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NECフィールディング、補修用部品が常にある物流拠点「あるパーツ川崎」を公開


 NECフィールディング株式会社は、補修用部品の物流拠点である、神奈川県川崎市の「あるパーツ川崎」を公開した。

 同拠点は、補修用部品の調達、配備、補給、保管、供給までの業務を行う同社最大規模の部品物流拠点。また、全国の拠点から修理品の戻し入れ、回収などの業務も行っている。あるパーツ川崎の名称は、「常にパーツがある」ということから命名したものだという。

 同拠点の様子を紹介する。


部品の適正在庫、迅速供給を実現する拠点

NECフィールディングの「あるパーツ川崎」
 あるパーツ川崎は、JR川崎駅から車で約10分の場所にある。川崎競馬場に隣接する場所だ。

 敷地面積は1万3200平方メートル(約4000坪)。縦100メートル、横40メートル、高さ30メートルの5階建てビルを倉庫として使用。床面積は2万平方メートル、また、1フロアあたり2層構成になっているフロアもあり、延べ面積は3万平方メートルとなっている。従業員数は約200人。

 主な業務は、NECフィールディングがサービス・サポートに活用する補修用部品の調達、補給用部品のパッファー管理、全国サービス拠点への部品補給および顧客先への部品供給、修理品受け入れ、修理完了品受け入れなどの業務。一部近隣の顧客に対しては、同拠点から直接提供している場合もある。

 部品は、支社に併設した形で設置される全国16か所のパーツセンター(東西それぞれ8カ所)のほか、全国40カ所のパーツブランチ(東日本17カ所、西日本23カ所)と呼ばれる倉庫に配送。さらに、拠点機材倉庫を利用することで、全県をカバーし、顧客先まで2時間以内で対応できる迅速な部品供給体制を実現している。

 あるパーツ川崎は、それらの拠点に対して、部品の最適在庫、最適配備、最適物流を行う拠点というわけだ。


翌朝午前8時30分までに部品を補給

中山好永本部長

部品の入庫口の様子
 拠点で前日午後2時までに使用した部品は、翌朝午前8時30分に全国の倉庫への補給が可能で、関東のほか、東北、東海、関西などの全国の約65%にあたるエリアには、午後8時までに使用した部品が、翌朝午前8時30分には補給できる体制となっている。

 「当社の通常業務がスタートするのが午前8時30分。その時点では適正な数量の補修用部品在庫を、全国で取りそろえることができる体制となっている」(NECフィールディング ロジスティク本部・中山好永本部長)という。

 適正在庫の維持については、自社開発の配備支援システムを稼働し、必要な時に在庫がある確率を示す目標自給率のほか、稼働台数や実績故障率などの実績データ、実績故障率、過去モデルの稼働分布と見積もり故障率などの各種データを蓄積し、これらを分析して、最適配備数、最適バッファ数を予測し、適正在庫を確保している。

 また、地図ソフトを利用して、2時間以内に部品が供給できる保守部品配置プランを展開。現時点では、98%のサービス拠点に対して、2時間以内に部品を供給できるという。

 一方、あるパーツ川崎では、1日230パレット(1500箱)、5000件の部品が入荷。また、250パレット(1800箱)、6500件の部品を出荷。在庫されている部品は、13万4000種、180万点となっている。入荷量と出荷量が異なるのは、現場で利用しやすいように、あるパーツ川崎で一部部品を個装しなおすためだ。また、一部にはVMIによる部品もあるが、ほとんどが同社の資産として保管している部品になる。なお、部品の入庫から棚入れ、出庫指示、出庫、配送、回収、補給に至るまでの管理は、独自開発の在庫管理システムによって行われている。


入庫した部品は3つのラインに分けられる。ここは新品部品の受け入れ検査 ここでは個装して、入庫したり、直接配送される 拠点からの返却部品の受け入れ検査。精通した担当者が見極めて管理する

ベンダーから修理した戻ってきた部品の受け入れ検査ライン ハードディスクなどの振動に弱い部品は、専用の通い箱を用意して管理 マウスやキーボードなどの1日の出荷量が多いものはかんばん方式で在庫量を1カ月から4日間に短縮

パーツはすべてバーコードで管理
 また同社では、物流EDIの導入により、全国の拠点から部品の注文が発生すると、倉庫内に出荷指示を出し、出荷時刻を指定した作業指示が出る仕組みとなっている。

 部品はすべてバーコードで管理。3階に設置されている部品倉庫エリアにおいては、バーコードリーダー機能を持ったハンディターミナルを利用し、配送先ごとに指示された伝票と部品に貼られたそれぞれのバーコードを読み取りながら、正確な部品ピッキングを行う。情報はSS無線(館内全域無線LAN)によって、リアルタイムでのステータス管理が行われている。

