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UTMの進化形「XTM」でハイエンドエンタープライズ領域へ―ウォッチガード


米WatchGuard Technologies CEOのJoe Wang氏
 ウォッチガード・テクノロジー・ジャパン株式会社(以下、ウォッチガード)といえば、ファイアウォールベンダーとして幕を上げ、現在はUTM(統合脅威管理)製品を提供するセキュリティベンダーだ。昨今、コストパフォーマンスに優れるUTMが、中小企業などを中心にクローズアップされているが、ウォッチガードではさらにUTMを進化させ、XTM(eXtensible Threat Management)に基づく次なる製品ビジョンを描き始めている。

 XTMは、文字通り「拡張可能な脅威管理」の意であるが、ここにどんな戦略を込めるのか。米WatchGuard Technologies CEOのJoe Wang氏に話を聞いた。


―まず、あらためてUTMの価値はどこにあるのか。確認させてください。

Wang氏
 UTMは、特に中小企業などでニーズが高い、各種のセキュリティ機能を統合した製品です。中小企業では、今のところ大企業のようにセキュリティの投資が進んでいません。そうした際に個々のセキュリティソリューションをポイント的に積み上げていくのではコストが大きすぎる。また、積み上げられたポイントソリューションは運用が大変で、ここでも余計なコストがかかってしまいます。UTMは導入、運用、サポートのしやすいソリューションといえます。


―実際の市場の動向はいかがでしょうか?

Wang氏
 ワールドワイドでみてもUTMは高い成長率となっています。例えば、2006年から2011年の年平均成長率を見ると、単一FW/VPNはマイナス1%、IDS/IPSは13%であるのに対し、UTMは26.2%と高い推移を見せています。


―それと比べると、日本のUTM市場は遅れているような気がしますが?

Wang氏
 確かに他地域より遅れていますが、今後さらに伸びていくと推測されます。IDCのデータでも、2007年の国内UTM市場が137億ドル、2008年が182億ドルと実際に伸びています。


FireboxはOSI7層すべてを保護

インテリジェント・レイヤ・セキュリティという複層的な防御機構を持つ
―WatchGuardのUTMの特長は?

Wang氏
 他社よりも深いセキュリティを実現できる点です。例えば、多くのUTMが採用しているパケットフィルタリングはOSIの下位4層しか検知できません。一方、ウォッチガードのFireboxは、「アプリケーション・プロキシ・アーキテクチャ」を採用することで、OSI7層すべてにおいて通信を検知し、攻撃を防御することが可能です。

 また「見えるファイアウォール」というのも特長です。従来、ファイアウォールはいわばブラックボックスで、本当にネットワークが保護されているかは、技術者がログを見なければ判定できなかった。Fireboxではこの状況を改善するため、一連のセキュリティ機能、運用をリアルタイムにモニタリングし、ログ管理、レポーティングなどを一元的に行える「WatchGuard System Manager」というレポーティングツールを提供しています。

 他社製品の大半では、こうしたツールを追加モジュールとして高額なライセンス費用を必要となります。

 もう1つ言うならば、Fireboxはコストパフォーマンスに優れています。米国の第三者調査でもそれが証明されています。“パフォーマンス”はコストをかければいくらでもあげられますが、コストパフォーマンスはそうはいかない。こうした点がWatchGuardの強みだと思っています。


XTM製品としては、「WatchGuard XTM 1050」という大企業向けモデルが準備中
―先ごろ米国で発表された「XTM」とは何でしょう?

Wang氏
 次世代UTMに名付けられた言葉です。当社のXTMでは「ネットワーク」「セキュリティ」「マネジメント」の3領域で、UTM+αのパワーアップを図ったのが特徴です。


―具体的には?

Wang氏
 まずネットワークの部分では、さらなる高スループット、アクティブ・アクティブの運用、HA機能、クラスタリング機能などが追加されました。

 セキュリティの部分では、新たにSSL-VPN機能の搭載、HTTPS通信への対応、VoIP対応などがされています。HTTPS対応は、Webフィルタリングを活用している教育の場でニーズが大きい。XTMの第1世代の製品をすでにリリースしている米国では、特に学校での導入が進んでいます。

 マネジメントの部分では、より良いレポーティング、リアルタイム監視機能、コマンドラインインターフェイスなどが追加され、そのほかの管理ソフトと統合を果たしました。

 これらは、WatchGuardのユニークな特長だと自負しています。XTMを導入することでユーザーはより多機能のセキュリティを手にすることができ、より広範に環境を保護することが可能となります。一番のメリットはそこですね。


―XTMとなってターゲットが変わったりはするのでしょうか。また、今後UTMは使わずXTMというメッセージに統一するのでしょうか。

Wang氏
 ネットワーク機能の強化などによって、今より上の領域がターゲットとなります。ハイエンドエンタープライズ領域、といいましょうか。これまでもこの領域の企業にUTMを検討してもらえなかったわけではないですが、XTMによってもっと安心して導入できるようになるでしょう。

 ターゲットが違うので、UTMとXTMは今後も使い分けていく予定です。


―ウォッチガードとして、ハイエンドエンタープライズ領域へのソリューションとして不足は感じていたのですか?

Wang氏
 IT部門がしっかりとあるところでは、長年にわたって、個々のソリューションを導入してきた背景があります。そうしたところでは、UTMに統合するというニーズがなかなか選択肢になりにくい点が正直ありました。XTMでこうしたニーズによりフィットすると思います。


―UTM市場は今後伸びるとのお話でしたが、日本でウォッチガードのシェアを伸ばすための施策は?

Wang氏
 企業にUTMを導入してもらうためには、2つの機会があります。1つが、既存のファイアウォールからのアップグレード。これは世界的に見てもまだたくさんあります。もう1つが今、ポイントソリューションを使っている企業の乗り換え。当社としては、こうした企業にUTMへのアップグレードパスをしっかり提供することで、顧客獲得を狙っていきます。


―新規顧客へはどうされますか?

Wang氏
 その点に関しては、パートナー戦略を拡充することで対応していきます。当社は100%チャネル販売です。そこで新規顧客を獲得するために、“アクティブな”パートナーを増やしているところです。具体的にはパートナー候補に製品評価をしてもらい、そのサポートを北海道から沖縄までどこであろうと綿密に行います。これにより現状30社ほどのアクティブなパートナーを、2009年夏までには100社へ増加していくつもりです。


―XTM製品はいつ発表となりますか?

Wang氏
 日本では、2009年初旬を予定しています。先ほど述べたようにまずは大企業をターゲットに、1モデルを投入するつもりです。



URL
  ウォッチガード・テクノロジー・ジャパン株式会社
  http://www.watchguard.co.jp/

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( 川島 弘之 )
2008/11/26 10:58

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