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日本HP、旧Colubrisの無線LAN製品群を「ProCurve」へ統合

IEEE 802.11n対応製品も2009年初頭に発売

日本HP プロカーブ ネットワークビジネス本部 プリセールス テクニカル コンサルタントの的場晃久氏

HP ProCurve最適化無線LANアーキテクチャの概要
 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は11月26日、10月に米HPが買収を完了した米Colubris Networks(以下、Colubris)の32製品を、自社のネットワーク製品群「HP ProCurve」に統合すると発表した。また、日本HPでは初となるIEEE 802.11n対応無線LANアクセスポイント2製品も発表され、2009年2月後半より順次提供を開始する。

 旧Colubris製品の最大の特徴は、無線LANアーキテクチャの違いだ。一般に用いられることの多い、無線LANスイッチを使ったアーキテクチャでは、そこに機能を集約し、アクセスポイントは単なるアンテナとして機能していることがほとんどだ。しかし、そうした場合は、「スイッチに機能が集中しすぎて、トラフィックが必ずスイッチを経由する形になるため、そこがネットワークのボトルネックになってしまう」(日本HP プロカーブ ネットワークビジネス本部 プリセールス テクニカル コンサルタントの的場晃久氏)問題がある。特に、広帯域の無線LANであるIEEE 802.11nでは扱うトラフィックが格段に増え、アクセスポイントだけでなくスイッチのアップグレードも必要になる場合が多いという。

 しかし旧Colubris製品が採用している「HP ProCurve最適化無線LANアーキテクチャ」では、「アクセスポイントに機能を残し、クライアントのトラフィックは(無線LANスイッチに相当する)コントローラを経由しないようにしている。コントローラには管理のトラフィックしか流れて来ないことから、こうした問題が発生しない」(的場氏)のである。

 また機能面では、1)QoS、帯域幅、VLAN、セキュリティポリシーをSSIDにひも付けて配信する「複数サービス(仮想サービス)」機能、2)高速ローミング機能、3)ローカルメッシュ(動的WDS)機能も特徴的。1)は「SSIDを複数ブロードキャストする機能を発展させたもの」だが、SSIDを変えることで、ユーザーやグループ、アプリケーションごとに異なるポリシーを配信でき、xSPには非常に好評だという。

 2)は、サブネット内もしくはサブネット間での高速ローミングを実現する機能。近年主流となっている認証方式では、キーを生成するために認証サーバーと通信する必要があり、ここでオーバーヘッドが発生してしまうという問題がある。そこで旧Colubris製品では、ネットワークの認証情報をコントローラでキャッシュし、アクセスポイントと連携させる「キー・キャッシング」を利用することで、VoIPでも音声が途切れない、50ms以下の遅延でローミングを行える。

 3)は、アクセスポイント同士を無線LANでつなぐ機能。いわゆるメッシュ製品のように自動で通信先を発見してリンクを張れるほか、MACアドレスの登録作業なども必要ないため、有線のEthernetを利用できない環境でも、柔軟なネットワークを構築できるとした。


日本HP プロカーブ ネットワークビジネス本部 本部長の芝原房夫氏

新製品「HP ProCurve MSM422デュアルラジオ 802.11nアクセスポイント」のモックアップ
 Colubrisはこうした特徴が評価され、航空、鉄道、病院、製造業、xSPといった特定の業種・業態で非常に強い実績を持っているとのこと。HP ProCurve自体、Ethernetスイッチでは世界第2位のシェアを持っており、広く使われている製品ではあるが、この買収によって業種に特化したバーチカルなソリューションを提供できるようになるという。また、HP ProCurveの製品群へ統合されることにより、有線・無線を問わない広範なラインアップがそろうため、顧客やパートナーにとっての選択肢が大きく広がるとした。

 製品ラインアップの統合に伴い、管理面でも統合が図られる。まず第一段階としては、日本HPの管理ソフト「ProCurve Manager」が旧Colubris製品をサポートし、近日中に、機器の自動発見や限定的な管理などが可能になる。その後も継続的に機能強化を行い、最終的には、すべての設定・管理をProCurve Managerから実施できるようにする予定である。

 日本HP プロカーブ ネットワークビジネス本部 本部長の芝原房夫氏は、この統合の意義を「特定業種にフォーカスした、実績のあるColubrisの統合で、業種にあったソリューションを提供可能になった」と説明したほか、「Colubris日本法人時代は4社の一次店を持っていたが、これからは当社の40数社の一次店を通じ、IEEE 802.11n製品を中心に広く販売していく」との戦略を示している。

 なお、今回発表されたIEEE 802.11n製品は、小型アクセスポイント「HP ProCurve MSM410シングルラジオ 802.11nアクセスポイント」、デュアルラジオ対応のアクセスポイント「HP ProCurve MSM422デュアルラジオ 802.11nアクセスポイント」の2つ。いずれもIEEE 802.11n ドラフト 2.0に準拠し、最大300Mbpsの無線LAN通信が可能。後者はさらに、IEEE 802.11a/b/gにも対応する。またIEEE 802.3afに準拠し、規格の範囲内の電力で稼働するため、特に高出力のPoE給電製品を用意しなくても電力の供給を受けられる。価格はそれぞれ、9万9330円、15万2880円の予定である。



URL
  日本ヒューレット・パッカード株式会社
  http://www.hp.com/jp/
  ニュースリリース
  http://h50146.www5.hp.com/info/newsroom/pr/fy2009/fy09-013.html


( 石井 一志 )
2008/11/26 17:46

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