マイクロソフト株式会社は11月18日、米Microsoft インターナショナル担当プレジデント シニアバイスプレジデント、ジャンフィリップ・クルトワ氏の来日に伴い、記者会見を開催。日本法人社長の樋口泰行氏とともに、記者からの質問に答えた。
クルトワ氏は記者会見の冒頭で、「テクノロジーは、景気後退期にどういった役割を担うのか、Microsoftは何ができるのか、とよく聞かれるが、当社ではユニークなテクノロジーとパートナー、人材を抱えており、世界中の顧客をサポートできる。コスト削減だけでなく、イノベーションを起こしていける力がある」とアピール。具体的なソリューションの例としては、サーバー仮想化、コミュニケーション、デスクトップオプティマイゼーションの3つを挙げた。
まずサーバー仮想化では、Hyper-Vによって、サーバーの稼働率を向上と、それによって運用コストやハードウェアコストを削減できる点を紹介。また、イメージ配信によるインフラ最適化を目指すデスクトップオプティマイゼーションでは、OSやアプリケーションの配信により、大きなコスト削減につながるという点をアピールしている。最後のコミュニケーションでは、「会社がそれぞれ持っている出張費、接待費をいかに削減するか」という観点から、Webカンファレンスやビデオ会議が力を発揮できると主張。Office Communication Server 2007などのソフトウェアを提供するほか、ビデオ会議システム「ラウンドテーブル」といったハードウェアを提供していることに触れ、「交通手段の利用を削減可能。NECパーソナルプロダクツでは、3000人の社員に導入し、人の行き交いのコスト削減につながった」と話した。
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米Microsoft インターナショナル担当プレジデント シニアバイスプレジデント、ジャンフィリップ・クルトワ氏
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このほかの一問一答は以下の通り。
―日本市場をどう見ているか?
クルトワ氏
日本は米国の次に大きなオペレーションをしている市場。PC市場は1~2%のゆるやかな成長率だろうが、これまでも何年もの間、Windows VistaやOfficeの技術を使用していただいており、それはこれからも続いていくだろう。
日本での、これからの成長のチャンスは、エンタープライズ市場だ。日本法人の社長には6カ月前に樋口氏が就任したが、彼は、高い質の製品とサービスを享受してもらうことに焦点を置いている。仮想化技術をどんどんコスト節減のために使っていただこうと思っているし、ユニファイド・コミュニケーションも利用してもらえるだろう。
また、企業としてソフトウェア+サービスの戦略を持っているが、Windows Azureの大きなチャンスが日本にもある。柔軟なサービスとアプリケーションを、パートナーや当社から直接、提供できる。グローバルでは、Exchange OnlineとSharePoint Onlineを発表したが、ここでも日本での成功のチャンスがあるのではないか。
―エンタープライズビジネスの割合はどの程度か?
クルトワ氏
全体のおおよそ1/3くらいだ。しかし当社の収入はその分野だけに依存しているのではなく、非常に幅広い形で、中小企業やコンシューマに対しても浸透している。グローバルな多様化したオペレーションを、新興国と先進国両方に持っているのと同じように、ビジネスセグメントに対しても多様化した形で製品とサービスを提供している。
―市況が悪く、投資見直しの動きがある中で、パートナー戦略が重要になる。Microsoftとしてどうメッセージを出していくか?
樋口氏
ROIの見方が非常に厳しくなるので、状況にあわせた球をきっちりストライクゾーンに投げていかないと、お客さまには響かない。当社よりもお客さまに近い位置にいるパートナーがますます重要になるだろう。投資が厳しくなっているということは、できるだけグローバル標準のものを使っていこうということであり、レガシーからオープン化して、初期投資、運用コストともに下げていくというニーズがある。パートナーも、当社に大変期待が寄せられており、それに応えるために、ともにいい提案をしていきたい。
クルトワ氏
仮想化技術のコストは、VMwareのおおよそ33%であり、CIOにとっては魅力ある数字だろう。またエネルギーの効率化では、グループポリシーを導入し一斉にPCシャットダウンを促すことで、デスクトップPCのエネルギー消費を平均37%削減可能。さらに、SQL Serverのライセンスを利用すると、エンタープライズが実装しているレガシーアプリケーションよりも、大幅に割安に展開できる。こうしたことから、日本の大手SIerも当社に絶大なる信頼を寄せていただいている。
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マイクロソフトの樋口泰行社長
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―ビジネスアプリケーションのDynamicsシリーズについてはどうか?
クルトワ氏
7~8年前から開始したビジネスだが、10億ドルの収入がある。成長率が一番高い技術製品であり、年率17%で伸びて、ほかの企業のシェアを奪っている形だ。また、ローエンドでも小規模企業に対して浸透しているし、アプリケーションがカスタム化され、世界のさまざまなパートナーを通して提供されている。このような形で日本でもビジネスが始まっていることをうれしく思う。
樋口氏
ローカリゼーションの問題があり欧米と比べて参入が遅れたので、まだまだこれからがんばらなくてはいけない分野だが、もともと母数が少ないこともあって、倍々のペースで伸びている。特に、Microsoft Officeとの連携やインターフェイスの面で高く評価されているし、パートナーの意気込みも大変強い。
また、今年後半から、CRMを中心にさらに盛り上がってきている。これまでは、海外の現地法人で先に採用して、それから本社で、というパターンが多かったのは確か。しかし、今では最初から本社に入れようという形が増えている。国産製品も多く、競争が激しい分野ではあるが、パートナーや顧客の期待は大きい。一方ERPは、日本の商慣習に対応するところをパートナーと作っていく段階にある。
―Microsoftにとってのクラウドの位置付けは?
クルトワ氏
ソフトウェア+サービス戦略を広範囲にわたって展開するが、少し前に、具体的にどのような形で提供するのかを発表した。これには、3つのレイヤがある。
まず基本レイヤでは、Windows Azureを発表した。いわばWindows Serverがクラウドの中にあり、バックエンドの機能をクラウドの中から提供すると考えればよい。2つ目のレイヤでは、アベイラビリティということで、エンタープライズと開発者向けのいくつかのサービスを発表した。ミドルウェアプラットフォームとしての提案ということで、ほかのミドルウェアプラットフォームと相互運用性を持ち、Python、Rubyといった言語とも互換性がある。
3つ目のレイヤは、ビジネス生産性を上げるためのオンラインスイート、またExchange OnlineやSharePoint Onlineなどがある。これらは今日からでもお使いいただけるもので、ビジョンだけでなく、現実問題、こうしたサービスセットが始まっている。こうしたことはIT業界にも大きなパラダイムシフトになるだろう。お客さまによってペースは違うだろうが、何らかの形でクラウドコンピューティングは使っていくようになるのではないか。
■ URL
マイクロソフト株式会社
http://www.microsoft.com/japan/
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( 石井 一志 )
2008/11/18 17:43
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