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マイクロソフト、クラウドOS「Windows Azure」を国内でお披露目

Microsoft Tech Days 2009キーノート

執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏

大規模データセンター向けクラウドOS「Windows Azure」

Windows Azureのメリット
 マイクロソフト株式会社は1月27日・28日の両日、ソフトウェア開発者向けのカンファレンス「Microsoft Tech Days 2009」を開催。初日のキーノートでは、先日発表されたWindows Azureなど同社のクラウドコンピューティング戦略が紹介された。

 クラウドコンピューティングについて、同社執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏は、「ITの中でクラウドは大きな流れとなっており、マイクロソフトもこれを否定することはできない」と、クラウド化が必然の流れであると説明する。しかし、大場氏はクラウドが抱える問題も紹介する。「企業内ITにとって、情報投資の経費化や開発効率の向上は検討できるが、基幹系まで置き換えていいのかといった声がある。また、ISVにとっては、SaaS化によりリーチは広がるものの、すべてサービス化できるのか、また開発者を再教育しなくてはいけないのかといった不安もある。クラウドは魅力的な選択肢ではあるが、万能ではない」と、クラウドが万能ではないと述べた。

 こうした不安を解決するものとして、同社が提唱するソフトウェア+サービスを紹介。「既存資産やスキルを有効に活用しながらも、クラウドが持つ柔軟性や拡張性を利用できる。ソフトウェア+サービスは今後、重要な考え方になるだろう」と、企業やISVが抱える既存資産やスキルが生かせるソフトウェア+サービスが次世代クラウドに有効であるとした。

 このソフトウェア+サービスを実現する次世代クラウドプラットフォームが昨年10月に発表された「Windows Azure」だ。Windows Azureは大規模データセンター向けのクラウドOSで、クラウドだけでなくオンプレミスのアプリケーションとも統合して利用できるのが特長となっている。同社では安定したクラウド環境を提供できるよう、データセンターへの投資を継続しており、毎月1万サーバーのペースで増強しているという。

 「現在、ホスティング環境からサービスを利用する形態があるが、柔軟な運用という面では不十分。Windows AzureおよびAzure Services Platformにより、開発者に対して柔軟な環境を提供する」と述べた。


 デモンストレーションでは、Windows Azure対応アプリケーションの開発手順を紹介。これまで使っていたVisual Studio上で手軽に開発できる点を強調した。


デモンストレーションでは、テキストボックスに名前を入れると「Hello, Azure!」と表示されるアプリケーションの開発方法を紹介 使い慣れたVisual Studioを用いてAzure対応アプリケーションの開発が可能 クラウドアプリケーションをローカルで開発できるよう、Development StorageとDevelopment Fabricを用意。これらによりクラウドと同じ実行環境をローカルに構築できる

Visual Studioから発行を選択すると、Azureのポータルが起動 ログインするとアプリケーション配置用のボックスが表示される。右がStaging(テスト用)、左がProduction(本番環境)。開発したアプリケーションは、StagingのDeployから配置する Visual Studioで作られるビルド結果のパッケージファイルとサービスのコンフィグレーションファイルを指定してDeployを実行

アプリケーションの配置が終わって、Productionに移すと公開状態になる 用意されたURLにアクセスすると開発したアプリケーションが起動する。もちろん、開発時と同じように動作する

 キーノートには、Windows Azure上で稼働するアプリケーションを開発した株式会社JTB情報システム 取締役副社長の北上真一氏も出席。旅行写真の編集・蓄積サイト「Toripoto」をWindows Azureで稼働するサイトとして構築した事例が発表された。


Toripoto。旅行写真を自由に配置したり、コメントをつけたりできる Toripotoのシステム構成。Live IDを使って認証し、SilverlightでUIが作られている

エンタープライズからコンシューマまでサポートするWindows Azure
 「Azureは、コンシューマ向けアプリケーションから基幹系・業務系アプリケーションまで、一つのアーキテクチャでシームレスにサポートできる。また一つ一つのテクノロジーは、すでに実績のあるテクノロジーであり、開発者にとっては容易にアクセスできる環境を用意しているのがAzureになる。今まで使ってきたツールやノウハウをそのまま生かして利用できるアプリケーションプラットフォームであり、ぜひAzureの技術評価を行っていただきたい」と述べた。

 現在、開発者向けCTP(Community Technology Preview)として公開されているWindows Azureだが、2009年中旬にCTPアップデートが行われる予定。このCTPアップデートの段階で、CTPの展開範囲の拡大、インフラの拡張、そして商用サービス時の価格やSLAが発表されるとしている。なお商用展開に関しては、CTPからのフィードバックを反映したあとと説明。大場氏は、「日本での商用サービスは、1年から1年半後というスパンで予定している」と述べた。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  Microsoft Tech Days 2009
  http://www.microsoft.com/japan/events/techdays/default.mspx


( 福浦 一広 )
2009/01/27 15:58

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