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「多極化世界では、経営戦略と一貫性を持つ財務戦略を推進すべき」-アクセンチュア

財務・経理のあるべき姿を提言

経営コンサルティング本部 財務・経営管理 グループ統括 エグゼクティブ・パートナーの野村直秀氏
 アクセンチュア株式会社は9月4日、記者向け説明会を開催。今後の財務・経理部門のあるべき姿を明らかにすべく、グローバル企業および日本企業に対して実施した調査を基に、「グローバル化が進んだ多極化世界では、財務・経理部門はバックオフィス的役割を脱し、全社経営戦略と一貫性を持つ財務戦略を推進すべき」と提言した。

 ビジネスのグローバル化に伴い、中国・インド・ブラジルなどの新興国が台頭し始めている。アクセンチュアによれば、新興国のGDPシェアは2015年には先進国を超え、2025年には世界全体の60%以上を占めるという。

 「経済力の分散が進めば、いずれ新興国の企業が先進国の企業を買収したり資本参入したりする“資本の逆流”が起きるだろう。そうした多極化時代においては、新興国の人材をいかに確保するか、そうした市場の特質をどうつかむかなどの課題が予想される」と語るのは、経営コンサルティング本部 財務・経営管理 グループ統括 エグゼクティブ・パートナーの野村直秀氏だ。

 新時代において、企業の財務・経理部門はどうあるべきなのか。それを明らかにする趣旨の下、アクセンチュアでは、グローバル企業の350人のCFOにアンケート調査を実施。環境変化に対して企業の財務・経理部門がどう対処しているのか、先進的な組織が採用している戦略とはどんなものなのか、についての分析を行った。


調査結果のサマリー
 この調査結果から、「グローバリゼーションによる影響を、多くのCFOは、より大きな企業価値を創造するための財務・経理部門再編の機会ととらえている。また、より広範な労働力をより安価に確保し、アウトソーシングを拡大する好機とも認識されていることが分かった」(同氏)という。

 これは、グローバル化の波が財務・経理機能に大きな影響を与えることを指し示す。「特に、すべての地域、事業部門を通じた財務・経理オペレーション環境の標準化、またはグローバルオペレーションに伴うコンプライアンスなどが重要視されている」(同氏)。

 だが実情は、「その波に耐えられるほどの財務・経理パフォーマンスは実現できていないようだ。優れた業績管理を実行している企業はごくわずかだった」(同氏)という。

 阻害要因としては、「財務・経理とビジネス全体の足並みの不統一が発展の妨げとなっている。また、CFOの声を聞いていると、財務・経理部門がこれまでの限定的な役割を超えて、企業価値向上のための総合的な支援を行っていく必要があると認識しつつも、そもそも価値中心の文化がなかなか社内へ浸透できずに苦慮しているようである」(同氏)。

 こうした環境の変化に対して、「グローバル化が進んだ多極化世界では、財務・経理部門はバックオフィス的役割を脱し、全社経営戦略と一貫性を持つ財務戦略が重要」(同氏)と述べ、今後の方向性を指し示した。

 また、日本のみに着目すると、海外と若干の違いはあれど、やはりグローバリゼーションによって業務の標準化やコンプライアンスの重要性が高まると認識されているようだ。野村氏は、「こうした重要度の高まりに対し、財務・経理部門の積極的な貢献期待がますます高まっている」と総括。また「日本はこれまでのような保守的な態度は改め、現状の財務・経理機能の客観把握(ベンチマーク)を行い、判明した課題を総合的に解決していく姿勢が必要」とした。


グローバリゼーションによる可能性。41%のCFOが、この変化をより高い企業価値を創造するための財務・経理部門再編の機ととらえている 今後財務・経理部門に求められる機能としては、オペレーション環境の標準化、コンプライアンスなどが挙げられている 自社の財務・経理機能に対する満足度は圧倒的に低い

FAST概要
 これら課題克服に向け、アクセンチュアでは財務・経理の戦略策定における総合支援ツール「Finance and Accounting Strategy Toolkit(以下、FAST)」を日本で導入する。これは、多極化世界にあるべき財務・経理の姿を実現するための戦略策定を支援するもので、財務・経理の現状業務を定量評価し、将来像やロードマップを作成できるという。

 財務・経理改革事例やベンチマークデータ、知見やノウハウが盛り込まれており、財務・経理機能に関する現状を、平均的な企業やハイパフォーマンス企業と比較して立ち位置を明らかにしてくれる。また、潜在的な障害がスキルにあるのか、コストにあるのか、あるいは別の何かにあるのかといった課題の認識に役立ったりする。さらにアクセンチュアが定義する未来の財務・経理に必要な機能に対して、目標水準を数値化することで、何から取り組むべきかを明らかにしたり、組織や要因の業務習熟度を評価したりするという。

 アクセンチュアでは同ツールをコンサルに利用し、今回の調査で明らかになった今後の財務・経理部門のあるべき姿への変革支援を行う方針。



URL
  アクセンチュア株式会社
  http://www.accenture.com/Countries/Japan/


( 川島 弘之 )
2008/09/04 18:23

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