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「全環境のシングルバックアップが目標」、米Symantecのデータ保護戦略


バイスプレジデント、プロダクトマネジメント&エマージングプロダクツ データプロテクショングループのマット・キックスモラー氏
 情報量の急増、仮想化技術の普及などIT環境の変化を受けて、データのバックアップ分野で革新が続いている。従来の方法では、十分なバックアップソリューションが実現しにくくなっているのだ。この課題を早くから認識し、積極的に取り組むのが米Symantec。吸収したVeritasのNetBackup(以下、NBU)製品群を次世代バックアップソリューションとして順次進化させている。そこで、来日したバイスプレジデント、プロダクトマネジメント&エマージングプロダクツ データプロテクショングループのマット・キックスモラー氏に、いま、バックアップのトレンドはどこにあるのか話を聞いた。


ディスクベースへの移行が革新の始まり

データ保護手法はディスクにより進化した
 キックスモラー氏はまずキートピックとして、「ディスクバックアップへの移行」「重複排除」「仮想化環境への対応」「Windows環境への対応」「CDP(継続的データ保護)」の5つを挙げ、「従来のデータ保護手法としては、日単位のテープバックアップ、秒単位のレプリケーションなどのみだったが、これらはいずれも高価。また、時間・分単位のバックアップ手法があまりなく、この領域を埋めるソリューションが必要となっていた」(同氏)と話す。これら5つは、企業で使用されるアプリケーションの増加に伴う、バックアップの複雑性を解消する有効策になるという。

 ディスクへの移行は、数年前から起こっているバックアップ分野の代表的な革新だ。バックアップ先をテープからディスクへ移行することで、バックアップの信頼性やリカバリ速度は飛躍的に向上する。遠隔サイトにデータを保管する際も、昔のようにテープを郵送することなく、簡単にレプリケーションが可能となる。

 「ディスクベースの技術により、多くのことが可能になった。データ保護手法は、ディスクベースの技術によって進化したといっても過言ではない」(同氏)。


重複排除はもっとも革新的な技術

PureDiskアーキテクチャ概要
 数ある新技術の中でも、重複排除はもっとも革新的な技術だとキックスモラー氏は語る。Symantec製品のうち、重複排除を実現する「NetBackup PureDisk(以下、PureDisk)」では、複数サイトのバックアップデータをセントラルサーバーへ送信。重複するデータを、複数サイトから送信する際、あるいはセントラルサーバーで受け取った際に自動的に排除してくれる。最終的にストレージに保存されるのはユニークなデータのみとなり、大幅なデータ容量削減が可能になるのだ。

 これは情報量の急増という課題に対する1つの解となる。さらにコスト削減という面からは、ソフトウェアであることが強みで、「第一世代のディスクバックアップはアプライアンスが基本だった。これらは導入が容易だが、管理が分散する可能性があり、なおかついずれも高価。一方、ソフトウェアと汎用的なディスクストレージという組み合わせでは、柔軟な構成が可能であるとともに、コストに見合ったディスクを自由に選択できるので安く済む」(同氏)としている。

 PureDiskとNBUの最新版では、両者のさらに密な統合が可能になった。NBUではこれまでオプションとしてしか利用できなかったPureDiskの重複排除を、NBU 6.5からは自身のエンジンに組み込んで利用することが可能。これにより、NBU既存ユーザーは今まで以上に気軽に重複排除を利用できるという。

 また密な統合の結果、これまでリモートサイト間でのバックアップにフォーカスされていたPureDiskは、コアデータセンターにおける重複排除ソリューションとしても活用しやすくなっている。同氏によれば「PureDiskでは、オープンなグリッドアーキテクチャを採用。データセンターで運用する場合は、拡張可能なノードとしてストレージを利用することができる」という。

 「例えば、アプライアンスの重複排除機能を使うと、パフォーマンスに限界が訪れたときに、簡単に性能アップさせることができない。PureDiskならば、ノードを拡張することでリニアにパフォーマンスを向上させることができる。同様にストレージスペースも簡単に拡張していくことが可能だ」(同氏)。


リモートオフィスでのPureDiskの運用 データセンターでのPureDiskの運用 PureDiskのスケーラビリティ

仮想化環境でのバックアップを柔軟に実現

NBU for VMwareの特長

仮想環境全体を保護
 もう1つ、Symantecが注力するのが、仮想化環境におけるデータ保護だ。仮想化環境では、単純なバックアップにもさまざまな問題がつきまとう。仮想化技術のメリットはサーバーを統合することで、これまで未使用だった無駄なリソースを有効活用する点にある。結果、「おのずと1台1台のサーバーにかかる負荷は増え、バックアップに割くリソースが足りなくなる傾向にある」とキックスモラー氏は指摘する。

