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マイクロソフトの樋口泰行社長(左)と青山学院の松澤建理事長
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学校法人青山学院とマイクロソフト株式会社は12月1日、学校経営力の強化、国際競争力のある人材の育成を目指し協業すると発表した。青山学院とマイクロソフトでは2007年に、高等教育機関向けのライセンスプログラム「キャンパスアグリーメント」に基づき、ライセンス使用契約を締結。教職員や在校生がマイクロソフトのソフトウェア製品を使用できる環境は整備されているというが、今回は新たな施策に基づいて4つのシステムを導入し、その効果をマイクロソフトと検証する。
現在の教育機関では、少子化が進む上で学生の確保が至上命令になっており、これは青山学院でも例外ではない。そのため同校では、21世紀の青山学院のあるべき姿を示す「アカデミック・グランドデザイン」を策定。それを下支えするインフラの整備に向けて、次期ICT戦略策定委員会を設置し、活動を行ってきた。
今回のマイクロソフトとの提携もその一部とのことで、青山学院 理事長の松澤建氏は、「マイクロソフトの先駆的なテクノロジーと品質向上の取り組み、また日本の教育環境の情報化にこれまで取り組んできた実績と経験が、本学のイノベーションを促進する上で重要な役割を果たすと確信している」との期待を表明。またマイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏も「教育機関では先生がばらばらにICTを導入するため、ITインフラについてはガバナンスやグローバル化が遅れているそうだが、その中で青山学院はリーダーシップ、ガバナンスを持って推進するということで、大変心強く思っている」とあいさつした。
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青山学院の常務理事、山口雅司氏
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Dynamics CRMによって、在校生・卒業生の情報管理や、継続的なリレーションを実現する
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具体的なシステムとしては、大きく4つに分けられる。まず1つ目としては、マイクロソフトの教育機関向けオンラインサービス「Live@edu with Exchange Labs」を、2009年4月より導入する。始めは、青山学院の教職員と青山学院大学の在校生、あわせて約3万人を対象とするが、順次、幼稚園、初等部、高等部、女子短期大学、大学院の在校生とその保護者へ拡大。さらには、オープンキャンパスの参加者や青山学院の卒業生によって組織されている「青山学院校友会」にまで拡大する計画で、最終的には15万人による活用を見込んでいるという。またゆくゆくは、海外の学校との交流にも活用したいとした。
次の2つ目としては、在校生のアカウント管理をActive Directory(AD)で一元化する。「毎年新たな入学生と卒業生が出るため、管理が煩雑」という、教育機関特有の問題を指摘した青山学院の常務理事、山口雅司氏は、「1つのシステムで管理することにより、IT管理者の負担軽減が見込める。一方、在学生にとってもログインが1回で済むメリットが提供できる」と、導入の意義を説明した。
3つ目の施策は、主に企業で活用されているCRM(顧客関係管理)システムの「Dynamics CRM」を導入すること。最初は、卒業生に対するコミュニケーションに利用するとのことで、例えば同窓会の管理や案内を、Dynamics CRMで一元的に行うとした。その後は、対象を在校生やオープンキャンパス参加者へ拡大する計画で、山口氏は「履修、成績、課外活動などの学生活動を包括的にカバーできる。また、卒業生や保護者への情報提供に用いれば、継続した関係強化が可能になる」と述べた。
最後の4つ目は、対象は青山学院大学と女子短期大学のシステム計3000台に、アプリケーション仮想化ソリューションの「Application Virtualization(App-V)」を導入すること。これによって、アプリケーションのシンプルな展開・導入・管理が可能になるほか、1台のPCで異なるバージョン、異なる言語のアプリケーションが使えることから、国際交流を促進する上でも効果があるとした。App-Vの導入は2009年4月より開始される予定である。
なおマイクロソフトの樋口社長によれば、15万人規模のLive@edu with Exchange Labs利用が実現すれば、ワールドワイドでも最大級の事例になるほか、3000台でのApp-V利用も国内最大級の事例とのこと。また、Dynamics CRMの教育機関での活用も初としたマイクロソフト 執行役常務の大井川和彦氏が、「こういう視点を青山学院が持って当社とシェアできたのは、市場の大きな変化」と述べたことに加え、樋口社長も、「これをスタートとして、民間企業で有効なシステムが学校経営でも一般的になるのではないかと考えている」とし、同社が持つソリューションの適用の幅が広がることについて、大きな期待を示している。
一方で、学校側にとっても、「きめ細やかな情報コミュニケーションとサービスで、競争力を強化できる」(大井川氏)メリットがあり、在校生の満足度向上やステークホルダーとの関係強化が図れることから、ICT導入の効果は非常に大きいとのこと。さらに、樋口社長が「管理者にとっての作業負荷の軽減につながる。これによって、学校本来のミッションである、学業、快適な学術環境の提供や国際交流といったものに全力投球できるのではないか」と話すように、ADによる一元的なユーザー管理と、Live@edu with Exchange Labs、App-Vによる集中管理などを活用し、管理面でのコスト削減効果も提供できるとした。青山学院の試算によれば、こうした新システムの導入により、管理コストが7割削減可能とのことである。
■ URL
学校法人青山学院
http://www.aoyamagakuin.jp/
マイクロソフト株式会社
http://www.microsoft.com/japan/
プレスリリース
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3590
( 石井 一志 )
2008/12/01 14:50
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