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“クロスプラットフォーム仮想化”が実現するCPUの壁を超えたアプリの利用法


 SPARC/Solaris環境のシステムでアプリケーションを構築している企業は多いだろう。そうした企業の悩みは、いかに新しいシステムに移行するパスを用意するかという点にあるのではないか。特にSPARCサーバーの保守切れが近づいている企業は、サーバー導入からアプリケーションのリコンパイルなどマイグレーションのためのさまざまな作業が発生することになり、管理者にとっては悩ましいところだろう。

 こうした悩みを解決する方法のひとつとして、株式会社ネットワールドが販売する「QuickTransit(クイック・トランジット)」という製品がある。QuickTransitは、ソースコードやバイナリに変更を加えることなく、SPARC/Solarisアプリケーションをx86ベースのハードウェアで動作させることができるのが特長だ。今回、QuickTransitの開発元である米Transitive、バイスプレジデント ワールドワイドセールスのSteven Mih氏、および国内でQuickTransitのマーケティングを担当するネットワールド マーケティング1部ビジネス開発グループ グループマネージャーの吉田尚樹氏に、製品の特長や今後の戦略などを伺った。


米Transitive、バイスプレジデント ワールドワイドセールスのSteven Mih氏
―Transitiveが開発している製品について説明していただけますか。

Mih氏
 サーバーの仮想化など、さまざまな仮想化がありますが、われわれはクロスプラットフォーム仮想化という分野の製品を提供しています。クロスプラットフォーム仮想化は、VMwareなどのサーバー仮想化では超えられないCPUアーキテクチャの違いを超えて仮想化を実現するものです。

 クロスプラットフォーム仮想化の具体的な製品としては、IBMのPOWERプラットフォームのアプリケーションをx86/Linuxプラットフォームで動作できる「PowerVM」や、SPARC/Solarisプラットフォームのアプリケーションをx86/Linuxやx86/Solarisで動作できるQuickTransitを提供しています。


―QuickTransitの仕組みを教えてください。

吉田氏
 QuickTransitには、OS Call MapperとDynamic Binary Translatorというコンポーネントを用意しています。そのほか、VSE(Virtual Solaris Environment)と呼ばれる仮想Solaris環境があります。SPARC/Solarisアプリケーションはまず、VSE上で実行されると、SPARC命令セットがDynamic Binary Translatorに送られます。Dynamic Binary Translatorは、この命令セットをx86プロセッサ向けに変換します。この際、命令セットのキャッシュや最適化を実行します。そして、x86プロセッサで処理された演算結果セットは、OS Call Mapperによってx86/Linuxやx86/Solarisの各種デバイスにマッピングするという仕組みになっています。

 VSE上では、Solarisと同じコマンドが使えますので、これまでと同様の作業が行えます。


―QuickTransitがサポートしているプラットフォームは?

吉田氏
 QuickTransitの製品ラインアップとしては、x86/Linuxに対応した「QuickTransit for Solaris/SPARC-to-Linux/x86-64」、x86/Solarisに対応した「QuickTransit for Solaris/SPARC-to-Solaris/x86-64」、Itanium/Linuxに対応した「QuickTransit for Solaris/SPARC-to-Linux/Itanium」の3つを用意しています。

 x86プロセッサですが、実際には64ビット環境が必須になりますので、x64対応のインテルおよびAMDのプロセッサが必要になります。またLinuxに関しても、64ビットOSが必須です。


―SPARC/SolarisアプリケーションをWindows上で動作させるQuickTransitは開発されないのでしょうか?

Mih氏
 技術的には可能ですが、マーケティング的に難しいと判断して製品化していません。

 米国では、UNIXとWindowsでは、管理方法を別々にする傾向があり、それぞれに担当者がいます。互いに利用しているOSを高く評価しているので、UNIX系のOSをWindowsで使おうとはしないようです。


―なるほど。では、クロスプラットフォーム仮想化が使われているそのほかの分野というと、どのようなプラットフォームがあるのでしょうか?

Mih氏
 MID(Mobile Internet Devices)向けの製品を開発しています。これを使えば、MIDで使われているARMプロセッサでx86/Linuxアプリケーションを変更することなく動作させられます。

 それ以外も取り組んでいますが、まだいえません。ただ、UNIX系のOSには対応していく予定です。


―VMwareなどのサーバー仮想化製品との関係はどうなっていますか?

Mih氏
 QuickTransitの使われ方として、これまでの物理サーバーをx86ベースの物理サーバーに移行するという使い方のほか、VMwareなど仮想環境上に移行するという使い方の両方があります。これからのデータセンターでは、VMwareでのサーバー仮想化とQuickTransitを使ったクロスプラットフォーム仮想化は共存していくことになるでしょう。

吉田氏
 QuickTransitを使うメリットのひとつが、VMware上で使えるという点にあります。というのも、VMwareはSPARC上で動作しないからです。x86環境で動作するVMwareを使ってサーバー統合が行え、QuickTransitでさらにクロスプラットフォーム仮想化が実現できるということになります。

Mih氏
 サーバー仮想化に関しては、VMwareだけでなくHyper-Vをサポートすることもアナウンスしています。われわれとしては、特定の環境に縛られることなく、選択の自由を与えていきます。


―QuickTransitに対するユーザーの反応はどうですか?

Mih氏
 幅広い分野で利用していただいています。インターネット通販の企業がSPARCマシンからのリプレース用途に採用していただいたり、金融系で利用していただいたりしています。また、通信キャリアでは、SPARCベースのラインカードを使っており、これをx86ベースのものに置き換えたいという話などもあります。

 あと、予想に反してx86/Solarisを利用するユーザーは多いですね。もともとLinux向けだけ用意していたのですが、Solaris版を用意してみると、けっこう利用されています。Sunもx86/Solarisに関してはコミュニティを作るなど力を入れていますが、利用者側でもLinux派とSolaris派に分かれている感じです。われわれとしては、両方に対応した製品を出すことで、選択の自由は与えられるようにしています。

吉田氏
 国内では、2006年から販売を開始していますが、今年から投入したx86-Solaris版をきっかけに問い合わせが増えています。Solarisが好きな方は、Linux上で動作するといってもなかなか動かなかったみたいで、Sunのx86サーバーを使い、x86-Solarisを使い、その上でVMwareを動作させ、そしてQuickTransitで古いアプリケーションを利用するといった使い方も生まれています。


―最後に何か読者に伝えたいことがありましたら、一言お願いします。

Mih氏
 9月8日に正式発表を予定しているのですが、QuickTransitをAdobe Acrobat Readerと組み合わせて無償提供します。

 実はAcrobat Readerのx86/Solaris版というのがまだ出ていないんです。Adobeでも開発は進めているのですが、ユーザーのニーズも高まっており、SPARC/Solaris版のAcrobat ReaderをQuickTransitと組み合わせて提供することを決めました。両社から提供するほか、ハードウェアベンダー経由での提供も検討しています。x86/Solarisを利用されている方は、使ってみてください。


―ありがとうございました。



URL
  米Transitive
  http://www.transitive.com/
  株式会社ネットワールド
  http://www.networld.co.jp/

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( 福浦 一広 )
2008/08/29 13:19

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