて対応していく」と述べた。

 「富士通の強みは、富士通本体で6300名、グループ全体で2万2000名以上にのぼるSEという人材。ソリューションビジネスは人が支えており、これをさらに強くすることで、さらに強みとしていく」と、サービスビジネスを同社の強みとしてさらに強化する考えを示した。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/

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( 福浦 一広 )
2008/08/05 18:06

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