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サーバーベンダーも仮想化でサーバー数を削減-デルのエンタープライズ戦略を聞く


米Dell 日本/アジア太平洋地域(APJ)エンタープライズ事業統括バイスプレジデントのフィリップ A.ディビス氏
 米Dell 日本/アジア太平洋地域(APJ)エンタープライズ事業統括バイスプレジデントのフィリップ A.ディビス氏が来日し、日本およびアジア太平洋地区における同社のエンタープライズ事業戦略、仮想化への取り組みなどについて語った。

 ディビス氏は、「デルはエンタープライズ市場において、確かな実績をあげている。米国市場におけるサーバーの出荷台数はナンバーワンで、フォーチュン500の99%の企業が採用。ワールドワイドでも第2位の出荷実績となっている。さらに、インテル、マイクロソフト、オラクル、VMwareのナンバーワンパートナーであり、IP SANソリューションに関しては世界最大のプロバイダになっている」と、同社エンタープライズ事業の現況について語った。

 また、「CIOにとっての最大課題は、IT予算の70%を過去のIT資産のメンテナンスに支出しており、残りの30%しか新規システムの投資にまわせていない点。新規投資の30%の部分を縮小することを考えているCIOはいない。70%のメンテナンスコストをいかに縮小するかが課題であり、そのために新たな技術を利用したいと考えている」と語り、「仮想化は、その最大の取り組みといえる」とした。

 デルでは、世界最大規模のeコマースサイトのひとつであるdell.comにおいて、2万台のサーバーのうち、5000台のサーバーを仮想化。ハードウェアコストを50%削減した経緯がある。また、管理機能を活用して、デスクトップPCの運用コストを42%削減したという。


 「4分の3のサーバーで、プロセッサの使用率が20%以下となっていた。サーバー1台あたりの使用率を倍にすることで、効率的な運用が可能になった。世界第2位のサーバーメーカーが、サーバーの数を減らすことは矛盾しているかもしれないが、こうした自らの仮想化の経験がデルの強みになっている」という。

 また、ディビス氏は、「日本には、多くメインフレームが存在し、市場の特殊性を感じる。また、日本のユーザーは保守的であるとも感じている。だが、見方を変えれば、仮想化技術を活用することで、x86サーバーへの移行を推し進められるともいえる。仮想化によるシステム構築は、堅ろうであり、リスクを伴わないものであるという確約を、日本のユーザーに対して行っていく必要がある。その点では、デルは3つの観点から確約を提示できる。ひとつは、デル自身が5000台のサーバーを仮想化した実績がある点。来年の第1四半期には8000台以上のサーバーを仮想化することができ、社内で培ったベストプラクティスが提案できる。2つめは、デルは仮想化ツールであるVMwareの世界最大のベンダーであること、アジア太平洋地域および日本においてもその状況は同じ。この経験をもとに、さまざまな角度からユーザーを支援できる。そして、3つめにはインフラストラクチャ・コンサルティング・サービス(ICS)によってユーザーを支援できる体制を持っていること。当社のグローバル・サービス事業のトップである、上席副社長のスティーブ・シュッケッンブロックは、デルのCIOを兼務している。ユーザーの立場を理解しながら、サービスを提供する立場にある。これは、仮想化の進展にも大きな武器になるといえる」などとした。


サーバーのエネルギー効率を改善することでデータセンター全体の効率が改善

5000平方フィートあたりのデータセンターの生産性改善予測
 一方、ユーザー企業にとって、エネルギー効率化も大きな課題だとして、「現在、データセンターにおいては、サーバーおよびストレージに1ドルを投資した場合、冷却部分にも1ドルを投資していることになる。また、サーバーのエネルギー効率改善は、データセンター全体の効率改善に直結する」とし、「デルにとって、重要な取り組みのひとつが、エネルギー効率の高いサーバーを提供すること」とした。

 ディビス氏は、5000平方フィートあたりのデータセンターの生産性改善予測を示しながら、エネルギーの節約においては、ハードウェア入れ替えと仮想化の採用によって、3年半で6563MWh削減できるとしたほか、「コスト節約ではハードウェアの入れ替えだけで52万ドル、仮想化の採用で約250万ドル、両方をあわせると、相乗効果もあり、約350万ドルの削減が可能になる。1年あたり100万ドルのコスト削減ができる計算」とした。

 デル自身も5000台のサーバーを仮想化したことで、「電力消費の削減や、新たなサーバーの調達費用が不要になったことでのコスト削減、管理しやすい環境となったことでのコスト削減、シンプルに環境となったことでの効果もあり、2930万ドルのコスト削減効果をあげた」とした。

 「今後もこうした課題解決に向けてサーバー製品を供給し、よりシンプルに、より少ない消費電力で、より優れたパフォーマンス、より柔軟なシステムを実現する」と語る。


同社のストレージポートフォリオ

「集約」「統一化」「自動化」でストレージの効率化を支援
 一方、ストレージに関しては、「シンプル」「高い管理性能」「妥当な価格」という3つの重要要素があると前置きし、「シンプル性では、複雑な技術を誰でもが導入でき、管理できるように簡素化すること、また、高い管理性能では、高い性能の提供とともに、高いセキュリティ性や、コンプライアンスへの対応も重視したデータ管理が必要。そして、ストレージの費用がシステム全体の40%、あるいは3分の1を占めているということからもわかるように、もっとコストを引き下げて、顧客の要求に応えられる価格が必要となる。これまでは2つの要件を達成しても、残るひとつは我慢はしていたという傾向があった。デルはこれをすべて網羅できる」と自信を見せた。

 さらに、デルはストレージの効率化に向けて、「集約」「均一化」「自動化」の3つの観点から支援し、経済性を高めることができると語り、「ストレージでは、2~3つの異なったネットワーク技術が利用されている。SANはファイバチャネルで結ばれ、IP SANはEthernetといったように混在している。ネットワークを絞り込むことで、サポートの費用も減らすことができる。統合化された環境のなかでは、10Gigabit Ethernetは重要に技術のひとつであり、デルはここに力を注ぐ」とした。

 また、ディビス氏は、来年からアジア太平洋地区で試験導入が開始される、各種サービスをリモートで提供する「ITaaS」についても言及。「4社の企業を買収したことで、サービスを提供できるようになったもの。中小企業のように、社内にIT専門要員を配置できない企業でも利用できるもの。また、サービスは、モジュラー型で、ユーザーの環境にあわせて選択することが可能。メンテナンスコストが削減できるといったレベルのものではなく、メンテナンスコストをなくすことができるサービス」などとした。



URL
  デル株式会社
  http://www.dell.com/jp/


( 大河原 克行 )
2008/12/05 00:01

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