「仮想化という言葉を意識することなく、企業システムに仮想化環境を導入していただくことが狙い。仮想化のすそ野を広げていきたい」、そう語るのは株式会社大塚商会マーケティング本部テクニカルプロモーション部サーバ・シンクライアントプロモーショングループ課長の中本明彦氏。同社は、日本電気株式会社(以下、NEC)、マイクロソフト株式会社と協力し、導入後すぐに仮想化環境が利用できる「1台2役サーバパック」を3月より販売する。
今回、2月4日から6日まで開催している同社のプライベートイベント「大塚商会実践ソリューションフェア2009」会場において、中本氏のほか、NECクライアント・サーバ販売推進本部 兼 パートナービジネス推進本部マネージャーの大塚俊治氏、マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 コアインフラストラクチャ製品部マネージャの藤本浩司氏に、1台2役サーバパックの狙いなどを伺った。
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左より、NECの大塚俊治氏、大塚商会の中本明彦氏、マイクロソフトの藤本浩司氏
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1台2役サーバパックは、NECのPCサーバー「Express5800シリーズ」とマイクロソフトの仮想化ソフト「Hyper-V」を組み合わせ、大塚商会が1台の物理サーバー上で2台の仮想サーバーを利用できるようにあらかじめ設定したソリューション製品。ハードウェアは、薄型・省スペース筐体のスリムサーバー「Express5800/110Ge-S」、CPU増設が可能なタワー型サーバー「Express5800/120Ei」、100V静音電源搭載のブレードサーバー「SIGMABLADE」の3種類から選択可能。また、標準で「Symantec Backup Exec」を搭載することで、仮想サーバーのデータバックアップも実現している。
「サーバー仮想化というと、大量のサーバーをブレードサーバーなどに集約することでコスト削減できるといった話に注目が集まりがち。また、仮想化という言葉自体が専門的すぎるため、一般的とは言い切れない」(中本氏)と、中小企業にとっては仮想化はまだまだ身近な存在になりきれてないと指摘する。
「しかし、サーバー仮想化によって、ハードとソフトを分離して利用できるといったメリットは大きい。中小企業にとっても、仮想化は使える素材であると訴えたくて、“1台2役サーバパック”と命名した」(中本氏)と説明する。「仮想化という言葉を使うことなく、利点を紹介できるのは何かと考え、1台2役という言葉にたどり着いた。サーバーを仮想化するというよりも、1台のサーバーで2つの役割が持てるといった方が伝わりやすい」と、利用者視点でのネーミングであると述べた。
単に名称だけをわかりやすくしただけではなく、ハードの構成・ソフトの構成もこだわったという。中本氏は、「サーバーを仮想化する場合、多くのメモリが搭載できないといけない。また、HDDは冗長性をとっているわけではないので、SATA HDDよりも信頼性の高いSAS HDDを選ぶなどの安心感を重視した。そのほか、仮想サーバーのバックアップも実現できることにもこだわった」と、手軽に導入できるからこそ、安心感を与える構成を意識したと説明する。
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「大塚商会実践ソリューションフェア2009」会場では、「1台2役サーバパック」導入によるコスト削減のメリットを強調
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特に、1台のサーバーで仮想サーバーのバックアップも実現できるようにする点にこだわったと中本氏は強調する。「サーバー仮想化という点では、VMwareを選択することも可能だった。しかし、VMwareを選択した場合、本体とは別にバックアップ環境を構築することになってしまう。これでは1台2役のメリットは半減するほか、まだまだバックアップだけの環境を別途導入することに理解をしていただくのは難しい。そこで、仮想環境にはマイクロソフトのHyper-Vを選択した。Hyper-Vなら、Windows Server 2008をペアレントパーティションに使えるため、ここにSymantec Backup Execを搭載することができた」と、シンプルなハードウェア構成が可能になることから、Hyper-Vを選択したと説明。
また、中本氏は「Hyper-VがWindows Server 2008の重要な要素であり、大塚商会としてWindows Server 2008を今後メインで扱うことも大きな理由」と、サーバーOSの標準機能として搭載されているメリットを評価したことも挙げている。
マイクロソフトの藤本氏は、「Hyper-V正式版が登場してまだ半年。仮想化という言葉は浸透してきてはいるものの、現実としてはまだまだ不十分。特に中小企業にとっては、仮想化という言葉が先行してしまい、難しく見えている面もあるようだ。今回の1台2役サーバパックによって、中小企業の方々へアピールできるのがありがたい」と、全面的に協力すると述べた。
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スリムサーバー「Express5800/110Ge-S」(左)と、タワー型サーバー「Express5800/120Ei」
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ブレードサーバー「SIGMABLADE」
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NECのサーバーを選択した理由については、「パック商品など、大塚商会の個別ニーズに応じたハードウェアを作っていただいたりしたことがあったのが理由のひとつ。また、検証用のマシン環境の支援などでの協力があることも理由となった。リリース発表後に他社からのコンタクトもあったが、(大塚商会の)CTOセンターを利用して1台2役サーバパックを提供する予定なので、当面は製品数を絞った形で提供する」(中本氏)と説明。
NECの大塚氏は、「今回の1台2役サーバパックは、中小企業を主なターゲットに設定して組み合わせたもの。そのため、省スペースであったり、省電力といった要件が現場に設置するサーバーには求められている」と、スリムサーバーや100V静音電源搭載のブレードサーバーを用意したと説明。「スリムサーバーといっても、メモリも8GB搭載しており、HDDも3台搭載するなど、仮想環境向けに凝縮した構成となっている」と、省スペースながらも安心して利用できる環境であると述べた。
中本氏は、「1台2役サーバパックの価格(200万円から)も、物理サーバーを2台買うのに比べて安く設定している。また、仮想サーバーの追加導入費用(1台17万円、2台目以降5万円)を固定にするなど、サーバー導入の敷居を低くしている。大幅に安いわけではないが、運用監視など仮想環境を使うことで得られるメリットは大きい。仮想化になじみのない企業にとって、1台2役サーバパックがいいきっかけになるようにしたい」と、仮想環境の普及に積極的に取り組む姿勢を示した。
なお、1台2役サーバパックの提供価格は現在細部を詰めており、200万円以下の価格で提供する可能性が高いと同社では説明している。
■ URL
株式会社大塚商会
http://www.otsuka-shokai.co.jp/
日本電気株式会社
http://www.nec.co.jp/
マイクロソフト株式会社
http://www.microsoft.com/japan/
ニュースリリース
http://www.otsuka-shokai.co.jp/corporate/release/2009/090128.html
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( 福浦 一広 )
2009/02/05 08:49
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