Enterprise Watch
最新ニュース

マイクロソフトとファストサーチ、国内での協業体制を発表

共同でビジネスを推進、SharePoint ServerとFAST ESPの連携を推進

ファストサーチの代表取締役社長、徳末哲一氏

ファストサーチが提供する、エンタープライズサーチプラットフォーム
 マイクロソフト株式会社とファスト サーチ&トランスファ株式会社(以下、ファストサーチ)は11月12日、共同記者会見を開催し、エンタープライズサーチについての説明を行った。

 米Microsoftでは、エンタープライズサーチを手掛けるノルウェーの企業、Fast Search&Transferを4月に買収。その組織を自社へ統合し、製品間の連携強化にも取り組み始めている。具体的には、企業内の情報を管理するソリューションとしてニーズが高いSharePoint Server 2007上で、Fast Search&Transferの技術を活用し、検索機能の強化を図るという。

 こうした取り組みをマイクロソフトが進める背景には、企業活動を取り巻く情報が爆発的に増えるなかで、より有効に情報を活用したいというニーズが存在することが挙げられる。今日では、企業内での情報システムがサイロ化し、目的の情報へ容易にたどり着けない環境ができあがってしまっているところが多い。また、どういった情報を、どのくらいの重み付けで取り込めばいいか、といった点も考慮する必要があるし、構造化データと非構造化データを横断的に扱うことも求められてくる。

 ファストサーチの代表取締役社長、徳末哲一氏は、こうした点を踏まえて、1)データの取り込み、2)ユーザーによる検索の実施、3)ユーザーへの検索結果表示、の各段階において、GoogleやYahoo!などのインターネット検索とは異なる要件が求められてくるという点を指摘する。これを実現するために、同社のエンジン「FAST ESP」は、単にキーワードに関連した情報を収集するだけでなく、必要なものを抽出・分類し、ユーザーが望む形に作りかえることができる。また、取得したコンテンツを多用な確度から分類することで、本当に有用な情報として活用できるという。


 記者会見内で行われたデモでは、FAST ESPが採用されている「楽天市場」を例に、ファストサーチのアライアンス&プロダクトマーケティング ディレクター、三原茂氏が、具体例を示してその特徴を説明した。

 一般的に、検索といえばキーワード検索を思い浮かべることが多いが、三原氏は「実は、検索キーワードを入力するというのは、目的がはっきりとわかっていないとできないこと」という点を指摘。「こういうものが欲しい」とだけ漠然と思っている状態でも、商品カテゴリを選択していくだけで、2600万点を超える膨大なアイテム数を持つ楽天市場において、欲求にあったアイテムを迅速に見つけ出せることを実演してみせた。

 もちろん、キーワードを用いたand検索でアイテムを絞り込んでいくことは可能であり、多くのeコマースサイトはそうした機能を実装している。しかし、「キーワードは、目的がはっきりわかっていないと入力できない。例えば家を探す場合、場所までは思い浮かぶとしても、間取りや詳細まで、すべて思い浮かべられるだろうか」と三原氏が指摘するように、自発的なキーワード入力なしでも、エンドユーザーへ的確な情報を提示できるFAST ESPの機能は非常に有効に働く。加えて、キーワード分析でも、単純なキーワードのマッチングを行うだけでなく、動的なカテゴリ分析によって、利用者が欲している情報への到達度を向上させる機能も備えているため、検索が空振りに終わることが少ない。こうしたことから、導入後の売り上げ向上が見込め、導入効果も示しやすいという。

 また、カテゴリを1つ選択するたびに裏ではFAST ESPが絞り込みを行っているのだが、総アイテム数が2600万以上もある楽天市場では、その作業を行うだけでも、膨大なクエリが発生している。しかしFAST ESPは、「まったくエンドユーザーにストレスを感じさせずにこの作業を行える、圧倒的な性能を持つ」(三原氏)とのこと。こうした性能やコンバージョン率の向上などが総合的に評価され、カカクコム、ぐるなび、JAL、リクルートなどの、コンシューマ向けサイトでの導入が先行しているのが現状だ。

 しかし、企業でも社内の情報を的確に管理しようという動きが加速しているため、一般企業での採用事例も徐々に増えている。国内では例えば、東芝や、ソニー・モノ造り本部がFAST ESPを導入。社内の情報基盤として利用を始めているとのことで、マイクロソフトでは、SharePoint Server 2007とFAST ESPを組み合わせたソリューションで、こうした企業に価値を提供していきたいとした。


マイクロソフト 執行役常務 ビジネス&マーケティング担当 佐分利ユージン氏
 マイクロソフトとファストサーチでは、引き続きそれぞれの製品・サービスを国内で提供するが、現場レベルでは密な体制でコミュニケーションを取りながら顧客へ対応する考え。さらに、「最適なソリューションを提案できるように、当社のコンサルティングはファストサーチ製品も含めて提案できる体制にする」(マイクロソフト 執行役常務 ビジネス&マーケティング担当 佐分利ユージン氏)とのことで、共同でエンタープライズサーチのビジネスを推進する。

 なお、現在、SharePoint Server 2007とFAST ESPを連携させるためには、何らかのインテグレーション作業が発生するので、手軽に検索機能を強化するというところまでは至っていない。しかしマイクロソフトでは、次期SharePoint Serverから、FAST ESPとのシームレスに統合をサポートする予定で、開発を進めているとのことである。


今後のロードマップ 協業体制の概要


URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  ファスト サーチ&トランスファ株式会社
  http://www.fastsearch.co.jp/
  プレスリリース
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3578


( 石井 一志 )
2008/11/12 16:08

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.