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世界シェア1位のデルに聞く、ワークステーションの存在意義


 PCの高性能化に伴い、ワークステーションを選択しなければならない理由が不鮮明になっている印象を持つ読者も多いだろう。これに対し、世界ナンバーワンのワークステーションベンダーであるデルは、「PCとワークステーションは設計段階から異なるもの」と、ワークステーションの必要性を強調する。今回、来日した米DellのPrecision事業マーケティング・ディレクターのアントニオ・ジュリオ氏に、ワークステーションの現状について話を伺った。


米Dell、Precision事業マーケティング・ディレクターのアントニオ・ジュリオ氏
―PCのスペックが向上した結果、ワークステーションの位置づけが相対的に弱まっているようにおもいます。ワークステーションの存在意義はどのようになっていますか?

ジュリオ氏
 確かにデスクトップPCの性能が向上し、ワークステーションと大差ないくらいになっているようにおもわれるでしょう。しかし、PCとワークステーションではさまざまな違いが存在します。

 たとえば、PCは具体的な顧客像を念頭に置かず、一般的な製品として設計されています。また、一般的なPCは、CADソフトなどのベンダーから公認されていません。そのほか、エラー訂正機能のないメモリを使用していたり、グラフィックスカード、ハードウェア、ドライバなど、必ずしも安定性の高いものが使われているとは限らないのが、一般的なPCといっていいでしょう。

 これに対して、ワークステーションは、システムの設計段階からワークステーションとして使われることを前提としています。使われている部品も、ECCメモリを採用したり、安定性の高いドライバやグラフィックスカードを採用しています。

 ソフトウェアの動作に関しても、デルと各ソフトウェアパートナーでシステム全体の動作テストを行うことで、ソフトウェアパートナーの認定を受けているのが最大の違いです。


―つまり、ソフトウェアの正式認定を受けたものがワークステーションということですか?

ジュリオ氏
 そのとおりです。各業務で使われる専用ソフトウェアが正しく動作することを保証しているのがワークステーションです。もちろん、処理性能の高さもワークステーションが選ばれる理由のひとつです。また、サービスとサポートも重要です。ハイエンドプロジェクトにおいて、ダウンタイムが発生することは問題です。正しい技術サポートが得られるというのは選択する上で重要となります。


―ワークステーションが使われているのは、どのような分野でしょうか。

ジュリオ氏
 ソフトウェアの分野で分けると、CADやCAE、CAM、EDAといったエンジニアリングでの利用が40%を占めています。そのほか、3Dアニメや動画といったメディアでの利用が15%、石油ガスといった化学系で10~12%、建築工学で10%、医療系で10%といった感じです。そのほか、ゲームなどソフトウェア開発といった分野での利用も増えています。金融分野でも予測動向の分析などで使われていましたが、現在は厳しいですね。


―これらの分野で使われているソフトウェアから正式認定を受けているわけですね。

ジュリオ氏
 そうです。38のパートナー、88のアプリケーションの認定を受けています。認定の際、最新のアプリケーションをハードウェアプラットフォームおよびグラフィックスコントローラの組み合わせで正しく動作するかどうか、包括的なテストを行っています。この作業はデルだけでなく各社とともに行っており、ドライバの問題やアプリケーション側の問題を解決しています。


Precision M6400
―デルのワークステーションのラインアップを見ると、デスクトップやラップトップのほか、ラックマウント型まで用意していますね。

ジュリオ氏
 さまざまなニーズに対応できるポートフォリオになっています。もちろん、ただそろえているだけでなく、イノベーションと差別化を重要視して開発しています。

 例えばモバイルワークステーションのPrecision M6400の場合、デスクトップ並みの性能を実現するのはもちろん、インターフェイスを背面ではなく側面に配置したデザイン、アルミ製シャーシといった工夫をしています。また、メモリは最大16GB、HDDも2台搭載しています。NVIDIA Quadro FX3700M/FX2700Mといった高いパフォーマンスを実現するグラフィックスカードを搭載したほか、液晶ディスプレイ部分に全面ガラスを採用することで高解像度にも対応しています。


―ワークステーションの分野でもラップトップタイプが主流になりつつあるのでしょうか?

ジュリオ氏
 そうとはいえません。ワークステーションを求めるユーザーは、その時点で最高の性能を求めていますので、やはりデスクトップのワークステーションが選ばれますね。

 モバイルワークステーションは、設置スペースの小ささで選ばれたり、持ち運びが可能である点を評価して選ばれていますね。


―自宅に持ち帰ってまで、ワークステーションで仕事をするのは考えたくないですね(笑)。

ジュリオ氏
 客先でのプレゼンテーションで利用したりといった使い方が多いようですね。自宅に持ち帰って作業をされている方もいるようですよ(笑)。


―昨年後半から経済状況が急速に悪化しています。ワークステーションの販売にも影響はありますか?

ジュリオ氏
 先ほども触れましたが、金融分野は大きく低速化していますね。また、自動車メーカーなども購入遅延が発生しており影響を受けています。ワークステーションも景気の影響を大きく受けますね。

 厳しい現状ですが、企業としては投資を継続しなければ、次の時代のユーザーのニーズに応えることはできません。ワークステーションに対するニーズは今後も変わることはないでしょう。

 デルのワークステーションは、2000年以来、9年連続で出荷台数で世界1位となっています。世界市場でのシェアも47%を超えるなど、多くのユーザーの支持を得ています。われわれとしても、引き続きニーズに応える製品を提供していくことが大事だと考えています。


―ありがとうございました。



URL
  デル株式会社
  http://www.dell.com/jp/


( 福浦 一広 )
2009/01/23 11:30

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