 ピッキングを行う人は、社内では「ピッカー」あるいは「蔵出し者」と呼ばれている。従来は、部品エリアごとにピッキングを行い、そののちに配送先ごとに仕分けをしたが、現在の仕組みでは、ピッキング段階で配送先仕分けを可能にできることから、工程数を減らすとともに、作業時間の短縮にもつながっている。

 ピッキングされた部品は、配送先ごとに箱に入れられて、回収役となる「水すまし」がこれを回収し、出荷口となる1階に運ぶ。そこで出荷指示を行い、全国に翌朝午前8時30分に間に合うように出荷される。この時点で出荷情報が全国の拠点に通達され、現場では翌日のサービス業務の部品引き当てなども可能になる。


ピッキングを担当する通称ピッカーが、伝票と部品のバーコードをリーダーで読み込んで管理 ビッキングされた部品は、配送先ごとにまとめられ、回収役である「水すまし」が配送口に運ぶ 水すましが通る場所は専用道路になっており、水すまし以外は通れない

2階の部品倉庫の様子。手前によく出荷される部品を集中配置し、ビッカーの歩く距離を短縮 部品倉庫は、1フロア2層の仕様となっている ピッキングされた部品は配送先ごとに箱に詰められて出荷管理場へ

半分程度しか埋まっていない箱は、締め切り時間ぎりぎりまで保管され、追加発注分を詰めて配送する 航空便はここでコンテナに詰め込まれる。羽田空港まで30分の距離のため最終便のギリギリまで詰め込まれる

 さらに、物流EDIでは、輸配送業者との連携によって部品到着管理を行い、確実に部品が午前8時30分までに届いているかどうかを確認するといったところまで追いかけている。

 各倉庫拠点に配備された部品は、ロジステック本部の管理下にあり、現場のCEから部品手配指示が発生すると、ロジステックス本部を通じて、部品の引き当てが行われる。部品は、全国の倉庫サービス拠点部品在庫を検索。顧客に最も近い倉庫の状況を示し、そこから部品の手配を行う。また、手配後も、現時点で倉庫から顧客に配送されているかどうかというような、部品のステータス情報を確認できる。

 なお、CEの出動が伴う部品に関しては、平均15分以内に指示が行われ、それらの指示は、CEが活用しているiモードメールを通じて行われる。また、使用済みの部品の回収指示も、iモードメールから行われ、修理業務と連動する形で迅速に行われている。部品の修理業務などは神奈川県大和市に設置しているリペア本部管轄の大和テクノセンターとの連携によって行われている。


トヨタ生産方式の導入で4割のスペース削減

2年にわたるトヨタ生産方式への取り組みによって空いたスペース。新たな事業に活用される
 一方、同社では、2006年度末からトヨタ生産方式を導入。整理・整頓や作業の短縮化、シンプル化、作業の平準化に取り組み、ベルトコンベアによるコンテナ自動搬送ライン、配送先ごとの自動仕分けラインを撤去。部品保管スペースを2年間で約4割削減できたという。

 今後は、空きスペースを利用して、外部からの業務を受託するなど、新たな事業への進出にも積極的に乗り出す考えだ。

 あるパーツ川崎が所属するロジスティク本部では、棚卸資産管理、預資産管理などの保守部品管理、自営保守を行う販売店への保守部品の販売、サプライ品の受け入れ、保管、供給などのサプライ物流のほか、サービスパーツ保管管理および配送サービスを行うサービスパーツロジスティクスの受託業務も一部開始している。

 「サービスパーツロジスティク事業では、リアルタイム資産管理システムや社外ネットワーク接続環境の構築による高度なITマネジメント力、倉庫・物流セキュリティ管理の強化をはじめとする蓄積されたロジスティクス業務ノウハウ、BCP(事業継続性)に対応した堅ろうな倉庫づくり、24時間365日対応、外資系企業からの受託に対応できるグローバル体制構築といったロジスティクスネットワークの強化を、当社のコアコンピタンスとして強化し、訴求していきたい。改善活動によって、空いたスペースの有効活用も、新規事業の拡大を後押しすることになる」としている。

 同拠点では、将来的には、RFIDの活用に向けた検討も行っていく姿勢を示しており、すでに実証実験に参加するなどの取り組みも開始している。

 「だが、倉庫内利用だけで完了するのでは、あまり効果がないのも事実。RFIDが、より広く活用できるかどうかを見極めながら導入のタイミングを判断したい」としている。

 NECフィールディングにとって、プロアクティブメンテナンス事業は重要な柱であり、それを下支えしているのが、あるパーツ川崎だといえる。



URL
  NECフィールディング株式会社
  http://www.fielding.co.jp/


( 大河原 克行 )
2008/12/05 00:00

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