日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は1月15日、アジアのプレス関係者を集めた「ITモダナイゼーションフォーラム 2009」を開催。メインフレームからオープンシステムへの移行を支援する同社の取り組みについて説明した。
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HP APJ ビジネスクリティカルシステム担当セールスディレクター、Won Moo Kang氏
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「CIOやCFOにとって重大な課題は、特に経済危機が叫ばれる今、コストを削減しなくてはいけないというプレッシャーを受けていることだ」と切り出すのは、Hewlett-Packard(以下、HP) APJ ビジネスクリティカルシステム担当セールスディレクター、Won Moo Kang氏だ。IT投資が減らされる中で、コストの中で大きなウエイトを占めるTCOを削減すれば、その分を戦略的な投資に回すことができる。したがってこうした不況の中では、TCO削減は非常に重要になってくるのだという。また、競争に打ち勝つためには、ビジネスの変更を俊敏かつ柔軟に行えるかどうか、という点も重要な要素。これを支援するITにも、俊敏性と柔軟性が求められてくる。
しかしながら、Kang氏は、多くの企業にまだ残っているメインフレームでは、「柔軟性がなくコストが高い」という点を指摘。企業の中でも、レガシーシステムからオープンシステムへの移行を図る「レガシーモダナイゼーション」に対する関心が高まっているとの状況を説明する。
一口にメインフレームの移行といっても、そこには多くの方法論や段階が存在するが、HPでは、すでに20年前からレガシーモダナイゼーションに取り組んでおり、さまざまなノウハウを蓄積。顧客の移行作業をトータルに支援する体制を整えているという。例えば、オープンシステムへの移行に際してつきまとうリスクの問題でも、Kang氏は「リスクをどうするかをお客さまは常に心配しているが、さまざまなプロジェクトを通して常に学習し、リスクを軽減することを学んできた」と述べ、安定した体制を提供できると強調する。
そして具体例としては、ワークショップを開催してユーザー企業の理解度を高める支援をするほか、プルーフオブコンセプト(概念実証)を行って移行後のスケーラビリティや性能、信頼性などを事前に検証すると説明。また財務的・業務的な要件からプロセスを分析した上で、それぞれの機能とプロセスを関連付けて、数年後のITがあるべき姿を描き、そこに向けて作業を行っていくとする。
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日本HP ESS 営業統括本部の北元智史氏
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また日本HP ESS 営業統括本部の北元智史氏も、国内の状況として、「独自仕様として企業に残っているメインフレームが、生産性や俊敏性において大きな課題になっている」点を指摘。オープン化によってこれを解決できるという点を強調する。加えて、いわゆる2007年問題に代表されるメインフレーム技術者の人材不足も、今後課題として浮上してくるという。
さらに、「レガシーはベンダー独自のシステムであるかゆえに競争原理が働いておらず、コストが高止まりしている」点を問題視する。これを解決するために、日本HPでは移行のアセスメントサービスを提供することで、「ブラックボックス化しているシステムを少しでも透明化し、結果をオープンに比較していくことを可能にする」(北元氏)とした。北元氏によれば、2009年度はすでに2カ月半で4件のアセスメントを終え、さらに4件を進行中とのことで、今後はさらに、同時に30件のアセスメントが可能な体制を整えるとともに、メインフレームモダナイゼーションの中でも、特にコストダウンのメリットに絞って、積極的に顧客へアプローチしていくとの考えを示している。
なおHPでは、Itaniumベースの「HP Integrity Superdome」「HP Integrity NonStopサーバ」といったハードウェアにとどまらず、レガシーモダナイゼーションにかかわるさまざまな製品、ソリューションを提供しているが、このイベントではその際に活用する技術についても紹介を行った。
その1つに、仮想化・自動化技術を組み合わせてCPUリソースプールを作り、使いたい場合にそこからオンデマンドでリソースを取り出せる「HP Virtual Server Environment(VSE)」がある。VSEでは、必要に応じてリソースを割り当て、必要がなくなったら変換する、といったリソースの循環により、全体の効率を高めることができる。
日本HP ESS プリセールス統括本部 ソリューションアーキテクトの山根正士氏は、「オープンシステムでは全体最適の視点でインフラ構築をする必要があり、複数のワークロードをどのように管理するか、集約されたシステムの可用性とビジネス継続製をどう実現するか、といった問題が生じる。自動化と仮想化を組み合わせた最適なシステムによって、メインフレームから安心して移行できる環境を提供可能だ」と説明し、VSEの価値をアピールした。
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負荷が少ない場合は、各仮想システムが割り当てられたCPU数で動作している
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負荷が高まってくると、自動的に高負荷のシステムに対して、負荷が軽いシステムからCPUリソースが割り当てられる仕組みだ
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「HPのメインフレームモダナイゼーションはすでに成功していることが証明済みで、プロジェクト全体の支援が可能。メインフレーム同等の高いサービス品質を提供できる。インフラとアプリケーションの近代化で、TCOの削減を実現し、よりよいITイノベーション投資を可能にしている」(Kang氏)。
■ URL
日本ヒューレット・パッカード株式会社
http://www.hp.com/jp/
( 石井 一志 )
2009/01/15 17:42
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