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ディスコのウェハー精密切断装置にアンチウイルス導入、USB感染防止のため

産業用装置では初の事例

常務取締役 PS カンパニープレジデント 技術開発部長の関家一馬氏

ダイシングソー

ウェハーカッティングの様子
 株式会社ディスコは10月21日、自社製の産業用装置「ダイシングソー」にカスペルスキーのアンチウイルス製品を組み込むと発表した。

 同社は、半導体や電子部品製造に使用される精密加工装置、および装置に取り付けて使用するツールを提供するベンダ企業。中でも、ICチップの元となるシリコンウェハーをカッティングする「ダイシングソー」は、その高い加工精度からワールドワイドで70%超のシェアを持つという。

 昨今、こうした産業用装置でのウイルス感染が深刻化しており、何らかの製品を製造する段階でウイルスが混入してしまうケースが取りざたされている。「幸い、当社製品ではウイルス感染の事例はないが、他社の産業用装置では感染事例も報告されている」(常務取締役 PS カンパニープレジデント 技術開発部長の関家一馬氏)とのことで、ダイシングソーでも感染の可能性は存在するという。

 ダイシングソーには、精密加工を制御するリアルタイムOSのほかに、オペレーションやログ管理などを制御するためにWindows XP Embeddedが搭載されている。同OS上でログなどのデータをやり取りするために標準でUSBインターフェイスも備わっており、USBメモリを抜き差しするという行為は当たり前のように行われている。

 このUSBメモリを経由して、Windowsにウイルスが感染する可能性があるのだ。感染すれば、ウイルスによっては「画像処理ソフトが遅くなったり、止まったりするケースが考えられる」(同氏)。

 こうした事態を避けるため、「これまで当社のユーザーに対しては、USBメモリを使う際には、一度ウイルスチェックをしてから使うようお願いしていた」(同氏)。が、人に依存するこの対策には限界がある。精密加工装置が海外で使用される際に、USBメモリ経由でのウイルス感染が深刻化していることから、「産業用機器としては初めてアンチウイルス製品を組み込んで、標準オプションとして提供することにした」と関家氏は語る。

 ディスコは、ダイシングソーの標準オプションとしてアンチウイルス機能を提供する方針で、出荷時に搭載、顧客の要望に応じてリモートアクティベーションを行う。

 ダイシングソー上のアンチウイルスは、ダイシングソーのオペレーションコンソール上から操作が可能で、リアルタイム検知のほか、USBメモリなどが挿入された段階で検知することも可能。ウイルスが検知されれば自動で駆除や隔離を行い、非常時にはパトランプを点滅するなどの連携も図られている。

 通常、ダイシングソーはインターネットに接続された形では運用されない。ローカルネットワーク接続される例もあるが、インターネットからは完全に閉じた状態で利用されるのが通例だ。今回のアンチウイルス搭載は完全にUSBメモリからのウイルス感染防止を主眼としている。


 インターネットから切り離されているため、ウイルスパターンファイルの更新にはUSBメモリを使う。ディスコ内にカスペルスキーのアップデートサーバーと同期の取られたサーバーが用意され、ダイシングソーのユーザーに対してはUSBメモリを送付することでパターンファイルを配布するという。

 なお、Kasperskyの製品を選定した理由について関家氏は、「検知率、新種への対応、組み込みの実績などを評価した」ほか、「イレギュラーな話にもっとも快く応じてくれたのがカスペルスキーだったから」とした。


ダイシングソーに組み込まれたカスペルスキーのアンチウイルス製品 ウイルスチェック画面


URL
  株式会社ディスコ
  http://www.disco.co.jp/jp/
  プレスリリース
  http://www.disco.co.jp/jp/news/press/20081021.html


( 川島 弘之 )
2008/10/21 18:34

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