米VMware主催の仮想化関連イベント「VMworld 2008」が9月15日~18日まで米ラスベガスで開催されている。9月16日には、米VMwareプレジデント兼CEOのPaul Maritz氏が登壇し、データセンター全体の仮想化を実現する「the Virtual Datacenter Operating System (以下、VDC-OS)」など、2009年に投入される次期製品を公開した。
■ 柔軟性をさらに向上したデータセンター仮想化の新コンセプト「VDC-OS」
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米VMwareプレジデント兼CEOのPaul Maritz氏
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VDC-OSの構成要素。アプリケーションとインフラを分離することで、柔軟性を向上しているのが特長
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VMwareでは、今回のVMworld 2008にあわせて、VDC-OS、vCloudイニシアチブ、vClientイニシアチブの3つのイニシアチブを発表。この3つの「仮想化インフラを一つの共通基盤とすることで、柔軟な対応が可能になることが重要。こうした流れに応じて、VMwareでも大きな変化を行った」と、3つの分野でのVMwareの取り組みを発表する意味を説明した。
VDC-OSは次世代データセンター向けのコンセプトで、製品としては、VMware Infrastructureの発展形となるもの。VMware Infrastructureをベースに、vApp(旧、Virtual Appliance)、vServiceにより構成される。スケーラビリティを向上させたほか、柔軟性を高めているのが特長となっている。「VDC-OSは、ビジネスにとって大きなメリットを与えられるもの。VDC-OSを利用することで、効率的なインフラ利用が可能になり、アプリケーションをいち早く適用できる。なによりも、ビジネスのニーズに応じて、IT環境をすばやく構築できるようになる」と述べた。
ベースとなるESX Serverの次期製品では、従来からサポートしているコンピューティング分野のほか、ネットワーク、ストレージもサポートすることになる。コンピューティング分野では、Intelとの協力関係を強調。Intelが発表した6コアプロセッサ「Xeon 7400番台」において、Intel FlexMigrationテクノロジーに対応している点をあげ、「VMotionの実行環境として最適なプロセッサ。これにより、ハードウェア購入時にユーザーは迷うことなく選択できるようになる」とした。ネットワーク分野では、シスコと協力関係にあることを述べ、「物理環境・仮想環境を意識することなく、シームレスなネットワークを提供できるようになる」とした。ストレージ分野では、EMCやDell EqualLogic、NetAppなどのストレージベンダーと協力関係にあることを述べ、ストレージ自体もシームレスにすることが可能になると説明。これにより、サイト単位でのリカバリを実現できるとした。
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OSとアプリケーションをコンポーネント化したvAppは、手軽に購入し、すぐに利用できるのが利点
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VDC-OSのもう一つの重要なポイントは、vAppを活用することでアプリケーションを柔軟に利用できるという点。vAppは、OSとアプリケーションを1つのコンポーネントにすることで、必要に応じて仮想環境上で利用できるのが特長。このvAppの仕組みについては、IBMやSAP、Novellなどとオープンスタンダート化を進めていると述べた。また、vCenter(旧:VirtualCenter)では、キャパシティ管理やアプリケーションの性能レベルなどを管理する新しい機能が追加されることを発表。また、vCenterパートナーソリューションなど業界全体での取り組みなども紹介された。
■ 企業内外で仮想環境を柔軟に利用できる「vCloud」
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企業内の仮想環境とサービスプロバイダが提供する仮想環境との間で連携。シームレスなコンピュータリソースを実現できる
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クラウドコンピューティングについてMaritz氏は、「自由にコンピュータリソースを利用できるようになるクラウドコンピューティングは、VMwareにとっても重要」とし、VMwareでも積極的に取り組む考えを示した。その具体的なものとして、vCloudイニシアチブを発表。vCloudは、企業内の仮想環境と企業外のデータセンターにある仮想環境を連携して利用するもので、リソースを柔軟に管理できるようになるのが特長。VDC-OSをベースにすることで、ビジネスニーズに応じてvAppでアプリケーションを導入したり、必要に応じてアプリケーションを拡張するということを、社内外のリソースを利用して実現できるとしている。このvCloudイニシアチブに賛同し、参加するサービスプロバイダは100社以上となっている。
■ シンクライアントの欠点を解消した「vClient」
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vClientを利用することで、ユーザーは同じデスクトップをさまざまなクライアント上で実行可能になる
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クライアント分野について、Maritz氏は、「サーバー分野や仮想化によりコスト削減を実現しているが、デスクトップに関しては不十分。シンクライアントがいいのか、シッククライアントがいいのか。また、モバイルは必要なのかそうでないのか。あるいは、WindowsなのかMacなのかといった問題が存在する。しかし、ユーザーの視点に立った場合、個人の情報をその人自身がコントロールできることこそが、デスクトップで重要なことではないか」と、ユーザー視点に立ったクライアント環境の構築が重要であると説明。
これに対する回答として発表したのがvClientになる。vClientは、同社のデスクトップ配信ソリューション「Virtual Desktop Infrastructure」の提供形態の一部となるもので、サーバー上で稼働している仮想マシンを画面転送だけでなく、クライアントPC上で仮想マシンそのものを動作させることができるのが特長。これにより、サーバー側で仮想マシンを管理しつつも、ユーザーに対してはPCの能力を生かしたデスクトップ環境を提供することが可能になる。また、クライアントPCのグラフィックカードの能力を利用して、3Dグラフィックなどにも対応できる。「シンクライアントでは不十分な人であっても、vClientを利用することで、クライアントPCのパワーを生かして仮想マシンを動作できる。今後は、iPhoneなどノンPCでも利用できるようにする予定」と述べた。
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vClientの利用例。仮想マシンをシンクライアントとしても利用可能
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USBキーにハイパーバイザを組み込むことで、さまざまな端末から仮想マシンを利用することも可能
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3D対応のグラフィックスを搭載しているクライアントPCであれば、仮想マシン上でも3D処理が可能
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■ URL
VMworld 2008
http://www.vmworld.com/
プレスリリース(英文)
http://www.vmware.com/company/news/releases/virtual_datacenter_os_vmworld08.html
http://www.vmware.com/company/news/releases/vcloud_vmworld08.html
http://www.vmware.com/company/news/releases/vclient_vmworld08.htm
( 福浦 一広 )
2008/09/17 07:30
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