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キヤノンMJ、大幅修正した中期経営計画を発表-ITソリューション事業を重点分野に


 キヤノンマーケティングジャパン株式会社(キヤノンMJ)は1月28日、2011年を最終年度とする中期経営計画を発表した。

 2011年度の連結売上高は9200億円、営業利益は320億円、経常利益は340億円、純利益は170億円を見込む。

 同社では、毎年中期経営計画の見直しを行っているが、前年の中期経営計画では、2010年度に1兆200億円の売り上げ達成を見込んでいた。今回の中期経営計画では、2010年度の計画として、8400億円の売上高としており、大幅に下方修正したことになる。

 村瀬治男社長は、「2007年水準に戻すことが第一義。胸を張って、これがわれわれの中期計画であるとは言いにくいものとなっている。だが、このような環境下でも縮み志向に陥ることなく、次なる飛躍に備えて経営基盤の強化を追求していく。生産性向上を図り、無駄の排除を行うことに取り組んでいく」とした。

 同社では、今回の中期経営計画において、「顧客満足度、主要商品シェアNo.1の実現」、ITソリューション事業売り上げ3000億円計画を目指す「ITS3000計画の推進」、「事業の競争力強化と次世代事業の確立」、「グループ連結経営の品質向上」を重点戦略に掲げた。

 顧客満足度、主要商品シェアNo.1の実現においては、ITを最大に活用したマーケティング力の強化を掲げ、新システムを戦略的に活用。2008年度から導入を開始したセールスフォースによるCRMシステムの適用範囲の拡大、2009年5月から導入予定である保守サービスの効率化支援、顧客管理、契約、売り掛けなどの一元管理を行う新サービスシステム、9月から導入予定の新受注・物流システムの稼働による受注受付および納品の夜間、休日への拡大などに取り組む。

 「投資金額は5年間で100億円強。投資額を除いた効果は200億円。作業効率の向上、コスト削減が可能になる」という。


 また、各事業の特性にあった顧客対応を図る姿勢を打ち出し、ビジネスソリューション事業においては、新システムの活用による効率化や、コールセンターのグループ一元化を実現する一方、コンシューマ事業では修理窓口の充実のほか、修理品の即日引き取りおよびヤマト運輸営業所持ち込みサービスの充実による「はやメンテ」への取り組みに反映できるとしている。また、産業機器事業においても、提案型総合サポート体制の確立が可能になるとしている。

 最重点領域であるITソリューションにおいて推進する「ITS3000計画」では、ITソリューション市場でのブランド確立を目指す。SIビジネスではプライムビジネスの推進、コンサルティングビジネスの早期事業化を推進。組み込みソフトビジネスではキヤノン向け製品への組み込み分野の拡大、車載関連などの成長分野へのシフト、基盤ビジネスではキヤノンITソリューションズへのグループリソースの集約と営業力の強化。ソリューションビジネスでは基幹系、生産管理系、セキュリティ、ドキュメントなどの注力領域の強化を推進し、アウトソーシングビジネスでは運用サービス事業やIDC事業の拡大、SaaS基盤の立ち上げを実行する。また、ITプロダクトでは損益重視の戦略へとシフトする姿勢を見せた。

 「ITS3000計画推進のための重点施策としては、キヤノンネットワークコミュニケシーョンズと1月に合併した、新生キヤノンITソリューションズにおける統合シナジー効果の早期創出を目指し、開発、販売、運用、保守までのシステムのライフサイクル全般を提供できる体制を確立し、24時間365日の監視体制、データセンター事業、ITアウトソーシング事業の拡大に取り組む。また、グループ各社の連携強化による営業力向上、オフショア拠点の活用による開発競争力向上、M&A、アライアンスの継続的な推進を行う」とした。

 事業の競争力強化と次世代事業の確立では、ドキュメントビジネスにおいては、2009年度に投入予定の新世代MFPの円滑な市場導入と販売サポート体制の整備、デジタル商業印刷ビジネスの拡大、保守サービス事業の変革によるコスト競争力の向上、パートナーとの協業による地域重点顧客の開拓と関係強化を実行。コンシューマ機器では、従来の製品ごとの体制から顧客、販売チャネルの動きにあわせた体制へとシフト。家電・カメラ量販店を担当するNA(National Account)販売事業部、全国卸店、通販チャネル、一般カメラ店を担当するRA(Regional Account)販売事業部を新設することで営業力を向上、ホームプリントビジネスの拡大、新フォトプリントビジネスの確立に取り組む。また、産業機器では、キヤノン製品と輸入製品によるソリューションの提供、医療機器のラインアップ拡充と関連ソリューションの提供に取り組む考えを示した。


