「VMwareの強みは12万社で採用されているという利用実績。メインフレーム以上に安定稼働している仮想化製品はVMwareだけ」、そう語るのは、米VMware製品・ソリューション担当バイスプレジデントのラグー・ラグラム氏。来日したラグラム氏に、無償提供されたVMware ESXi、クラウドコンピューティングでの仮想化の役割について話を伺った。
■ ESXi無償化で新規ユーザーが増加
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米VMware製品・ソリューション担当バイスプレジデントのラグー・ラグラム氏
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―7月にスタンドアローン版のVMware ESXiの無償提供を開始しました。この狙いについて教えてください。
ラグラム氏
まず理解していただきたいのが、VMwareにとって仮想化はどこでも採用されていなければいけないものだということです。これまでにも、VMware GSX ServerをVMware Serverとして無償提供したり、VMware Playerを無償提供してきました。われわれとしては、多くの場面で仮想化が利用されることが重要なのです。われわれの収益源はより高度な製品に移っています。ESXiを無償で公開できたのもこうした理由からです。
また、ESXiという製品そのものが一般ユーザー向けに開発された新しいアーキテクチャであるというのも理由のひとつです。ESXiはフットプリントが小さく、(Linuxをサービスコンソールとして使っていないため)セキュアな点が特長です。
あとは、ESXiそのものがupdate2という管理機能を改善した製品にバージョンアップしたことも要因です。より使いやすくなったということで、このタイミングで無償提供に踏み切りました。
―無償提供を開始してからまだ2週間ですが、ユーザーの反応はどうですか?
ラグラム氏
公開してから一週間のダウンロード数をみると、VMware Serverを公開したときとほぼ同じ数でした。VMware Serverは公開以来2年になりますが、この間300万のダウンロードとなっていますので、どのような傾向かは理解していただけるのではないでしょうか。
特徴的なのは、ESXiをダウンロードした人の半数以上が、VMwareをはじめて使う人だったという点です。仮想化がどこでも採用されないといけないというわれわれの戦略が正しかったといえます。
―サーバー仮想化がはじめてのユーザーにとっては、VMwareは選択肢のひとつでしかないとおもいます。Hyper-VやXenServerなど、他社の製品と比べて優位点はどのあたりにあるのでしょうか?
ラグラム氏
われわれは8年前から製品を投入しています。利用企業も全世界で12万社以上になります。成熟した製品なのです。ユーザーからはメインフレーム以上に安定しているといった評価も聞かれます。
またエンドトゥエンドでソリューションを提供しているのもVMwareだけです。ESXiのようなエントリー製品からニーズに応じてアップグレードできるのもVMwareだけです。他社の場合は非常に限定的です。
ハイパーバイザを比べても同様です。VMwareのハイパーバイザは、仮想マシンの実装密度が他社のハイパーバイザよりも高く、そして安定しています。同じハードウェアを使った場合、VMwareならば非常に効率的に利用できます。SMBユーザーにとって、価格面でメリットは大きいのではないでしょうか。
ESXiはだれでもダウンロードできますので、ぜひ他社の製品と比較してください。
■ 仮想化ベースのクラウドコンピューティングが企業を救う
―8月6日にトレンドマイクロがバーチャルアプライアンスへの対応を表明するなど、バーチャルアプライアンスの動きも活発化してきましたね。
ラグラム氏
バーチャルアプライアンスのコンセプトは、ほしいときにすぐに使えるというものです。OSとアプリケーションがセットされているので、仮想環境にそのまま追加するだけで使えます。シンプルに利用できるのが大きな利点です。
バーチャルアプライアンスは700以上用意されており、セキュリティやロードバランサー、バックアップなどの製品に人気が集まっています。また、DB2やBusiness Objects、SAPなどのエンタープライズソフトも、製品の複雑性を解決する方法としてバーチャルアプライアンスに注目しています。
バーチャルアプライアンスは、将来のソフトウェアディストリビューションの形態として注目していいものです。また、クラウドコンピューティングという観点でも非常にユニークです。
―クラウドコンピューティングというと、SaaSなどネット経由でサービスを提供するものという印象が強いのですが。
ラグラム氏
確かにクラウドコンピューティングというと、GoogleやSalesforceなどWebを介してアプリケーションを提供するものをイメージされるでしょう。ただし、このモデルには問題があります。企業がこれまで開発したアプリケーションを、こうしたサービスにあわせて書き換えなければいけないという点です。
アプリケーションを書き換えたくない企業はどうすればいいのか。答えは簡単です。仮想化環境にアプリケーションをそのまま置けばいいのです。こうした使い方であれば、Windows NT Serverといった古いOSをそのまま動かし続けることも可能になります。
―その場合、企業内にアプリケーションは置かれたままになるのではないですか?
ラグラム氏
いえ、サービスプロバイダ側に仮想化環境を用意して、仮想マシンをそこで実行すれば、ネット経由でサービス提供することが可能になります。サービスプロバイダにとってもサービスメニューが増えるわけですから、お互いにとってメリットがあるサービスになります。
将来的には、企業内の仮想化環境とサービスプロバイダの仮想化環境間でデータ連携などが行えるようにする予定です。
―おもしろい利用方法ですね。すでにサービスを開始している企業はあるのでしょうか?
ラグラム氏
ドイツのT-Systemやブリティッシュテレコムなどで、サービス提供しています。サブスクリプションベースのISP向けプログラム「VMware Service Provider Program」も用意しています。
現時点ではいえませんが、9月に開催するVMworldでクラウドコンピューティング関連の発表なども予定しています。
―VMworldではほかにどのような発表を予定されていますか?
ラグラム氏
データセンター、デスクトップ、クラウドの3つのビジネスをおこなっていますが、それぞれでビジョンを発表する予定です。もちろん、製品のロードマップも発表します。期待してください。
また、VMworldは業界イベントでもありますので、参加各社からもさまざまな発表があります。さすがにこの場ではいえませんが(笑)、こちらも期待してください。
―ありがとうございました。
■ URL
ヴイエムウェア株式会社
http://www.vmware.com/jp/
VMworld 2008
http://www.vmworld.com/conferences/2008/
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( 福浦 一広 )
2008/08/12 00:00
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