Enterprise Watch
最新ニュース

「革新のために不況下でも開発投資は継続する」-米JuniperジョンソンCEO

Financial Analyst Meeting 講演

CEOのケビン・ジョンソン氏
 米Juniper Networks(以下、Juniper)は2月24日(米国時間)、金融アナリスト向けの事業説明会「Financial Analyst Meeting」を米San Mateoで開催。その中で登壇したCEOのケビン・ジョンソン氏は、先進的な製品を提供する同社の事業では、そのためのR&D(研究開発活動)が最重要だという点を再三強調。世界的な不況の中でイノベーションを進めることの大切さを説いた。

 まず2008年の実績を振り返ったジョンソンCEOは、新しい分野への参入とビジネスの拡大があった年だったと位置付ける。ラインアップを拡大しているマルチサービスエッジ向けルータ「MXシリーズ」を、「ビジネスが伸びており、もっとも早い展開をしている製品」と紹介したほか、2008年1月末に発表したスイッチ「EXシリーズ」でも、新規顧客の獲得に効果があったとアピール。さらにセキュリティ分野では、9月に発表した最大120Gbpsまで拡張できる高性能製品「SRXシリーズ」を紹介し、「ルータでもスイッチでもセキュリティ製品でも市場シェアを拡大している」と、新規製品のビジネスが順調に推移していることを強調した。

 一方で2009年は、世界経済が厳しい状況の中で「R&Dへの投資を継続する」ことを強調する。もちろん厳しい市況を反映して、会社全体としては経費の削減に務めるが、研究開発への投資については、事情はまったく別という。「R&Dは当社の核心であり、お客さまが求めているものだ。革新があるからこそ市場を拡大できるのであり、当社にとっての重要な要素だ」としたジョンソンCEOは、さまざまなコスト削減を図りながら、その分をR&Dに回すという点を繰り返す。

 では、R&Dはどの分野で積極的に行っていくのだろうか。それについては、「当社はどこよりも、ハイパフォーマンスネットワーキング(HPN)で強い会社であることに変わりはなく、それをもっと強力にしていきたい」(ジョンソンCEO)とする。HPNとは、スピードはもちろんのこと、信頼性やセキュリティを兼ね備え、ユーザーによるネットワーク管理をシンプル化できるネットワークのこと。引き続きこのメッセージを発信し、サービスプロバイダや企業が、サービスやアプリケーションを一元的に、かつシンプルに展開できるように支援していくとした。

 具体的な投資分野としては、「競合との差別化で重要な要素」として半導体の開発を継続するほか、同社の大きな特徴であるルータ向け基幹OS「JUNOS」の開発にも引き続き取り組む。特にJUNOSでは、四半期ごとの新版リリースを継続しているが、今後も新機能の開発を行っていく予定という。「(複雑な枝バージョンを持たずに)1つのリリーストレインで提供されるJUNOSは当社の戦略の重要な部分。機能を一度作れば、すべての製品で展開できるし、テストやオペレーション、ネットワークの展開が簡略化できるなど、お客さまへの価値提案にもなる」(ジョンソンCEO)。また、MX/EX/SRXといった新システムによる新規市場の獲得にも意欲的なところを見せており、ジョンソンCEOは、「当社は、シリコン、JUNOS、システムという3つの面すべてでイノベーションを提供できるベンダーだ」と述べた。


JUNOSを中核にR&Dを継続し、顧客にハイパフォーマンスネットワーキングの価値を訴求し続けるという
 さらに、HPNという考え方は同社が提唱するのみならず、市場もその考え方に近づいてきていると主張する。例えばコンシューマでは、ブロードバンドの普及によってインターネット接続人口が増加しているほか、利用されるコンテンツもビデオや画像など、どんどんリッチになってきているし、一日あたりの利用時間も増えている。さらに携帯電話など、モバイルの普及も著しく、インターネットのトラフィックが毎年大きく伸びていくことは疑いない状況だ。こうした中でサービスプロバイダでは、ネットワーク設備の増強が必須なのであるが、複数のネットワークを抱えたままでは、運用コストが上がってしまう。

 一方で、サービスプロバイダ側でも収益の確保のために、新しいサービスの提供に対するニーズが高くなっており、「ビットあたりのコストを下げながら、ビットあたりの価値、つまり売り上げを上げようとしている」(ジョンソンCEO)。そこで、エンドユーザーからもサービスプロバイダからも、TCO削減に大きな効果があり、新しいサービスが創出できる、HPNのようなネットワークが求められている、というのだ。同社では、こうしたHPNの訴求に大きな力を注ぎ、不況下でのビジネスを進めていきたい考えであるとしている。

 「HPNには膨大なマーケット規模があり、ビジネスチャンスもたくさんある。また当社は、専業ベンダーならでは面白い知財を持っており、お客さまのニーズにあったソリューションを提供できるし、明確な戦略とそれを実行する力もある。こういった状況でも株主に価値を提供できるだろう」(ジョンソンCEO)。



URL
  米Juniper Networks
  http://www.juniper.net/
  ジュニパーネットワークス株式会社
  http://juniper.co.jp/

関連記事
  ・ 「ハイパフォーマンスネットワーキングを支えるのはJUNOSだ」-米Juniper APAC担当CTO(2007/07/04)
  ・ 米Juniperがついにスイッチ市場へ参入、仮想シャーシ型を3月に発売(2008/01/30)


( 石井 一志 )
2009/02/25 16:14

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2009 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.