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常務理事 アシュアランス本部長の植松一裕氏
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富士通株式会社は10月7日、「ソフト開発におけるものづくり革新」に関する記者説明会を開催した。2007年10月に発表された「設計の革新」「生産の革新」に続き、今回は「保守の革新」に関して、常務理事 アシュアランス本部長の植松一裕氏が説明した。
設計・生産の革新では、第三者レビューの義務化、独自の開発規模計測尺度「ファンクションスケール」の適用などで、設計品質の向上や開発の工業化などを進めてきた富士通。今回は、顧客に対する運用保守の革新を図る。
植松氏は「一般的に、システムの肥大化・複雑化などにより、IT投資額のおよそ70%が運用保守に費やされ、戦略的な新規投資には3割しか割けていないといわれる。今回の革新では、3つの“見える化”と改善施策により、この比率をせめて5:5に改善するのが目的」と、運用保守の革新における目標を説明。「具体的に3つの見える化とは、IT投資、現場、アプリケーション資産の見える化だ」とした。これらを富士通データセンターでの保守や、顧客企業内のIT部門が行う保守などに適用することで、保守の効率化を図っていく。
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ソフト開発におけるものづくり改革。今回はそのうち、保守の改革を説明
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この改革で、保守コストと新規のIT投資の比率を、5:5に近づける
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IT投資の見える化では、IT投資の案件を経営戦略やビジネス動向から客観的に評価し、ビジネス貢献度の高いものから優先的に実施できるようにするという。
具体的には、さまざまな案件を“ビジネス貢献度”と“技術実現度”を軸とした座標にプロットすることで、優先度を客観的に指標化する。これにより「ビジネス貢献度は高いが技術的実現度が低い案件は時期を再検討するなど、案件の強み・弱みを見える化することで、企画のブラッシュアップが図れる。案件の採否検討の期間も大幅に短縮され、より効果的なIT投資が行えるようになる」(植松氏)という。
現場の見える化では、運用保守の現場を人に着目した「人間系調査」や、問い合わせの「傾向分析」などを実施。人間系調査では例えば、業務中の離席・たち歩きが多い、紙が多いなど現状を観察し、どのように仕事がされているかを記録する。傾向分析では、特定の人からの問い合わせが多い、毎月決まった日にトラブルが発生するなどの現状を追求。これらにより、運用保守が滞ってしまう根本原因を究明するという。
アプリケーション資産の見える化では、稼働している資産、類似している処理を見える化し、また資産特性分析として、資産の複雑さを定量的に見える化する。こうして品質劣化している資産や複雑化の状況などが判明したら、それらに対して不要資産の整理・スリム化、品質指標の適正化、開発基準の見直しなどの改善施策を立案することで、品質が安定された理想の姿へ近づけていく。
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IT投資の見える化
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現場の見える化
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アプリケーション資産の見える化
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インパクトスケール
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IT投資の見える化事例
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特に、資産の複雑さを見える化する資産特性分析では、富士通が従来より提供しているアプリケーションポートフォリオマネージメントサービス(以下、APMサービス)」の「資産分析サービス」を強化し、同日より提供を開始する。
資産分析サービスは、アプリケーション構造の複雑さを見える化するもので、富士通研究所が開発した、アプリケーションを修正する際に与える影響の大きさを表す尺度「インパクトスケール」を採用したのが特長。「ソースコードを機械的に分析するだけで、複数のアプリケーションが連携することによる複雑さが、定量的に把握することが可能になる」(植松氏)という。
これにより、保守費用や期間などの見積もり精度の向上、および保守リソースの適切な配置が可能になる。富士通は、同サービスにより、顧客システムにおけるアプリケーション運用保守の品質向上に貢献していく方針。
なお事例として、200もの投資案件を精査しなければならず、案件の内容やIT投資の効果が見えにくくなっていたA社に対して、IT投資の見える化を行った例を紹介。「毎年約20名で200件の案件を精査していたが、全社レベルでの最適化検討の不足などにより、何から手を付けて良いか分からなくなっていたA社だが、わかりやすいチャートで各案件を整理することで、重要度が一目瞭然(りょうぜん)となった。これにより、案件の精査期間が約13週間から7週間と劇的に短縮できたほか、2カ月も早く新規案件のサービスインが可能になった」(同氏)としている。
【お詫びと訂正】初出時、植松氏のお名前を間違って記載しておりました。お詫びして訂正します。
■ URL
富士通株式会社
http://jp.fujitsu.com/
プレスリリース
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2008/10/7.html
■ 関連記事
・ 富士通、ソフト開発における「ものづくり革新」を説明-開発工業化への取り組みなど(2007/10/12)
( 川島 弘之 )
2008/10/07 17:43
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