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「NECの今後10年に大切なのはオープンイノベーション」-NEC矢野社長

C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2008基調講演

NEC、代表取締役 執行役員社長の矢野薫氏
 東京国際フォーラムで開催中の「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2008」にて11月11日、日本電気株式会社(以下、NEC) 代表取締役 執行役員社長の矢野薫氏が、「人と地球に優しい情報社会を目指して~お客さまとの共創によるビジネスイノベーション~」と題した基調講演を行った。

 昨今、高齢化、環境悪化、世界的不況と社会を取り巻く状況は厳しい。矢野社長は、そうした時代の変化の中にあって、企業が向かうべき方向性について説明を行い、「世界観は機械論から生命論へと移行し、技術はより小型化・分散化・多様化しており、人間の便利性ではなく、地球環境と共存できる持続的な発展が求められている。人が技術に合わせるのではなく、技術が人に合わせるようにしなくてはいけない」とした。

 その上で「世界状況は厳しいが、だからこそ企業は方向性を明確にすべきだ。ITをいかに課題克服に役立てられるかを考えなければならない。イノベーションというと技術革新の意味で使われることが多いが、実はもっと広い意味を含んでいる。例えば、異業種交流による創造もイノベーションの1つ。広い意味でイノベーションがとらえられれば、不況などは逆に次のステージに進むチャンスとなる」とし、オープンイノベーションの重要性を訴えた。

 具体的に企業が目指すべき方向性としては、「企業は人に優しく、地球に優しくあるべきだ」という。NECとしては、「銀行ATMや証明書自動交付など多くの製品でユニバーサルデザインを採用してきたほか、ITをより便利に活用できるよう、パーソナライズされた情報の提供などに努めてきた」と紹介。特にパーソナライズは、行動分析やデジタルサイネージなどにより、個々人の好みや状況に応じたサービスを提供することで便利さを実現することだと説明し、「ユビキタスは“いつでも、どこでも、誰にでも”を標ぼうしているが、本当に快適なサービスは“いまだけ、ここだけ、あなただけ”であることで実現するのではないか」と、発想の転換を行った。


 一方、地球へのやさしさ追求としては、1)環境に配慮したIT・ネットワークの実現、2)先進テクノロジーの活用によって貢献できるとする。

 NECのグリーンIT化としては、「REAL IT COOL PROJECT」という名で、2012年までにITプラットフォームの消費電力を年間50%削減する活動が進められている。それを後押しする省エネサーバー「ECO CENTER」なども開発された。しかしもちろん、こうしたITプラットフォームのグリーン化のほか、「環境法令の順守、グリーン調達、環境意識の向上など事業活動における環境負荷低減が必要となる」と矢野社長は語る。その上で「総合的にグリーン化を進めるため、先進テクノロジーをさまざまな分野に活用することが重要」と述べた。

 先進テクノロジーの例としては、省エネルギー評価システムなどが実現できる「無線センサーネットワーク」、自動車などに応用できる蓄電・駆動用途の「高性能リチウムイオン電池」を紹介。また、地球観測の予測・監視に貢献する観測衛星やセンサーシステムの構築にも貢献していると説明した。観測衛星の分野では、2008年度内に打ち上げ予定の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」でも、二酸化炭素などの濃度分布を高精度に観測できる温室効果ガス観測センサー「TANSO」の搭載など、NEC技術の利用が予定されている。


 こうした取り組みの下、実践で得た技術やノウハウ、製品、サービスを通じて「NECは人と地球に優しい企業活動を支援する」という。その上で「最近のNECは付け焼き刃で目先のことばかりを追いかけてしまったという認識がある。そうではなく、10年後の社会像を明確にし、長い目で不況を耐えその先を目指す企業になる」とした。

 またそのコミットメントとして、「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルリーディングカンパニー」という、10年先を見据えた「NECグループビジョン2017」を発表。そのビジョンについて矢野社長は「企業ビジョンは通常トップダウンで決められるものだが、このビジョンは当社の若手30人に作ってもらった。今後の10年を進む上で、若手にもう一度NECのこれまでの歴史を知ってもらい、ビジョンのためにそれぞれの職場で何ができるかを考えた。このビジョンを通して、人と地球に優しい社会を作っていきたい」と述べた。

 また、同ビジョンの基になるものとして「イノベーションへの情熱」「自助」「共創」「ベタープロダクツ・ベターサービス」の4点を同社のバリューとして定義。こうしたバリューやビジョンを基づいた企業理念を実現するため「昨年は現場力が重要と語ったが、さらに一歩進んで現場からイノベーションを起こすことが重要となっている。そのためにはNECとお客さまがイノベーションを共創していくことが必要だ」と、オープンイノベーションの重要性をあらためて強調した。



URL
  日本電気株式会社
  http://www.nec.co.jp/
  C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2008
  http://www.nec.co.jp/uf-iexpo/?cid=necbn005


( 川島 弘之 )
2008/11/11 15:48

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