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「優れた製品開発とパートナーを大事にすることで差別化を」-米SonicWALL社長


社長兼CEOのマット・マデイロス氏

主要な製品とテクノロジー
 米SonicWALLは2月26日、事業戦略説明会を開催。来日した社長兼CEOのマット・マデイロス氏が同社の方針や強みを語った。

 同社は、UTM、SSL-VPN、メールセキュリティ、それらの管理ソフトを事業の柱とするセキュリティベンダー。事業は好調で「(不況にもかかわらず)2008年は過去最高の業績を上げることができた」とマデイロス氏は語る。

 昨今、インターネットの脅威は複雑化し、その目的も金銭を奪うことにスライドしている。このため経済環境が悪化すると攻撃の危険性は高まる傾向にあり、「その証拠に当社が2008年の最後の3カ月間で検知したアタック件数は、最初の9カ月よりも多かった。企業ではその規模に関係なく、同じように高度な保護が必要となっている。同社ではどんな規模でも使用できる製品ラインアップを展開しており、それが業績に表れているのだ」(同氏)という。

 製品の中でもユニークなのが、最大16コアのマルチコア設計のUTMだ。当初、大規模向けの「SonicWALL Network Security Appliance(NSA) E-Class」で採用されたこの機構も、今では中規模向けの「SonicWALL NSA」、さらには小規模向けの「SonicWALL TotalSecure」でも採用されている。ゆえに、どんな規模の企業でも複雑なセキュリティ状況に対応できる製品が提供できるというわけだ。

 また、このマルチコア設計により、画期的な「RFDPI(Reassembly-Free Deep Packet Inspection)」というテクノロジーを実現している。RFDPIとは、パケット再構築不要のディープパケットインスペクションのことで、マルチコアアーキテクチャを活用しながら、メモリに負荷をかけることなくリアルタイムにパケットをスキャンする。これにより、ファイルサイズに制限なく脅威を識別・排除するほか、ネットワークパフォーマンスを落とすことなく無制限の同時接続を実現するという。「結果、競合他社と比べても10倍のスループットが実現できており、これが強みの1つ、製品の優位性だ」(同氏)としている。

 今後は、Webアプリケーションファイアウォールやデータベースアクセス制御などに注力する方針。また、“SSL-VPN on UTM”や“アンチウイルス on SSL-VPN”なども進め、新しいセキュリティソフトの開発にも投資していくとのこと。


 一方、より包括的な強みを高めるため、事業変革も推進してきた。マデイロス氏によると「これまで戦略的な買収を行ってきたが、2008年にはすべて収束し、収益の多角化に成功した。戦略のグローバル化も推進しており、販売拠点の拡大だけでなく、中国・インド・台湾に開発拠点を据えるなどエンジニアリングも含めた、地理的な戦略拡大を行った。これによりサポート、流通、製品の差別化に投資を集中することが可能となり、例えば、日本のように固有の要求が多いところでも、迅速にレスポンス可能な体制が整っている」とのことで、これがもう1つの強みだという。

 今後もこうした研究開発や事業拡大に投資を集中する方針。特に日本市場向けには、「CSSA認証プログラムの日本語化」「GUIとマニュアルの日本語化」「サポートサービスの拡充」「現地スタッフによる実機を用いたトレーニング」「研究開発への投資」など多くの取り組みを紹介している。

 「過去にも日本に向けた研究開発には力を注いでおり、米国に日本人のエンジニアを配置して、グローバルと日本での市場特性の違いなどをキャッチアップしてきた。日本はほかの市場と比べユニークなところが多く、例えば、FTTHの導入も日本が先駆けだった。先進的な日本の取り組みに触発されて、いまではVerizonのFTTHサービス向けにもノウハウが応用されている。また、当社の小規模向けUTMなども、日本のニーズに合わせて作られ、やがて世界へ展開していった1つの例。だからこそ、日本への投資が非常に重要なのだ」(同氏)。

 日本への取り組みにはパートナーが欠かせない。そこで実機を用いたトレーニングのほか、CSSA認証プログラムの日本語化などのパートナー支援策を打ち出している。そこには「認定制度を日本語化していくことで、日本に優れた技術者を増やしていく。特にインターネットセキュリティのスペシャリストは、いま、1人でも多く必要な世情だから」(同氏)という思いがあるようだ。併せて、特にSIerやリセラーなどエンドに近いパートナーを大事にしたいとの気持ちも表明している。

 いま、中小企業向けのセキュリティ市場は競争が激化している。こうした市場で勝ち上がっていくために、「今後もマルチコア設計やRFDPIのように優れた製品開発や、サブスクリプションモデルの拡充などを図っていくことで、競合他社との差別化を図っていく。そしてお客さまには製品、導入、運用管理、いずれのコストも削減できるようなソリューションを提供していくことを約束する」と述べ、締めくくった。



URL
  米SonicWALL(日本語)
  http://www.sonicwall.com/japan/

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( 川島 弘之 )
2009/02/26 15:46

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