 そこでSymantecは、NBU for VMwareというソリューションを作り出した。問題は、仮想化技術により、パフォーマンス性能の許容ぎりぎりまで有効活用されたサーバーにおいて、バックアップにかかる処理負荷分のリソースをどこに見い出すかだ。ここでSymantecは、「VMware ESX 3.x」に実装された「VMware Cosolidated Backup(VCB)」というフレームワーク技術に着目した。VCBは、仮想マシンが動くサーバーからストレージを外部に抜き出し、別に設置したプロキシサーバーと共有させるもの。NBU for VMwareではVCBをうまく利用し、プロキシサーバー上でバックアップを行うことで、この問題をうまく切り抜けることに成功した。

 しかし仮想化環境のバックアップには、VCBでも解決できないもう1つの課題がある。例えば、物理サーバー上の仮想マシン全体をバックアップしたとしよう。すると、毎回がフルバックアップとなり、仮想マシン上のファイル単位でのリカバリができない。差分も取れないとなれば、バックアップソリューションとしては完全とはいえない。

 NBU for VMwareではこの問題にも対応。「Granular Recovery Technology(GRT)」という独自技術により、仮想マシン全体のバックアップを行いながら、各ファイル単位でインデックシングを行うことを可能とした。これにより「一回バックアップを取るだけで、全体リカバリも単一ファイルリカバリも行える」(同氏)という。

 さらに仮想化環境においては、VMwareのマネジメント製品「VMware Virtual Center(VVC)」との連携が可能となっている。仮想マシンは「VMotion」などの技術により、簡単に場所を移動させられるのがメリットの1つだ。ところが、頻繁に仮想マシンが移動してしまうと、バックアップ製品はその位置が特定できなくなり、継続的にデータを保護することが不可能となる。NBU for VMwareでは、「VVCと連携することで、移動した仮想マシンを自動的に検出。追随して継続的にバックアップを行うことできる」(同氏)という。

 なお、PureDiskの重複排除機能も、NBU for VMwareに対応している。また、「現状はVMwareが先行しているが、今後はXenやHyper-Vでも同様のことを実現できるようにしていく」(同氏)とのこと。


Windows環境のデータ保護を重要視

Windows環境における単一パスできめ細かいリカバリを実現
 もう1つ重要だとキックスモラー氏が語るのが、Windows環境のデータ保護も重要だ。この分野のバックアップに関しては、現在1000人以上のグループが結成され、精力的に取り組まれているという。

 同分野でもGRTが役に立つ。「Windows環境でもリカバリを行う際には、サーバー全体でのリカバリ、アプリケーションデータ単位のリカバリの2通りがある。これまで2種類を実現するためには、バックアップを別々に行わなければならなかった。だがそれではデータ量は倍になるし、コストも時間も、苦痛も2倍になってしまう」(同氏)。

 GRTを活用すると、「例えば、Exchange Serverをバックアップした際に、1回のバックアップで全体のリカバリも、1通のメール単位のリカバリも可能になる」という。これにより、Windows環境において、単一パスのきめ細かなデータ保護が実現するとのことだ。


全環境での「シングルバックアップ」が目標

NBU RealTimeの特長。日本ではまだ未発表
 このほか米国では、「NBU RealTime」というCDPを実現する製品も出荷されている。ハイエンドデータベースにフォーカスし、アプリケーションの変更をすべてリアルタイムに記録するというものだ。アプリケーションのデータがプライマリのストレージに保存される間に、ちょうどスイッチのミラーリングのように保存データを抜き出しコピーして、詳細なタイムスタンプとともに自身に格納する。「これにより、どこの時点へも任意に戻れる」(キックスモラー氏)というのが同製品の特長。

 こうしてみると、あらゆる技術がさまざまな環境で利用できるよう配慮されていることが分かる。実際、「Symantecのバックアップソリューションは、すべての環境でのデータ保護をシングルバックアップで実現することがゴール。その目標を常に念頭に置きながらここまで革新してきた」と同氏は話す。

 最新版のNBU 6.5は、このゴールにさらに一歩近づいた製品となっている。「データ保護容量の拡大、パフォーマンスの向上、これらはもちろんだが、PureDiskとのより密な統合、VCBの完全サポート、Exchange Server 2007とSharePoint Server 2007への対応などにより、これまで以上に統合的にバックアップが行えるようになっている」。

 「また、バックアップソリューションで肝心なのはリカバリ性能だ。これが良くないとバックアップの意味がない。できるだけ早いこと、データ単位でリカバリできることが求められるが、これまで紹介してきた内容からも、Symantecのソリューションがリカバリの柔軟性に注力しているのがお分かりいただけるだろう。NBU 6.5でも、もちろんリカバリ性能が強化されている」(同氏)という。NBU 6.5は、8月25日より日本国内においても出荷が開始される。


NBUプラットフォーム NBU 6.xでは、拡張性・可用性・データ容量・管理性を向上 NBU 6.5の新機能


URL
  株式会社シマンテック
  http://www.symantec.com/ja/jp/

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( 川島 弘之 )
2008/08/12 10:58

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