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ノーテルが100Gbps光伝送デモを初公開、コヒーレント技術で達成


デモの構成図

デモ風景
 ノーテルネットワークス株式会社(以下、ノーテル)は10月21日、シングルモード光ファイバーケーブル環境における100Gbps伝送デモを、報道関係者向けに公開した。100Gbpsソリューションは、高画質TV配信をはじめIPTV、第4世代携帯電話などの浸透に伴って、高速・大容量ネットワークトラフィックの増大が予測される中、キャリアサービス向けバックボーンネットワークの基幹技術に位置付けられるという。

 これまで、通信事業者などの高速環境は10Gbpsが主流で、ネットワークトラフィックに対しては波長多重のWDMなどを利用し、またデータ伝送高速化に対しては、信号速度の向上により対応していた。しかし、40Gbpsのような高速環境になると、信号速度の向上では、色分散や偏波分散などによるネットワークデザインの困難さや到達距離短縮、といった壁に直面せざるを得ないという。

 そこで、ノーテルでは6年ほど前から、40Gbps以上のような高速環境では発想を転換し、無線技術を応用してみようということにした。つまり、1つの信号(シンボル)上に複数データをのせる多値変調技術、また偏波面を利用して搬送路を増やす偏波多重技術を使うというわけだ。例えば偏波多重の場合、伝送する光の水平および垂直双方にデータ情報を持たせて同時に伝送すれば、データ情報量が2倍になるという。

 ただ光伝送の場合、無線とは異なり、193THzという高周波帯域で実現せねばならず、決して容易なことではない。これをノーテルでは、デジタルシグナルプロセシング技術などの改良により実現させた。そして2008年5月に40Gbpsを商用化し「Nortel Optical Multiservice Edge6500」に実装、すでに40Gbps環境は28社で導入されているという。100Gbpsもこの技術を土台としており2009年に投入する予定だ。100Gbpsになると、再生中継なしで最大1000kmまで伝送可能となる。

 なおデモでは、100Gbps用カードはプロトタイプを使用。意図的にPMD(Polarization Mode Dispersion)を最大120psに上げても、逆に一気にゼロにしても、あるいはファイバー周辺をたたいて衝撃を与えても、ビットエラーレートは変化せず、安定した100Gbps環境を実現可能なことなどを示した。ここで使用したファイバーケーブルは、もともとPMDの量が少ないので、PMDエミュレータにより値を調整したという。


100Gbpsのプロトタイプカード。2009年5月に投入予定で、10Gbps×10ポートになるという デジタルシグナルプロセッサ。上2つが10Gbps用で、下2つが40Gbps用 ビットエラーレートはたたいても変化しない

メトロ・イーサネット・ネットワーク R&D部門フェローのキム・ロバーツ氏
 メトロ・イーサネット・ネットワーク R&D部門フェローのキム・ロバーツ氏は「ノーテルの100Gbpsソリューションは、40Gbpsも含めて10Gbpsラインシステム上での完全互換性を維持しており、10Gbpsが4本、10Gbpsが10本の場合よりも安価に実現できることが強み」とアピールする。

 また、ノーテルでは6年前にこの技術を実現させたが、競合は偏波多重や多値変調など、コヒーレント技術によるこのソリューションには関心がなかった。「しかし半年くらい前から競合も取り組み始め、3~4年もすれば追い付いてくるのではないか」とロバーツ氏はみている。

 「100Gbps以降は2つの方向が想定される。1つは、現在の40Gbpsや100Gbpsを低価格、小型化、熱も少ないものをめざす方向。もう1つが、さらに200Gbpsや400Gbpsを目指すの方向だ。まだ実現のアイデアは明確ではないが、そこを目指し解明する取り組みは極めて興味深い。10年後にはコヒーレント技術で1000Gbpsのプロトタイプをお見せできるかもしれない」(ロバーツ氏)。



URL
  ノーテルネットワークス株式会社
  http://nortel.com/jp


( 真実井 宣崇 )
2008/10/22 08:59

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