 一方、グループ連結経営の品質向上では、グループ各社の役割分担の明確とともに、経営品質向上プログラムを活用したマネジメント体系の整備と強化、内部統制の一層の充実、BCP(事業継続計画)の構築、プロフェッショナルな人材の育成、キヤノンビジネスサポートを核としたグループシェアードサービスの推進をあげた。

 また、CSR活動の推進ではISMS認証取得を現在の6社から2011年には連結全社に拡大。Pマーク認定取得は15社から国内連結会社全社に展開。2008年のCO2の売上高原単位5%削減を、2010年度には10%削減に引き上げる。

 「日本郵政との連携による里帰りプロジェクト、ベルマーク運動などによるトナーカートリッジの回収、トナーの回収制度への取り組み、モーダルシフトなどを通じて、マーケティング企業グループとしての環境問題への取り組みを加速する」(村瀬社長)とした。


 一方、同社では、2008年度(1~12月)の連結業績を1月27日に発表した。

 売上高は前期比8.6%減の8274億8600万円、営業利益は同31.1%減の254億1500万円、経常利益は同29.7%減の259億4300万円、当期純利益は同44.2%減の111億8500万円となった。

 景気悪化の影響を受け、デジタル一眼レフカメラなどの売り上げが増加したものの、半導体露光装置などの売り上げが減少。また、投資有価証券評価損や会計処理の変更による過年度永年勤続慰労引当金繰入額の計上などにより特別損失が増加したため、大幅な最終減益となった。

 「5期連続で続けてきた増収増益、過去最高記録の更新は、いったん途切れた」(村瀬治男社長)、「売り上げ、利益ともに、10月公表値を達成できなかった」(川崎正己専務取締役)。

 ビジネスソリューション事業の売上高は前期比4%減の4960億円、営業利益は、同22.1%減の134億円。そのうち、ドキュメントビジネスの売上高は同5%減の3295億円、ITソリューションは同3%減の1665億円。

 コンシューマ機器事業の売上高は前期比7%減の2658億円、営業利益は、同29.2%減の102億円。産業機器事業は売上高は同37%減の657億円、営業利益は同66.0%減の18億円。

 なお、2009年度の連結業績見通しは、売上高は、前期比1.6%減の8140億円、営業利益は同17.3%減の210億円、経常利益は同11.2%減の230億円、当期純利益は同10.7%減の100億円とした。

 ビジネスソリューション事業の売上高見通しは前期比0.2%減の4950億円、営業利益は同10.4%減の120億円。ドキュメントビジネスの売上高は同2.1%減の3225億円、ITソリューションは同3.6%増の1725億円。

 ドキュメントビジネスでは、ソリューション提案の展開などによりオフィスMFPやレーザープリンタの需要開拓、プロダクションMFPのラインアップの充実にも取り組むが、企業の設備投資の抑制などにより、モノクロオフィスMFPの需要低迷、保守サービス分野での価格競争の継続が見込まれるのが懸念材料とした。また、ITソリューションでは、投資案件が先送りされるといった先行き懸念があるものの、SIビジネスや基盤・運用保守ビジネスなどのソリューション提供を強化し、売り上げの拡大を図るという。

 コンシューマ機器事業では、売上高が前期比2.0%増の2710億円、営業利益は同18.6%減の83億円。

 デジタル一眼レフカメラにおいて、入門機から上級機までの積極的なマーケティング活動を行うほか、コンパクトデジタルカメラは、競争激化のなかで、引き続きシェアNo.1の維持に取り組むという。さらに、デジタルビデオカメラは「iVIS」シリーズを中心に、前年を上回る販売台数を見込む。インクジェットプリンタは、カートリッジなどの消耗品も含め堅調に推移するとしている。

 産業機器事業は、売上高は前期比26.9%減の480億円、営業利益は同61.1%減の7億円を見込む。

 半導体露光装置の販売台数の減少を見込む一方、医療機器はデジタルラジオグラフィや眼科機器を中心に、放送機器は放送用テレビレンズを中心に、それぞれ堅調な売り上げの伸びを見込むという。



URL
  キヤノンマーケティングジャパン株式会社
  http://canon.jp/
  決算短信
  http://cweb.canon.jp/co-profile/ir/library/result.html


( 大河原 克行 )
2009/01/28 16:01

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